第12話わたしとカレ⑫
・・・なんだかどっと疲れた・・・
そして午前中に娘さんの体調不良で早退した田中さんのデスクの上でゴロゴロするこのおじさんにも余計疲れる・・・そのおせんべい、田中さんのデスクにあったやつだし・・さっきからずっとボリボリ食べながらこっち見てくるし。よく見ると鼻毛も出てるし!あれ!?朝生えてたっけ!?
・・・敢えて無視してるけど。
・・・・うー・・・直人の事真剣に考えたいけどこのおじさんも気になるし・・
いやいや、今は仕事に集中しなきゃ。また周りに変な目で見られちゃうし。
てゆーかどうしてみんな見えないの?
こんなに咀嚼音だってオフィス内に響いてるのに・・
私はパソコンに向き直った。するとおじさんが
「なぁ、ねーちゃん。彼氏とまた続けてく気ぃなんかぁ?何で自分の気持ち言わへんねん・・ねーちゃんはそれでいいんか・・・?」
私は周りを見渡し、小声で
「だから・・・どうしてあなたがそんな事知ってるんですか?それに、あなたには関係ないでしょ」
「ねーちゃんの問題は俺の問題でもあるんや。なぁ、ホンマにあの直人っちゅう男と続けてく気ぃなんか?惨めやと思わんのか?あゆみっちゅう女にも何で何も言わへんねん」
「余計なお世話です。もう、意味わかんない!何で私の問題があなたの問題なんですか。・・・・・それにいいんです。誤解だって彼も言ってたし。私は彼を信じます。あゆみの事だって・・・」
ヤバイ・・・涙が出そうになった。
「ホンマは全部分かってるんやろ?ねーちゃんのは彼氏が好きなんじゃなくて意地とかプライドとかそんなんやろ。そんでいつかは結婚出来るとか思うてるだけで本音をずっと隠してんねん。そんなん永遠に続く訳ないやろ」
頭の中で何かが切れる音がした。
「・・・ほっといて下さい!あなたに、何が分かるんですか!?これ以上私の前に現れないでく下さい!」
おじさんは私の顔をしばらくぼんやり見て、くるっと後ろを向いてぶぅーっとおならをした。うわっ!ほんっとサイテー!
「加藤さーん!これ、悪いんだけど他部署に届けに行って欲しいんだけどー」
はっと上司の声に気付き「はーい、今行きます!・・・てあれ?」
田中さんのデスクの上にはあのおじさんはいなくなっていた。オフィス内を見渡したが、さっきまで確かにここに居たおじさんは完全に姿を消していた。
もしかして、ほんとにいなくなった・・・?
「加藤さん?大丈夫?この書類なんだけど。」
「あ、ハイ。大丈夫です。あの・・どちらの部署に届ければ・・・?」
「あぁ。総務なんだけど。ちょっと俺今手が離せなくて。頼めるかな?」
総務部・・・あゆみのいる部署だ。だけど断れない。
「分かりました。」悪いね、とだけ言い残すとさっさと自分のデスクに戻っていった。うぅ・・・気が重いなぁ・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます