第30話 Take the devil 15


「ライザ、このお嬢さんは何者なんだ?」


「四天王の一人、魔道師のサイサリー」


「四天王?」

男は怪訝な顔をした。

男の脳内では四天王=裏切り者と言う図式が出来上がっていた。


「ライザ様、魔王様をお守りすることが出来ずに申し訳ございません」

サイサリーは深く頭を下げた。


「デュランダルとガーベラがパパを裏切って・・・・・勇者と結託していたんでしょ」


「ご存知でしたか。デュランダルが転移の秘術を使って城内に勇者を招きいれ、城内が騒然としている間にガーベラの軍が城門を内部から開けたようです。

 一気に王国軍が雪崩れこみ乱戦になってしまい・・・・・私はほとんど何も出来ずに・・・・身代わりになり城が陥落する前に私を逃がしてくれました」


「仕方ないわよ。近接戦闘やは魔道師は分が悪いものね。それであなたはここで何をしているの?」


「救出の機会を狙っていました。

 もうすぐ処刑が始まるはずです。ここから処刑人を狙い撃ちしたのちに襲撃を掛けようと思っています」


「おいおい、お譲ちゃん! たった一人でやるつもりだったのか?」


「そうだ!人間! 何か問題でもあるか! それより貴様こそ、なぜライザ様と一緒にいる!!」


「いやいや、お前も人間だろ!」


「私はエルフだ!」

帽子を取ると長い耳が露になった。


「この人は私たちの味方! シロ・ブルーノよ!!」


「シロ・ブルーノ!! 200年前に魔王様を襲撃したと言うdesperadならずものじゃありませんか! 

 なぜそんなヤツと一緒に!!」


「違うの! シロが勇者たちと裏切り者をやっつけてくれたの!」


「デュランダルとガーベラを!」


「そうよ。ほとんど瞬殺だったんだから。勇者たちも一人で倒してくれたの」


「貴様はどちらの味方なのだ! 人間か? 魔族か?」


「今回はヘルザイムが俺の雇い主だ」


「何を言っているんだ! 200年前、多くの魔族を斬ったと言う話を聞いてるぞ!」


「だから今回はヘルザイムに雇われたんだよ!」


「ライザ様! このような男信用できません!! こちらへ!」


というとサイサリーはライザの手を引っ張った。


「おっとライザは渡さん! 俺もお前のことを信用できないんでね。

 四天王二人に裏切られているんで、お前が3人目の裏切りもかもしれないからな!」

男はライザの手を引っ張り返した。


「貴様! 私を侮辱しているのか!! エルフは信頼を大事にする種族だぞ!

 エルフの誇りにかけて貴様のように平気で裏切るようなものは許さない!」


「止めておけよ! お譲ちゃん! お前じゃ俺に勝てないよ! 命は無駄にするなよ」


「貴様!言わせておけば!!」


「二人とも止めて!」

二人の口論にたまりかねたライザが止めに入った。


「今はペンザの救出が先よ!」


「ライザ! このガキは信用できるのか?」


「大丈夫! サイサリーは信用できるわ! 私の友達ですもの」


「あぁ~ライザ様。 この男は信用して宜しいのですか?」


「大丈夫! シロは何度も私を救ってくれたわ」


「仕方ない! ライザが言うなら、一先ず停戦だ」


「分かった!私もライザ様の言葉を信用しよう」



「それでお前はここから狙撃すると言っていたが、狙撃の後はどうするんだ?

 仲間はいないのか?」


「一人だ。 他は全滅した」

と言うサイサリーは下を向いてしまった。

そして顔を上げ続けた。


「降伏したら命だけは助けると言うことだったのだが・・・・

 部下は皆殺しにされてしまった。

 そしてペンザ卿が私を逃がすために囮になり・・・・・」


「ブハハハハ! なにあいつ! 『卿』付けされるほど偉いの?」


「無礼者!! ペンザ卿は我が軍一の剣の使い手だ!」


「ブハハハハ! 剣?あいつは親父譲りの斧で戦っていたぞ!」


「無礼な若造だな!!」


「ハハハハ! 安心しろ!お前より遙か年長だよ!! 敬って媚びへつらえよ!」


「ライザ様! こいつをここで殺しても良いでしょうか!?」


「だ、だ、ダメよ! シロもサイサリーをからかわないで!」


「あぁ~悪い悪い。それにしても敵さんのお偉方は悪魔を騙し皆殺しなんて、なかなか良い性格しているな~

 俺もそこまで極悪なことはしないけどな~ 見習うとしよう!

 で、狙撃の後はどうするつもりだったんだ」


「ペンザ卿だけ救うことができれば・・・・・」


「おいおい、そんな無計画な作戦あるかよ!」


と男は頭を掻いた。


「仕方ねーな! サイサリーって言ったか!? ペンザがギロチン台に連れ出されたら台上にいるヤツを狙撃しろ。俺は広場に降りて襲撃のタイミングを待つ。

 ペンザを奪還したらお前たちはゼンセン城の跡地まで逃げろ!」


「シロはどうするんだ?」


「俺か? ちょっとやっておかないとならないことがあるんでね。

 一仕事、終わったあとで合流する」


と言って男は手を挙げ時計塔からペンダントを使って広場の死角へ転移した。


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