第3話


「──お前といると疲れる」

 それが最近の裕紀さんの口癖。


 大抵、溜息と一緒に吐きだすその言葉。意外と、ショックだったりするんだよ?


「そんなこと言わないでくださいよ!」

 そう笑ってるけど、こう見えて繊細なところもあるんだから!


「──私は、ただ裕紀さんのそばにいたいだけなのに……」

 そう呟くが


「結構」

 やっぱりこっちには目もくれない。


 だからそれをいいことに頑張って作っていた笑顔を崩す。



 俯いて、裕紀さんには聞こえないように軽く溜息をついてみる。


 自分を奮い立たせるように頬を叩いて、また笑顔を作ろうと顔を上げた──。


「──え」


 バチッと絡む視線。


 ……なんで裕紀さんこっち見てるの!?


 私のこと見てくれることなんて滅多にないのに!!


「……なに、ショックでも受けてんの?」

 片方の口角を上げて意地悪に笑う裕紀さん。


 ……くそう、カッコいい。


「一応、私だって乙女ですからね!!」


 なんだか悔しくて机をバンッと叩く。


 すると

「……はいはい。悪かった悪かった」

 そうぶっきらぼうに言うくせに


 ぽんぽんって頭を軽く叩くから、私は毎回胸キュンし過ぎて死にそうになるんだ。


「──好きです!!」

「……うるさい」


 叫んだらって怒られて、頭に置かれていた手も戻ってしまって自分の行動を悔いた。


「……まあ、そっちの方がお前らしくていいよ」


 そう言って笑うから……はい、またしても死亡。

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