第32話 Take the devil 17




「ブレイク!!」


その言葉で四方を囲っていた土壁が崩れ砂埃が舞う。


男は台上に刺してあった刀を仕舞いマシンガンを取り出した。

このマシンガンもチートアイテムでどれほど撃っても弾はなくなることが無く、弾は普通の銃弾と着弾すれば破裂するバルカン弾に切り替えが可能だった。

そして、銃口の下にはグレネードや照明弾が発射できるようになっていた。



「お前ら! これから終わりの始まりだ!! 俺からのプレゼントだ! 真の恐怖を味あわせてやる!

 出て来い!! 召喚! デビルロード!!」


男が左腕を前に突き出すと二つの召喚紋が浮かび上がり眩い光を発する。

二つの召喚紋から人型のシルエットが浮かび上がる。

一つは痩せ型、もう一つはあんこ型をしていた。

召喚紋が光り終わり全形がはっきり分かる。

身長に比べ明かに腕が長く爪が異様に発達していた。

痩せ型は長く、あんこ型は異様に太く。

唇は血の色よりも赤く切れ上がっていた。

そして背中には黒く大きな翼が生えていた。


「クハーーーーーーー!!」

「キエーーーーーーー!!」


2匹の悪魔が雄たけびを上げる。


「うわーーー悪魔!」

「悪魔だーーーーーーーーーーー!」


ギロチン台の周りにいた兵士たちが驚きの声を上げ蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。


ダダダダダダダダダダダーン!


男は逃げ惑う兵士たちへ向けマシンガンを掃射した。


「デブー! ガーリ! オペレーションZだ!! 遠慮するな!!」


「ヒャッハーーー!!」

「ヒー ハッ!!」


2匹の悪魔が奇声を発しながら男の声に反応する。


「さすが、アニキ!! 太っ腹!!」

「お譲と違って情け容赦ないっすなー!!」


男が言った『オペレーションZ』とは皆殺しの隠語だった。

そこにいるすべての生物を排除。

民間人だろうが、女子供だろうが関係なかった。

すべてを排除せよ!と言う絶対命令であった。


2匹の悪魔は心行くまで殺戮を繰り返す。


「アニキ、キレまくりだな!」

「相当、ヘルザイムをヤラレて怒っていたんだろうな」


「こんなにキレたのは久しぶりだな! 何年ぶりだ?」

「千年? 2,3千年くらい経ってんるんじゃ無いか?」


「遠慮なく暴れられるのは気持ちいいねーー!!

「お譲じゃ許してくれなかったからな~」


『お譲』と言うのは男の妹で、とある世界を幾度となく救った『伝説の勇者』であった。


「アニキは気前がいいからな~」

「何もすることなく暇だったがアニキに付いて来て正解だったな」



デブーとガーリが話すたびに死体の山が出来上がっていった。




^-^-^-^-^-^-^-^-^-^


「ライザ様!! ライザ様は何処に!!」


ペンザは時計台に到着するなり声を上げた。


「ペンザ! 良かった! 怪我は?」

と物陰からライザが出てきてペンザに飛びついた。


「ペンザ様。魔王様をお守りできずに申し訳ございません」


「うんうん。ペンザこそ死にそうになりながらパパのために戦ってくれてありがとう」


「もったいなきお言葉!」


「ペンザ卿! ご無事で」


「サイサリーか! お前も俺なんか置いて逃げれば良かったものを・・・・・・」


「ライザ様! 早くここから逃げましょう! シロ・ブルーノがゼンセン城の跡地まで逃げろと」


「そうね!」


とライザが答えた瞬間、4人の兵士が時計塔の部屋の中へ突入してきたかと思うと巨体のペンザに斬りかかった。

4人が代わる代わる入り口に背を向けていたペンザは一方的に斬りつけられた。


「ペンザ!」 「ペンザ卿!」


ペンザは何事も無かったかのように振り向くと両手に持つアダマンタイトの棍棒で兵士たちを殴りつけ吹き飛ばした。


「ペンザ! 大丈夫なの?」


「このローブ、シロの着ていたローブのおかげで傷一つございません」


「さぁ~ライザ様!早く脱出しましょう!」

サイサリーの声で部屋を飛び出て時計塔の螺旋階段を下りる。

幾人かの兵士と階段で行き会うがペンザがすべてを排除していく。


ライザたちが時計塔から出ると広場の方では、ダダダダーン! ダダダーン!と言う聞いたことの無い音が響く。王国の兵士たちが魂を抜かれたように倒れていく。


「殺されるーーー!「逃げろーーー!」


10人ほどの兵士が死に物狂いの形相でこちらへやって来る。


「逃がさねーーよ!」

何者かの声のあと10人の兵士が次々に倒れていく。

何が起こったか分からなかったが倒れた者たちが二度と動くことはないだろうとライザたちは本能的に感じた。

視線を前に戻すと見たことの無い太った翼の生えた悪魔が立っていた。

ペンザは咄嗟に2本の棍棒を構えた。

アンコ型の悪魔は太い爪の先をぺろぺろと舐めながらペンザを見た。


「うん!? ペンギン! なぜ、お前ごときがロゼ様のローブを着ているんだ!」

と太く短めな爪でペンザを指す。


ペンザはライザとサイサリーを自分の後ろに下がらせ


「お逃げください。こいつは危険です。私が時間を稼いでいる間にお逃げください。

 サイサリー! ライザ様を頼む!」


「ぺ、ペンザ卿!・・・・分かりました。ご武運を!」


と言うとサイサリーはライザの手を引っ張り走り去ろうとしたとき


「あん? お前、アニキが話していたペンゴの息子か?」


ライザはその声に聴き覚えがあった。


「待ってサイサリー!」

と言うと立ち止まり振り返りながら

「デブー?」


その声に太った悪魔はペンザ越しに二人の少女を見た。


「ライザか!」


「あなたは何やってるのよ!?」


「皆殺し!」

とデブーは楽しそうに即答した。


「アニキの命令だ。そうとう頭に来ているみたいだな」


と男のいる方へ振り返ると、男はギロチン台の上で囲まれ兵士たちの剣が男を突き刺すのが見えた。


「キャーーー!」

ライザは手を口にやり驚く。


兵士たちが男の周りから離れると突き刺しになった男がゆっくりと膝から崩れ落ちた。


「あぁ~あ! アニキ、何回目だ? 乱戦は乱戦の戦い方があるからな~ もっと高いところに行かないとダメだな」

デブーは他人事のように言った。


男の遺体が消えると今度はギロチン台の上に出現し、左手を前に出すと空中にいくつもの足場が出現しピョンピョンと移りながら場所を変えた。


「おっ、考えたね。マシンガンがあれば上空からの攻撃が有効だからな~」

とボソボソと口にしていた。

再度、ライザたちのほうへ振り向くと


「おい!ペンギン! ロゼ様のローブを汚すんじゃねーぞ!! いいな!

 分かったらさっさと行け!」

と手払いをした。


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