第10話 日々
それからの日々は、まるでジェットコースターに乗っているかのように、一日一日が矢のように過ぎていった。
正式な恋人同士になった僕たちは、登下校はもちろん、休みの日も毎日欠かさず会った、どうしても会えないという時も、必ず一度は連絡を取り合った。
いろんなところに遊びに行った。
遊園地、映画館、動物園、水族館、などなど、中学生でいける範囲内のところは、全て行った。
そして、あっという間に、僕らは、二年生なる。
残念なことに、僕たちは、また別々のクラスになった。
がっくり肩を落とす僕の横で、クラス替えの張り紙を見ながら、彩はまた来年があるじゃないと笑って言った。
「彩は、違うクラスでも別に構わないんだね」
そういって少し拗ねて見せると、別に同じでも違っても、私たちの友情はかわらないでしょ。といった。
友情という言葉に顔を引きつらせる僕に彩はプッと噴出して笑った。
新しいクラスで、彩はその明るさをどんどん開花させていった。
休み時間遊びにいっても、他の友達と話していて、話しかけるタイミングが見つからず立ち去る日もあった。
僕的には淋しいことだが、女友達と笑いながら廊下を歩いている彩の姿をみるのは素直にうれしかった。
学校の帰り道では色々な話をした。
今日学校であったことや、テレビの話、本の話、歌の話、それに将来の夢。
二人の描く将来像はとても明るくて楽しくて、そしていつもお互いがそこにいた。
暖かくなってくると、再び彩もスイミングクラブを再開した。
そんなおりに、母が唐突に言った。
「来年は受験生だから、スイミングクラブはもうやめて、塾に通いなさい」
僕はそれは嫌だと断った。今、水泳をやめるわけにはいかない、彩とあの十メートルの飛び込み台を飛ぶと約束したのだ。
彩だってようやくスイミングクラブに戻ってきたというのに、僕が先に辞めることはあってはならない。
「うちにはスイミングクラブと塾、両方通わせるだけの余裕はないのよ」と母は言った。
「じゃあ塾に通わなくても、いい高校にはいれるよう勉強するから。それならスイミングクラブ辞めなくてもいいでしょ」
初めは頭から無理だと突っぱねていた両親も、いままでにない僕の熱い説得に根負けしたのか、同情したのか。最後にはしぶしぶそれを承諾した。
ただし、「成績がいまより少しでも落ちたら、塾に行きなさい」と釘を刺すことは忘れてはいなかった。
でも昨年から始めた彩のノートを取るという作業のおかげか、僕の成績は下がるどころか確実にあがっていっていた。
また今の僕には、医者になるという目標もあったので、俄然、授業にも気合が入る。
彩と付き合い。スイミングクラブも続け。医者になるための勉強もする。
睡眠時間を削りながら、ようやく成り立つようなそんな日々。
だが苦ではなかった。むしろ、毎日がとても充実していてとても楽しかった。
夢も目標もなかった時に比べ、生きている実感があった。
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