第13話 long run 3
ラインハルトは口から下50mほどのところを執拗に聖剣で攻撃を仕掛ける。
「おいおい、大丈夫か? 2匹になるぞ!
横じゃなくて縦に切断した方がいいんじゃないか?」
がラインハルトは良いところを切断しているのかもしれない。
牛と一緒に飲み込んだペンダントは、その辺に刺さっていそうな気がする。
ラインハルトは砂地で足を取られながらも何度も跳躍をしながら同じところを斬るつける。
さすが、この世界の勇者!
切りつけられたところからワーム君の血が滲む。
聖剣に斬りつけられる度にキシャーーン!という声を上げる。
確実にダメージが入り、終に何度か目の跳躍でワームの口から下50m当たりの切断に成功した。
胴体側の切断部のすぐ下辺りが一瞬だけキラリと光ったのが分かった。
「おーースゲーー!さすが、勇者ラインハルト様だ」
ドダーーーン!
ワームの頭部分が地面に落ちる。
ヌチャグチャメチョグニョ!
「キモーーーー!!」
ワームの頭が砂の上で飛び跳ねる。
「うわ~~ 放送禁止だぞ! キモ過ぎるぞ! どうするんだ!ラインハルト! 事案だ! 事案!!」
ワームの胴体は体を起こしたまま、しばらく動かなかった。
ラインハルトは再度攻撃をかけようとした瞬間!
ドビュッ!
という音と共にいきなり首が飛び出すように生えた。
「うわ~~グローー!! ワーム気持ち悪すぎ!!」
なんと言う再生力!
色々な世界を回り数多くのモンスターを見てきたが、これほど巨大な生物が瞬間的に再生するのは初めてだった。
あまりの光景にすぐにラインハルトをからかうことも出来なかった。
「ラインハルト様~~ どうするんですか?
雷魔法は効かないし、剣技も効かないぞーーー」
ラインハルトは無視していたが、足元付近では切断した頭部がゆっくりと再生を始めていた。
再生に気がついたラインハルトは先に頭部を始末するために向き直し聖剣で斬りつけた。
(まぁ、そうするか。どうする? 頭部を殺させるか? いや、何かに使えるかもしれないな)
高速飛行でワームに近寄り左腕の手の平を頭部に向けラインハルトが斬りつける前に50mサイズのワームの頭部を袖の中に仕込んであるマジックバッグに収納した。
「お前、何をしたんだ!!」
突然の事にラインハルトは声を上げた。
「いや、何、このままお前に殺されるのは忍びないと思ってな!」
「チッ!!」
ラインハルトは頭の生えた巨大ワームに向き直り聖剣を構えた。
「チヤ~~~ンス!!」
袖の下からマシンガンを取り出した。
俺のマシンガンはファンタジー&チート武器で通常の弾丸と炸裂する弾丸に切り替えが出来、尚且つ、銃身の下にグレネードを発射出きるようになっており、グレネード、照明弾、煙幕弾etcと切り替えができる超超便利な武器だ。
ガコン!
ポーン!
ドッカーン!!
ラインハルトへ向け最高火力のグレネードを発射した。
「貴様!! 何て卑怯なんだ!!」
「あ~悪いな~ お前を殺せって命令を受けているんでね」
「言ってろ!!」
なおも嫌がらせのグレネードを発射する。
ワームに向きながらも時折、お前のようなザコは牽制だけで十分といった感じで、こちらへ向けて得意の雷撃魔法を飛ばしてくる。
(まぁ、そうだよな。ワームを何とかしないとな)
さすが、魔王を倒しただけの事はある。
俺の嫌がらせを物ともせず、あれだけ巨体なワームに負けないなんて、流石!としか言いようが無い。
俺も再度グレネードの嫌がらせ攻撃を仕掛ける。
ペンダントなぞ諦めてしまえば良いものを。
が、俺にもラインハルトの気持ちが分かる。
あのペンダントはラインハルトの命そのものなのだ。
ラインハルトと親、兄弟を繋ぐ唯一の思い出。
人は思い出無しには生きていけない。
分かるよ、ラインハルト。分かるよ。
が、時にその思い出が自分を苦しめることがあるんだよ。
俺のようにね・・・・・・・
かれこれ1時間くらいラインハルトとワームの戦いが続いている。
ワームが危なくなったとき、援護としてマシンガンを撃ったりグレネードを放ったりして嫌がらせをした。
10分ほど前から魔法を使う様子が無くなった。
終に魔力が切れたようだ。
跳躍する高さも、回数も減ってきた。
着地するたびに肩で大きく息を吸う。
(そろそろだな)
ラインハルトが跳躍し着地するところを狙って連続してグレネードを放ち、マシンガンをバルカンモードに切り替え連射する。
ドカーン!
ダダダダダダダーン!!
「クソ!! 貴様!!」
とラインハルトが叫んだ瞬間!
ワームが飛びかかり巨大な口でラインハルトを飲み込んだ!
「ナーーーイス! ワーム君!!」
が、ワームの口が閉じられる事は無かった。
なんとラインハルトは両足と両腕で踏ん張り耐えたのであった。
巨大ワームは岩など軽がると砕くと言われている。
どれだけ馬鹿力なんだよ!!
「おおお!! すげ~~! 流石、オークだな! ラインハルト!!」
ラインハルトは頭から血を流しながら、歯を食いしばりながら俺に冷たい視線を向ける。
「そろそろ茶番劇を終わりにしようか」
左腕の袖の下から2m近い透き通った紺色の大剣を取り出し、今よりも高く空に舞い上がり、ワームの口で踏ん張っているラインハルト目掛け急降下した。
ヒューン
ヒィーーーン
ヒーーーーーーン!
耳元を通過する風切り音が高くなっていく。
グサッ!
ラインハルトの心臓を貫き、胴体を切断した。
俺もラインハルトの体ごとワームの胃袋の中へと突っ込み死んだ。
ペンダントを巻きつけた短剣は胃袋の途中で突き刺さっていた。
こうして30年前の『堕ちた勇者・ラインハルト』の討伐は終わった。
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