第6話

俺達3人が仲良く手を繋いで歩いていると、怖い連中が前にいた。迂回して脇道に入ろうとしたが、そこにもっと怖そうな人達がいた。

仕方ないのでそのまま真っ直ぐ進む事にした。俺達は目を合わせて合図をして縦1列に並んで通り過ぎようとした。


「待ちな。2人も女を連れやがって片方置いて行きな。俺様達が可愛がってやるよ。黒髪はまだガキだから、そっちの胸が大きい金髪の姉ちゃんでいいぜ」


「あんたら燃やすわよ。この私を抱けるのはアルトくんだけ。お前らはブスでも抱いてろ。腐れち○ぽ野郎が。ブスになら需要ギリギリあんだろ」


「サラ全国のブスさんを敵に回す発言はやめてよ。ブスさんだってこんな男達嫌な筈だし」


「あ? てめえら喧嘩売ってるのか? 殺すぞ!」


「サラは黙って見てて。俺が殴り倒す」


「アルトくんカッコいい私達を守ってくれるのね」


「いや、サラが戦うとこの人達殺しちゃうだろ? 手加減しても物凄い威力の魔法だし」


「舐めるなよ! 俺はてめえみたいな野郎が1番嫌いなんだ。死ね!」


怖そうな男1のスキンヘッドは斧を振り上ようとした。俺は重力魔法を斧に掛けた。


「なんだこれゃ! 俺の斧が持ち上がらねえ!」


地面に落ちた斧を持ち上げようと必死のスキンヘッドの男の頭を足に魔力を集中し、重力2倍で踏んだ。重力10倍で踏んだら頭を砕いて潰してしまいそうだ。

スキンヘッドの男はそのまま地面にキスをして体を痙攣させて気絶した。


「てめえよくも! 俺達はCランクの冒険者様だぞ!」


今度は短髪で顔が岩のようにゴツゴツした男が長くて立派な剣を振り上げようとした。この剣欲しいな。重力10倍を剣に掛けると、スキンヘッドの男の時のように地面に落とした。俺は素早く屈んで剣を奪い、岩石顔の男の喉に剣の先端を突き刺した。


「まだやるかい? 死ぬならこの剣はいらないな? これは俺が貰っておこう」


「差し上げますから命だけは!」


「話がわかるな。長生きするぜ。おっさん」


「さあ、次はどうする? あんたがこの集団のリーダーだろ?」


「ふん。俺の手下を倒したからって調子に乗るなよゴミ虫が。俺様はBランク冒険者。疾風の鞭のガンベルト」


「男なのに鞭かよ。でも、その鞭もいいな。先端に大きな鉄球を付ければ使えそうだ」


「先端に鉄球だと? 確かにドラゴンの皮で作った鞭なので切れはしないが何なんだその危ない発想は。そんなのが人間に当たると頭が弾け飛んで死ぬぞ」


「俺は重力魔法を使うんでな。軽くしておいて勢いよく鉄球を投げてから重さを戻す。重くすると地面に落ちるので更に威力を高めるのは難しいが。それに、大丈夫だ。人間相手には使わない。相手は魔物。俺は人間は殺さない。だって同じ種族の仲間だろ? 少なくてもこの国に住んでる人間は全員味方だと思ってる」


「何を綺麗事を! 殺してやるぜ!」


長髪の男による物凄い速さの鞭による攻撃は予測が難しく、不規則でしなってヘビの動くので、回避が難しい。当たると皮膚をごっそりと持っていかれるだろう。回避するので精一杯で反撃の機会がない。


「なんて素早さだ。残像が出来ているだと!?」


日々の重力魔法による修行の成果が出たな。今の俺は10倍の重力でも普通に歩ける。つまり、重力魔法を掛けてない時の俺は10倍早い。

しかし困った。奴の攻撃が全く途切れる気配がない。軽量な武器の為、疲れて攻撃が止む事は無いだろう。もう30回は回避している。

鞭のような重量が軽い武器には重力魔法の効果が薄い。時間を重くしてみるか。そうすれば、凄まじい速度の鞭が遅くなるかも知れない。何事も実験が必要だ。


「く、何だこりゃ! 鞭の動きが遅れる? 遅くなっているぞ!」


「流石はBランク冒険者。楽しかったぜ。だが、これで終わりだな」


俺は遅くなった鞭を剣で絡め取って引き寄せた。そして重力を増した拳を斜め下に軽く振り下ろした。長髪の男は殴られた時に鞭から手を離したので、鞭を奪い取る事に成功した。

