第15話わたしとカレ⑮

直人は、よくデートに遅れてくる。だが、私は責めることもなく「ごめん」と言われると、理由も聞かずにいつも笑顔で流していた。だからあのSNSの写真を見ても、

あゆみとの弁解も受け流してしまっていた。


あゆみは自分の好きなことに付き合わせる。あゆみは大勢で騒ぐのが好きだった。

クラブや自分の見たい映画や買い物。でも私が誘った時はいつも返事はNOだった。

それに文句の一つも言わずにいつも何でもないフリをしてた。


「・・・ようやく、分かったようやな。俺のこの姿はな、前も言った通り、アンタの心の汚れなんや。アンタの心が汚れてると、俺の体がどんどん汚くなるんや。

そうやって心の中が汚れてる人間に引き寄せられて、その人間の前にだけ姿が見える。

実際に会社の人間には俺の事は見えなかったやろ?他にも心の汚れがある奴はたくさんおるんやけどな。中には救えない奴もおるんや。心の汚れがこびりついて取れない人間もな。そうなってしまったら、どうする事も出来へん。けど、アンタはまだ心の汚れを落とすことが出来る。せやから俺はここにおるんや」


おじさんの話をぼんやり聞きながらはっとした。

「どうやったら・・・心の汚れは取れるんですか?」


「それはもう、アンタには分かってるはずや。何で今心が汚くなってしもうてるか。

自分の心の汚れを取り除けるのは、自分だけや。

もう夜遅いから俺はもう寝るで・・・」そう言っておじさんはまたソファーにゴロっと私と反対向きになって寝てしまった。


心の汚れ・・・・取り除けるのは自分だけ・・・


こんな汚いおじさんの言うことなんて聞きたくない。


・・・けど・・・


このまま自分の気持ちを押し殺して、自分を偽って生きてくなんて、

出来ない。私は一晩中、自分の心と向き合った。やがて、朝が訪れる。


長い長い夜だったが、ようやく、私はどうするべきか分かったような気がした。


ベッドから体を起こし、ソファーを見やると、おじさんはいなくなっていた。

あぁ。朝忙しいとか言ってたな・・・

私はいそいそとシャワーを浴びたり、のんびりと会社へ行く準備をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る