第10話わたしとカレ⑩
・・・気にしないようにしてるけど・・・
おじさんが床から立ち上がって社内をうろうろし、
たまに疲れると床に寝っ転がったり椅子に座ったり
給湯室にあるお茶菓子を食べていたり・・・気になるぅぅーー。
特に誰かに危害を与えたりするわけじゃないけど、私だけが見えるって絶対おかしいよね。やっぱり疲れてるのかなぁ・・・
お昼休みの時間が近づく頃、携帯にメールが入った。
‶今日、お昼一緒にどうかな?どうしても話したい。連絡待ってる。 直人〟
胸がざわざわする。
直人とあゆみはいつから関係を持っていたんだろう・・・
出会ったのはみんな同じだけど・・・それに昨日のあゆみの話し方・・・
聞きたいことがありすぎて頭が爆発しそう・・・
‶分かった。じゃあ会社の前のJIMIE(ジミィ)で。 みさこ〟
私はどうしたいんだろう・・・ちゃんと話せるかな・・そもそも何から聞けばいいんだろう・・・
もやもやしながらあっという間に12時を回ってしまった。
床に転がっているおじさんが気になったがもはやそんなのどうでもいい。
ちらっとこちらを見たような気もするが、このおじさんはきっと私の幻覚なのかもしれない。そう思うようにしていた。
重い足取りでカフェレストランJIMIEへ向かう。以前まではお昼休みにはよくここへ二人で来ていた。でも最近はお昼を誘っても「ごめん、忙しいから」などと交わされてしまっていた。私たちはどこからすれ違ってしまったんだろう・・・
お店のドアをゆっくりと開けると女性の店員さんが「いらっしゃいませ」と言ったのですかさず「あ・・・待ち合わせで。」と言いあたりをきょろきょろと見回す。
窓際の席から直人が私に気付き、さっと手を挙げる。
ゆっくりゆっくりと席に座るとさっきの店員さんとは別の女性店員さんが
水を出し「お決まりになりましたらお申しつけ下さい」と言い去って行った。
「・・・あの・・・直人・・・」言い終わらないうちに
「とりあえずさっ・・ご飯食べてからにしよう!おっ・・俺もう注文したからみさこも頼んじゃいなよっ!」声が上ずっていた。直人も気まずいのだろう。そりゃあそうだ。
私はメニューを見ているふりをして直人の様子を伺っていた。明らかに焦っていて水を何度も飲んだり、きょろきょろしたり、首の後ろの汗をハンカチで拭いたりしていた。
注文を済ませ、料理が来る間も直人は黙っていて落ち着かない様子だった。
とはいえ、こちらから話を振るのも・・・と思ったので私も黙って料理が来るのを待った。
しばらくして、料理が来るとお互いに無言のまま食べ進めた。
いつもなら「これ、おいしいよ」などと言いお互いの料理を食べ比べして笑っていたのに。あの頃の私たちはもうここにはいない。
料理を食べ終えて、それぞれ食後のコーヒーが運ばれ、私が口に含むと、ついに直人の重い口が開く。
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