長髪の男は地面を何回転もしながら地面に倒れた。凄い砂埃だ。


「使えないと有名なザコの嘲笑されるネタ魔法の重力魔法なんかを見事に使いこなしやがって! お前は一体何者だ!」


「俺達はSSSランク冒険者だ!ミライノナ」


「ひぃ殺さないで! 勘弁して下さい!」


嘘は言っていないぞ。未来のSSSランク冒険者だもんね。長髪の男は恐怖で全身を震わせている。ハッタリが効いたようだ。


「じゃあ、この素敵な鞭くれるね? 俺は凄く気に入ったんだ」


「それは30年ローンが残ってるので勘弁して下さい」


「じゃあ、この鞭を作った人に合わせてくれ。鎖鎌を作ってほしいんだ。ただし、鉄球はそのままで鎌は大きなハンマーに変えてもらうがな。どうだ? ゾクゾクするだろう?

20キロのハンマーの10倍の重力で200キロ。100倍の重力なら2トンだ。更に鉄球を飛ばす事によって遠距離攻撃も可能 」


「ひぃ! 何その殺人兵器! 勘弁して下さい! 案内します! だから殺さないで!」


「交渉成立だな。さあ、行こうか。ガンベルトさん」


「ちょっとお待ちを手下2人を担がないと。く、重い。こいつら2人で200キロはあるぞ」


「200キロか丁度いい。俺に担がせろ。重力2倍って所か。ああ、丁度いい負荷だ。筋肉が喜んでいる」


「あんた化物か! 合計400キロだぞ!? それにあんた自身の体重もあるんだぞ!?」


「まだこんなの序の口だ。数分で慣れる。そこから3倍に上げる。その後は4倍だ」


「筋肉つくの早すぎー! どんだけー!?」


「俺の父は高名なドラゴンハンターだ。筋肉がつく時間は10分あれば十分。戦いながら進化するタイプで数々の格上の相手も倒してきた。今考えてみればそうだな。母も重力魔法の使い手だったのかも知れないな。戦闘中に修行して進化したのかも知れない」


「やはりサラブレッドでしたか! 何か困った事があればこのガンベルトにお任せ下さい」


「ああ、宜しく頼む」


「ここが目的地の鍛冶屋です」


「案内ありがとう。今度また会ったら頼りにさせて貰うよ。ガンベルトさん。また会おう」


「はい。私はこれにて! お前ら起きろ! 帰るぞ!」


こうしてガンベルトとその手下達は何度も頭を下げて帰って行った。


「あー! 大人ごっこ楽しかった!」


「アルトくん凄い! 声が低くて本当に大人みたいだった!」


「まるで別人。怖アルトちゃんだったね。将来俳優さんになれるかも!?」


「俳優さんって?」


「何それ?」


「映画やドラマに出てる人だよ」


「映画やドラマ?」


「何なのそれ?」


「漫画は知ってるのに2人とも知らないの!?」


「知りません。教えて!」


「うんとね、説明するより見た方が早いかも」


「見たい! 鍛冶屋でアルトくんの殺人兵器の注文が終わったらそれ見に行こう!」


「そうだね。サラ。さっさと注文してくるよ」


俺は鍛冶屋の中に入った。すると物凄い筋肉のおっさんが無愛想にいらっしゃいと言った。


「あの、そこに飾ってある鎖鎌の鎌を外して、大きな重いハンマーを代わりに付けてほしいんです。重力魔法を使う俺には強力なぶきになるの思うんです」


「重力魔法か。面白いもんを使うな坊主。確かにその武器は強力そうだ。急ぎて作ってやる。2時間後に取りに来な。そうだな2万ゴールド。いや、15000に負けてやる」


「ありがとうございます!」


「いいって事よ。商売柄俺は鑑定眼のスキルがあるんだが、お前の能力値に感動して惚れたのよ。お前はここまま行けばとんでもない男になるぜ。その時はここで武器と防具を揃えてくれ。お前の重力魔法に耐える装備を作るのは骨が折れそうだがな。俺に任せておけ」


