第26話わたしとカレ㉖

7階に着いて扉が開くと総務部へ行こうと歩き出そうとした。


が、一瞬立ち止まり、私は躊躇していた。

いや、迷うな自分。素直に気持ちをぶつけるんだ。そう自分に言い聞かせて再び歩き出そうとしたが、非常階段の方から何やら聞き覚えのある声が聞こえて来た。


これって・・・あゆみの声だよね・・・?と誰かいるのかな・・・?

私はそうっと非常階段の扉を少し開けてみた。

階段の下の踊り場で誰かと話してるようだ。


「・・だから・・・さっきから謝ってるだろ!」


「あなたはいつもそうよね!・・・私の事なんだと思ってるの?奥さんにバレそうだからってどうして距離を置こうなんて言うの?結局自分の保身が一番大事なんだよね!」


「そうじゃない!だけど家庭があるのはあゆみも分かってる事だろう?俺の立場もあるし、妻にバレたらただじゃ済まないんだよ!・・・だからちょっと距離を置いて会おうかっていう話だよ」


「私の気持ちなんてどーでもいいのね・・・ほんっとサイテー・・・」


今にも泣きだしそうなあゆみの姿と二人の会話についていけず驚いていると

あゆみがこちらに気付いた。とっさに私は非常階段の扉を閉めた。

茫然と立ち尽くしていると扉がバタンっと開き、あゆみが出て来た。


「あっ・・・」私の方を一瞬睨んで出て来たがすぐに女子トイレに入って行った。

私はすぐに走って追いかけあゆみの腕を掴んだ。


「何よ!!笑いに来たわけ!?離してよ!!」


振りほどこうとするあゆみだったが力強い言葉とは裏腹に弱々しい力だった。


「あゆみ・・・お昼ご飯一緒に食べよう!」

私の放った言葉にとても驚いていたようだった。しばらく沈黙が流れたが、彼女は静かに頷いた。


なぜ自分でもそんな言葉が出たのか分からなかった。

でも、彼女を放ってはおけなかった。


あれだけ酷いことをされたのに。

たくさん傷ついたのに。

あゆみも傷ついていことに気が付いたからだろうか・・・


私たちはそれぞれコンビニで好きなものを買い、会社の外のテラスのベンチに座った。その間、会話はほとんどしなかった。


意を決して私から話し始めた。

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