第31話 Take the devil 16
男が広場の人ごみを掻き分けギロチン台が見えるところへ移動した。
程なくして鎖に縛り上げられ体中が傷だらけのペンザが聴衆の前に引きずり出された。
ギャリンギャリン ギャリンギャリン ギャリンギャリン
ペンザの体に巻きつけられた鎖の音が響く。
うをーーーーー ウヲーーーー! うをーーーーー ウヲーーーー!
兵士たちの歓声が響く。
(こいつら相当、こっ酷くペンザにやられたんだろうな)
ペンザの体は傷だらけで斬られた跡からは血が垂れている。
(おお、スゲーな! 生きているのが不思議なくらいだ! 治療一つしてやらないのかよ!!
あの姫様が指揮していたときとは大違いだな! 人間も落ちぶれたもんだねーー やだやだ!)
男は少しだけ首を左右に振った。
そして捕らわれているペンザを見ながら
(こいつ親父に似て忠臣だ。あのちびっ子エルフもたった一人で助けに・・・・死ぬ気で助けに来たのだろうな。
デュランダルのようなゴミクズもいたがヘルザイムは良い部下をもったな)
ペンザが引きずり出されたギロチン台の上には左右二人ずつ4人の騎士が並んだ。
遅れて他の騎士より明かに豪勢な鎧を着た髭面の屈強な男が台上に上がった。
うをーーーーー ウヲーーーー! うをーーーーー ウヲーーーー!
割れんばかりの大歓声。
(こいつが残虐非道なお偉いさんか。 悪そうな顔してるわ)
男が手で歓声を抑える。
「諸君! ご苦労! みなの働きで魔王ヘルザイムは倒れた」
(あぁ~ お前なに言ってるの? お前らごときにヘルザイム倒せるわけねーだろうが!
金髪のおねーちゃんのおかげだろ)
「我が兵士よ! みなのおかげでヘルザイムの恐怖を終わらせることができた。
みなの働きが我らの祖国を救ったのだ! 我が兵士よ! 感謝する!
今日! この日! 戦いは終わったのだ!!」
(なに言っているんだ! 俺たちの戦いはこれからだぜ!)
うをーーーーー ウヲーーーー! うをーーーーー ウヲーーーー!
うをーーーーー ウヲーーーー! うをーーーーー ウヲーーーー!
歓声の中に渇いた音が響く。
バタン!
演説していた男が倒れる。
(おお、ナイスタイミングだね~ エルフっ子もこれ以上、こいつのアジテーゼなど聞きたくなかったんだろうな)
パッシュン! パッシュン! パッシュン! パッシュン!
続けざまに4発の魔砲弾が打ち込まれ台上にいた4人崩れるように倒れる。
周りにいた兵士は一瞬何が起こったか分からずにいた。
男は一瞬で台上に飛び上がった。
「アースウォール!」
ギロチン台の回りを土の壁で囲う。
「ペンザ! 助けに来たぞ!」
「お、お前は! シロ! 英雄シロ・ブルーノ! 助けてくれるのか!」
「あぁ、そうだよ! お前がどうなろうと知ったこじゃなかったが、我がまま姫様が駄々をこねてな~
ライザに感謝しろよ!」
男は文句を言いながら左袖の中から黒い靄が掛かった刀を取り出しペンザに巻きついている鎖を斬った。
刀をグサッと台上に突き刺し、着ているローブをペンザに被せた。
「ロゼ! 力を貸せ! このペンギンを回復してやってくれ!」
と言うローブが光った。
ペンザの傷がどんどん塞がり死に掛けていたペンザの顔色も良くなっていく。
「こ、これは!」
「フッ!凄いだろ! 俺の取って置きのアイテムだ!
ロゼ! こいつを守ってやってくれ!」
赤い縁取りがされた白いローブが男の声に反応してまた光る。
白いローブはサイズが倍ほど大きくなった。
「ペンザ! それを着ろ! いいか!破るんじゃねーぞ!! 優しく着るんだぞ!!」
と男の言われるが間々にローブを着た。
「似合ってねーな!! どこぞのお笑いキャラだよ!!
このローブは自動で回復してくれる。そして空を自由に飛ぶことができる。
時計塔の中にライザが入るはずだ」
「姫様が!?」
「合流したあとゼンセン城へ向かえ!
それからサイサリーと言うガキが命を捨てる覚悟でお前を助けに来ていたぞ!」
「サイサリーもか!」
「お前とエルフのガキはどうなってもいいがライザだけは死んでも守れ!! いいな!!」
「無論!!」
「あぁ、それからこれを使え! お前の馬鹿力を生かすには、こっちの方があっているはず」
左袖の中から青緑をしたスパイクが付いた棍棒を取り出した。
「アダマンタイト製だ! お前の馬鹿力で振り回しても壊れることは無い!」
ペンザに投げ渡した。
「アダマンタイトか!! そんな貴重なものを!」
「ほれ!もう一本!!」
「こんな業物が2本もあるのか!!」
「何でもいいからライザだけはとにかく守れ!! いいな!!」
「お前はこれからどうするんだ?」
「俺はここでやることがあるんでな! 終わったらお前たちの元へ向かう」
「やること? やることとは何だ?」
「お前らには関係無い。私的な用件が残っているんでね! いいからとっとと行け!
ロゼ、行け!!」
というとペンザの体は土壁の天井を飛び出て時計塔へ向かった。
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