「とんでもない男になれるように、毎日修行を続けます! それでは2時間後に!」


鍛冶屋を出て俺達は日本からの輸入品が集まる市場に向かった。日本人の服装をしている人達が沢山いる。コスプレって服装。何だろう。肌の露出が多い。


「アルトくんなに他の女の子を見て股間を大きくさせてるのよ!」


「なんだか知らんがたまに大きくなるんだ」


「アルトくんって自分でした事ないの?」


「自分でするって何を?」


「お、オナニー」


「なにそれ。なんかの筋肉トレーニングかなにかか?」


「ある意味筋トレかも。もういいわ。それも今度私が教える……いえ、私が出してあげるから必要ないわね。ずっと毎日一緒だし」


「ふーん、よくわからんけどよろしくね。頼りにしてるよサラ!」


「ま、任せて! 私は初めてだけど慣れて上手になるから」


「アルトちゃんとサラちゃんのエッチ」


こうして俺達はホワイトボックスという機械を買った。ゲームとやらをする道具のようだが、ゲームも何なのか不明だ。そして、小さなテレビという物も買った。これも謎だ。

そして、カレンがオススメする映画やドラマを沢山買った。カレンが見た事のない物も選んでいいよと言ったら大いに喜んだ。

大きな荷物を沢山持った俺達を街ゆく人々が大変そうだと見ているが、重力を軽くしているので実は余裕だ。女の子で楽々持てる。

それから鍛冶屋に武器を受け取りに行った。そのまま俺達は食品市場に立ち寄り、目的のすき焼きとやらの材料をカレンに聞いて買い揃えた。漫画で読んだことがある。戦争のようになって激しく肉を取り合う恐ろしい程に美味しい料理らしい。


「この肉高い! 防腐魔法よし! アルトくん今夜は私も一緒に夕食食べるからね。この肉は逃せないわ」


「え、お姉ちゃん防腐魔法が使えるのかい?

若いのに凄いね。ここのお肉全部頼むよ。500ゴールド払うから 」


「500ゴールドも!? やるやるお安い御用よ!」


「流石は天才魔道士サラ」


「天才魔道士サラかい。覚えておくね。また今度もよろしく頼むよ」


「うん。任せておばちゃん」


「ぐむむ、私も負けてられない」


俺達はアルマを後にした。行きよりも帰りの方が早く着いた。どうやら、サラやカレンも筋肉がつくのが早いタイプらしい。2時間後って所か。実は俺も少しだが鑑定眼が目覚めつつある。母も鑑定眼を持っていたし。

町に帰ると、宮廷魔術師達と騎士団が大騒ぎしていた。怪我人も沢山出ている。


「大変! あの人死にそう! 腕も足も無い!

助けなきゃ! 」


カレンは怪我人に近づいて怪我した部分の時間を戻した。


「凄いぞ! 失った腕と足が戻った! 他の奴も頼む」


「よかった……でももう限界」


カレンは倒れてしまいそうだ。ふらふらしている。また魔力切れだった。時の魔法は魔力の消費量が半端ではないらしい。


「凄いぞ! こんな回復魔法見た事がない。是非将来は協会の治癒術魔道士に! これは魔道騎士学院の招待状だ。この私の紹介なら無料で入学出来るぞ」


「私ひとりでは嫌。後ろの2人も一緒に」


「後ろの2人も凄まじい魔力だな。よし、いいだろう。3人分招待状をやろう。未来のこの国の為に。沢山学んで来るがいい。期待しているぞ」


こうしてカレンのおかげで魔道騎士学校に入学が決まった。学費が高すぎて諦めていたのに。卒業までに3000万ゴールドも掛かるのだ。

すき焼きはそのお祝いに変わった。この世の物とは思えない肉の美味さに感動し、その後の映画とドラマでは涙腺が崩壊した。何で箱の中に人間が沢山いるのだろう。理論は不明だが凄い魔法道具だ。


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