第13話わたしとカレ⑬
総務部は7階にあり、営業部はその下の階だ。
階数も近いから余計に直人とあゆみはよく会うことがあったのか・・・?
エレベーターに乗りながらそんなことをぼんやり考えていた。
「なぁ・・ねーちゃん。あゆみっちゅう女にガツンと言うチャンスやで。この際やからきっちり聞かなアカンで」
急に背後から声がするので私は全身ビクッとなった。
え?ちょっと、いつエレベーター乗ったの!?
「ちょっと!もういい加減にして下さい!」
「なんも言わない気なんか?認めたくないだけやろ?聞いて関係がこじれたくないだけやろ」
「・・・そうですよ・・・私さえ我慢すれば全てが丸く収まるんです!だからもうほっといて!」
ドアが開いた瞬間ダッシュした。なんなの・・・もう。
そう、私はきっと疲れてるだけなんだ。そう言い聞かせて総務へ。
「あの・・経理の加藤ですけど、この書類・・・」と言いかけた瞬間パソコンと向き合っていたあゆみが私に気付く。が、スッと視線を逸らされた。
え・・・?
バタバタと走って来た男性社員が「わざわざ申し訳ないです。」と言って書類を受け取ると丁寧にお礼を言われた。あゆみは全くこちらを気にしていない様子だった。
私は軽く会釈をして総務を後にした。
あゆみは・・・どう思ってるのだろうか・・・エレベーターのボタンを押そうと手を伸ばした瞬間。
「ねぇ!どうして何も聞かないの?」
振り向くとそこにあゆみが腕を組んでこちらを見ていた。
「気になってるんでしょ?直人と私の関係。知りたいんじゃないの?なのに何も言わないなんて・・・どうでもよかったわけ?それともいつものいい子ちゃんぶってるの?出会った時からそうだもんね!いつも誰彼構わず愛想振りまいちゃっていい子ぶっててさ・・・・・あたしアンタのそういう所が前から大っ嫌いだったんだよね!」
あゆみは私に近づいて小声で続けた。
「直人もバカだよね。ちょっとあたしが恋愛相談で涙見せて慰めて欲しいって言ったらあっさり抱いちゃうんだもん!」
あゆみの高笑いが廊下に響く。
・・・そうだったんだ・・・あゆみはずっとそんな風に思ってたんだ・・・直人も、大好きなな彼氏だから、彼女の私が裏切られる訳ないって・・・私はずっと・・・
私は唇をぎゅっと噛んで
「・・・・ごめん・・・」
ようやく絞り出した言葉を言い、下へ繋がる非常階段への扉を開け、一目散に駆け下りた。
頭の中は真っ白だった。
無我夢中で階段を下りた。
どうして・・・
途中の段差でヒールが引っかかって階段途中の踊り場に投げ出され、とっさに手をついて座り込んだ。
涙が出た。声を殺して静かに泣いた。けれど涙が次から次へと溢れてくる。
私はしばらくその場から動けなかった。
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