第18話わたしとカレ⑱
俺はまさに開いた口が塞がらない状態だった。
みさこはその間じっと俺の目を見つめていた。そして
「な・・・どうして・・・?あ・・・・あゆみのことなら…ホラ、分かってくれたってみさこ言ってたじゃん…誤解させちゃったのは・・・確かに申し訳ないとは思うけど。
でも、それで別れるなんて・・・ちょっと違うんじゃないかな」
みさこは首を静かに振った。
「・・・あゆみのことだけじゃないんだよ・・・」
みさこは続けた。
「私ね・・・ずっと我慢してたの。好きな人に好きって言われたこともなかったから、直人が初めて私の事を好きと言ってくれた時、本当に嬉しかった。
・・・でもね・・・私、あなたに嫌われないように必死だった・・・嫌な事を嫌だと言えなかったり、好きなものや好きな事を隠して、必死に‶良いカノジョ〟を演じてた。
だけどもう・・・そういうのやめたいの。自分の気持ちに正直に生きていきたいの」
彼女の口からこんな言葉が出るなんて想像もしていなかった。だけど、
「なに言ってんの?俺と別れたらみさこ、一人になっちゃうよ?だいたい、俺がいつも話題を振らなきゃ何も話さねぇじゃん!俺と別れたってその後他の男には絶対相手にされねぇから!」
言った後に「あ・・・・」しまった、と思った。
みさこは一瞬驚いていたがすぐにふっと笑って
「・・・直人、今まで・・・ありがとう。さようなら」
とだけ言って1000円札と俺の家の合鍵を置いて店を出て行った。
俺は茫然とみさこの出てった入り口をしばらく見ていた。
あんな事、言うつもりじゃなかったのに・・・
みさこも・・・どうしちゃったんだよ。あんなの今までのみさこじゃないみたいだ。
あゆみの事が原因か・・・?
でも・・・あれ位の事で怒って別れるなんて・・・それに良いカノジョを演じてたって何だよ・・・そんなことをぐるぐる考えつつも、どこかで自分の事をずっと好きでいてくれてるってタカを括っていた。
そして、自分がみさこの事をみさこ以上に好きだったことに気付かされる。
もう・・・ダメなのか・・・?
ビールをグイっと飲んでその後もずっと飲み続け・・・その後のことは覚えていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます