第9話わたしとカレ⑨
「おはようございまーす」
いつもと同じ笑顔を取り繕った。周りも気づいていないようでいつもと同じ対応をしてくれる。
・・・大丈夫。私は大丈夫だ。
そう言い聞かせて自分のデスクに向かって歩き出す。
はっ!!と目をやると昨日のホームレスおじさんが私のデスクの椅子に座っていた。
い、いるぅーーーーーーー!!!
え!?ちょっと待って、、、
私のデスクに知らないおじさん座ってるんですけど。
何で誰も気にしてないの?なに?みんな知ってる人なの!?
知らなかったの私だけとか!?
そんな事を考えてるうちにおじさんが私の存在に気付いた。
「おう。遅いで、ねーちゃん。遅刻かぁ・・・?」
のっそりと立ち上がって話しかけてきた。
「いやっ!ちょっと!何で私の会社にいるんですか!?今朝はいなかったのに!」
夢じゃなかったの!?
「・・・あぁ・・おじさんはなぁ・・早起きなんや。散歩に行ったり植木に水やったり。
朝は色々と忙しいんや」
「どうでもいいけど早く帰って下さい!!」おじさんのボロ布を掴んで引っ張ると
「・・・加藤さん・・・さっきから、誰と話しているんですか」
隣のデスクの田中さんに言われ、
「このおじさんですよ!昨日から家にいきなり居たり、会社にはいるし不審者ですよ!」
私は興奮気味で伝えると田中さんはなだめるように
「加藤さん・・・最近仕事頑張りすぎてたから疲れてるんじゃないかな・・・
少し休んだほうがいいんじゃないかなぁ・・?」
え!?ちょっと待って!見えてないの!?握りしめているボロ布に力が入る。
「あの・・・田中さん、ここにホームレスみたいなおじさんいるの・・・見えないですか・・・?」少し小声になっていた。
田中さんは頷く。私が大きな声を出していたので周囲も不思議そうに私を見ていた。
「あのっ・・・みなさんっ・・・ここに・・・その・・・変なおじさんが・・・」
「加藤さん・・・最近頑張りすぎだし昨日も僕が残業させちゃってたからなぁ・・・」
上司が反省の言葉をかける。いやいや、そうじゃなくて。
「仕事頑張らせすぎちゃったね、ごめんね」などと言われ、私はそれ以上何も言えなくなっていた。
おじさんの顔を見るとニヤァと笑い
「あんたしか見えてないねん」
と言われ私は以上に恥ずかしくなり布から手を放し、
「・・・私の・・・気のせいでした・・・・・・どうも・・・お騒がせしました・・・」
顔を真っ赤にしながら謝罪した。
何で私が謝らなきゃならないのよ!悪いのはこのおじさんじゃない!
おじさんをキッと睨みつけると自分のデスクの椅子に座った。
相変わらずおじさんはニヤニヤしながら床に寝っ転がりこちらを見ていた。
・・・ほんと・・・なんなのこのおじさん・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます