第22話わたしとカレ㉒

タオルを腰に巻いて洋服のかかってるハンガーに手を伸ばす。

私はゴロンと寝転がり彼の方を向き


「ねぇ・・・もう帰っちゃうの・・・?」

彼はワイシャツに袖を通しながら


「何だよ、さっきシたばっかりなのにばだシ足りないのか?」

「そうじゃなくて・・・私の事ほっぽって奥さんのところに平然と帰る貴方が嫌なの」


「そう言うなよ・・・俺には家庭があるの分かってて付き合ってる訳だろ?

会社では良い上司、家では良い夫、良いパパ演じてるんだよ。不倫相手にまでうるさく言われたくないんだよ。」

そう言うとはぁーとため息をついていた。


「分かってるよ・・・ごめん・・」

私は黙ってしまった。割り切った付き合いだと分かっているけど・・・


服を着替え終えた彼は「じゃ、また連絡するから。」そう言って何事もなかった様に足早に部屋を出て行った。

まぁ・・・いつものことだけど。

不倫相手とはいえさっきまであんなに愛し合ってたのに。やることやったら途端に愛情の欠片もなくなる。


私はいつも誰かの一番にはなれない。

ずっとずっと。

誰かを好きになっても必ずソノ人は私じゃない方を選んでいく。


昔からそう。直人も。どうして私じゃダメだったの・・・?

直人とみさこが付き合い始めてから私はずっと苛立ちを押さえられなかった。無神経に「3人で飲みに行こう」と誘ってくるみさこに、心底嫌気がさしていた。

私は仕事で紛らわそうと必死に働いた。

そんな時、課長に署内でよく褒められるようになったり労いの声をかけてもらったりと、嬉しかった。

恋愛ではダメだったが、会社では認められてるって思えた。


そんなある日、残業で一緒になった課長と誘われるまま食事をした。

そしてその後飲みに行き、帰りのタクシーの中でキスをされ、

「ずっと・・・君の事が気になってたんだ・・・だから・・・いいだろ・・・?

あぁ・・・そういう事か・・・

結局、仕事ですら選ばれることはなかったんだ・・・私。


そう思った時、もうどうでも良くなってきた。

そのまま課長はタクシーの運転手に近くのホテルに行き先を告げ、

その日から私たちは不倫関係になった。


始めは既婚者だし、どうでもいいと思っていたがやっぱり女というものは例え肉体関係だけだったとしても、年月を積み重ねるうち少しずつ愛情みたいな感情が湧き始めていた。

ただ、そうやって愛し合ってる時間は何もかもを忘れられたが、

その時間が過ぎ、‶本命〟のもとへ帰るという時は異常な虚しさが襲ってくる。

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