第19話わたしとカレ⑲
お店を出た私は少し歩くと立ち止まり息をはーっと吐いて気持ちを落ち着けた。
正直泣いてしまうかなと思ったけど言いたいことを言えたし
何だかすっきりした。
あぁ。私はホントに我慢してたんだな・・・
自分に正直になるっていい。
私にも至らない所もあったと思う。だけどそれで人を傷つけていい理由にはならない。
しかし私はもう一つやらなくてはいけないことがあった。
あゆみともきちんと向き合って話すこと。
もう、逃げたりしない。
思ったら即行動に移そうと思い、私は思い切ってあゆみに電話をかけた。
しかし、「おかけになった電話は、電源が入っていない為かかりません」とアナウンスが流れるだけだった。
仕方なく私は留守電に
「あゆみ・・話があるの・・これを聞いたら連絡を下さい」とだけ入れておいた。
しばらく待とうかと迷ったが、今日は一旦家に帰ることにした。
家に着き鍵を開けると当たり前のようにソファーで横になってくつろぐあのおじさんの姿が見えた。
何だかここの所おじさんがいるのが当たり前になっている気がする。
でもなぜか、今日はどうしてもおじさんに話したかった。
「ただいま。」私が言うとおじさんは寝起きだったのかゆっくりと顔だけこちらを向いて「おう」とだけ言った。
あれ?
よく見ると昨日より、ちょっと身なりが小綺麗になってる気がした。
「ねぇおじさん。何か、ちょっと綺麗になってない?ボロ布だったのにちょっと綺麗な布になってるし。髪の毛も白髪まじりだったのが完全に黒髪だし、泥だらけの体じゃなくなってるし、どうしたの!?」
私はおじさんの正面で座り込んでジロジロ見た。
「前にも、言うたやろ。俺はアンタの心の汚れなんや。アンタの心が少し綺麗になったから、少しだけ変わったんや」
「ホントなの・・・?でも、もうどっちでもいいや!変な人!」そう言って私は笑った。
「あのねおじさん、私今日自分の気持ちを初めて人にぶつけることが出来たよ。
自分の気持ちに正直になって伝えるって簡単なようで難しいと思ってた・・
でも、認めたくないけど、おじさんが私に色んな事を教えてくれた。
素直に・・・正直になるってすごく気持ちいいことだね!」
「・・・・私・・・ずっと自分の気持ちにウソついてた。直人へ理想の彼女を演じてる自分。あゆみとの事も気になってるのに何も言えない自分・・・
今思うとホントに恥ずかしい・・
どこかで私、認めたくなかった。裏切られたって思いたくなかった・・・
でも認めちゃえば、自分の弱い所受け入れられれば、前に進めると思った。
だから、悲しいはずなのに、直人と別れて、どこかすっきりした気がするんだ」
おじさんは黙って聞いていてくれた。
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