第7話

唐突に魔法騎士学校に入学が決まってしまった。サラと駆け落ちして冒険者になる計画は当分の間白紙に戻った。

魔法騎士学校を卒業したら指揮官の座が約束される。冒険者になる場合は、Aランクからスタートされる。

稀に冒険者としてバイトをし過ぎた魔法騎士学生が卒業前にAランクになっており、Sランクに格上げされた事例がある。俺達はそのコースになりそうだ。

その後で駆け落ち。そうする事になる。早くて半年後、遅くて3年後だ。半年の場合は残りの授業料が返却される。

まあ、あくまでも天才だけだが、サラなら十分有り得る話だ。俺達はそのペースに合わさなくてはならない。例えるならマラソンで最初から最後まで全力疾走し続けるようなものだ。


「アルトくん。魔法騎士学校に入学手続きに行くわよ。毎日歩くのが面倒だから転移魔法で首都アルマに行こう」


勢いよくドアが開いた。サラが迎えに来たようだ。カレンは眠そうだ。朝は無口になる。


「それだと修行にならないよ」


「いいじゃない。転移魔法なら一瞬よ」


「いや、ダメだ。転移魔法は最終手段。時間に余裕がある時は走って行こう」


「なによ。昨日の夜せっかく覚えたのに。ついでに空間魔法も覚えたわよ。これで沢山の荷物を持つ必要はなくなったわ。昨日は重さが軽くなってるとはいえ、面倒だったもの」


「夜に2つも魔法を覚えたのか? しかも別系統で更に超上級魔法を!」


「余裕だったわよ」


「サラお前はやはり天才魔道士だよ。いや、超天才かも知れない」


「でしょ! 自慢の嫁でしょ!」


「ああ、サラは俺の自慢だ」


「ちょと待って! アルトちゃんとサラちゃんはいつ結婚したの!?」


「ん、カレンちゃんが魔力切れで倒れた時よ」


「えー!? そんなー! アルトちゃん、サラちゃん私は命の恩人だよね?」


「そうだな。カレンちゃんは俺達の命の恩人だ」


「確かにそうね。カレンちゃんは私達の命の恩人」


「なら、私の命令を聞きなさい。あなた達は結婚をやめるの! まだ早いの! 体と心が成熟してからにするの! 日本では法律違反なの! 女の子は16歳で男の子は18歳になるまでは結婚してはダメなの!」


「えー!? そんなに待てないわよ」


「俺は別にかまわないけど、ここは異世界だ。日本とは法律が違うよ」


「ダメ! 私の体が大人になるまで待つの」


「何でカレンちゃんの成長を待たなきゃいけないのかな? もしかして私とした約束を忘れたのかな?」


「う、それはね。うんとね、あのね、むきゃー!」


カレンの頭は処理が出来ずに奇声を上げるしかなかった。まあ、魔法騎士学校に行くんだ。結婚は早くてもその後になるだろう。


「サラ、ここはカレンちゃんの言うことを聞いて魔法騎士学生を卒業してからにしよう。とりあえず、上級生の上位と教職員全員を倒せば早期に卒業出来るんだろ? それを狙って行こう」


「そうね。早期卒業出来れば残りの学費は私達の物。その大金を元手に空間魔法で大量の商品を買って転移魔法で色々な国や町に行って売りまくるの。腐食防止魔法をかけた肉や野菜や魚は高価で売れるわ。うふふ私達がお金持ちになる未来が目に浮かぶわ」


「なんか俺の予想より遥かにスケールがデカくなってるけど、とりあえず、その計画で行こう」


「大金持ちになったら駆け落ちしようね。そのまま国を作って、追ってくる宮廷魔術師と騎士団を倒して、その勢いでこの国を乗っ取るのもいいわね」


「サラの話のスケールが大き過ぎてついて行けないよ」


「何言ってるのよ。ギルドも新しく作るわよ。誰かの下でアゴで使われるなんて嫌だもの。マスターはアルトくんで私はサブマスターね」


「ええー!? なんでそんなに将来の計画がぽんぽん決められるの?」


「ん、昨日の夜、計画に乱れが生じたから修正しておいたのよ」


「サラお前はやはり超天才だよ。正直、この国の政治は乱れている。敵国の人間を奴隷として連れてきてるし。人間は皆平等なのにタダ同然で働かせるのは間違っている」


「でしょ、アルトくんならそう言うと思ってたよ。奴隷を解放して回る金を稼ぐのは無駄よ。奴隷商人を喜ばせて肥えさせるだけ。叩くなら根元から根こそぎぶっこ抜くのよ」


「その計画で行こう。王を倒して奴隷を全員解放だ。そのまま俺達のギルドに入れる。新しくギルドだが、最高の人数で最強の軍団を作る」


「アルトくんそれはいい計画ね! 奴隷から解放した恩義も感じてるからギルドを抜けないだろうし、奴隷として連れて来られている獣人の身体能力は人間を遥かに超えている。そこにアルトくんの重力魔法による修行が加われば一騎当千の部隊を作れるわ。人数もギルドの域を超えて軍隊に匹敵する。紛れもなく最強ギルドの誕生よ」


「楽しみだね」


「うん。楽しみよね」


「私には難しすぎてさっぱりでした」


「カレンちゃんにも期待してるよ。怪我人沢山治してあげてね。魔法学校で基礎訓練を積めば沢山魔法が使えるようになる筈よ」


こうして俺達の駆け落ちの計画は完成した。スケールが大きすぎて叶うのかわからないが、俺とサラとカレンの3人の力を合わせれば不可能など無い気がした。

まさか駆け落ちの為に1国を倒して乗っ取っる事になるとは。つまり、魔法騎士学校の仲間達は将来的に全て敵になる事を意味していた。



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