第9話 Take It Easy 8


第二王子は勇者というdesperadoならず者の首を跳ねると、その足で王城へ向かい王との謁見を申し込んだ。

第一王子の件もあり謁見はすぐに認められ王の間へ呼ばれた。


王の間へ入ると王と王妃が一段高い所に置かれている玉座に座り待っていた。

玉座の下に17歳になった第四王子がいた。

王妃は3番目の妻で四王子の母であった。

第一王子、第一王女は最初の王妃の子供で、第二王子、第三王子、第二王女は次の王妃の子供であった。

最初の王妃は第一王女を出産してすぐに亡くなった。

第二王妃が毒殺したという噂が宮廷を巡っていたそうだ。

その第二王妃も今の王妃に暗殺されたと言われている。

よくある、王妃の座をを巡ってのドロドロとした話だ。

ドロドロとした戦いは次期国王の椅子を巡っても行われている。

第二王子がdesperadoならず者を使って第一王子を暗殺したように、第三王子、第一王女、第二王女も表向きは魔王イーガワに殺された事になっているが実のところは・・・・・


第二王子は国王の前にゆっくりと歩み出る。

その後には二人の従者がつき従い両手には唐草模様の風呂敷に包まれたものを持って歩いていた。

王の前に歩む寄ると従者の手にある風呂敷を取ると王の前に置き包みを開き膝を折り頭を下げた


「こちらが第一王子の首になります。

 そしてこちらが勇者の首です」


「第二王子!!一体どういうことだ!」

王が問うと


「私が到着したとき、勇者が暗黒魔王・イーガワを討伐したあとに報奨金で第一王子と揉め、怒った勇者が第一王子の首を跳ねたようです。

 王族殺しとして私の騎士たちが一斉に飛びかかり勇者を殺しました」


「そんな馬鹿な! 勇者が第一王子を!

 何かの間違いではないのか?


 あの者は、そなたの騎士団にやられるほど弱くは無いはず。 

 あれほどの猛者は、この世界を探してもいないはず!」


「私の騎士たちも集団で掛かれば勇者などには負けません!

 その証拠はこの首でございます!」


「バ、バ、バカな! あの勇者が!!」


「事実でございます。

 勇者もまた人間なのです。

 それとも王は何かご存知なのでしょうか?」


「い、い、いや、ワシは何も知らぬ。

 が、あれだけの剣豪がまさかやられるとは・・・・・

 信じられぬ!」



「王様! よく見てみな! 口の周りにある青緑の泡は神経毒にやられた痕だな。

 だから死因は毒殺だ。

 ヒドラとブラックコブラの毒の混合だそうだよ。

 普通なら即死ものだぜ!」

跪いている第二王子のすぐ後ろから声が聞こえた!

それはいきなり。

霊体が現れるように、誰にも気づかれること無く立っていた。


全員が声のほう見る。


「ゆ、ゆ、勇者!!」


第二王子は声を上げた。


「よぉ~ さっき振り!」


と第二王子に向け手を上げた。


「き、き、貴様!! あの首は一体なんだ!!

 死んだのではないか!!」


「まぁ~死んだけど、生き返った・・・・・と言うか、死なないんだな、これが。

 正確に言うと死ねないんだけどな。

 口に入れた瞬間、毒だと分かっていたんだけど・・・・・

 食べ物を粗末にすると罰が当たるからな~

 一応、毒にやられたフリをして様子を見ようと思ったんだけど、いきなり首を跳ねられるとは思ってもいなかったよ」


「何を言っているんだ! こ、こ、この頭は誰のものだ!」


「一応、俺の頭だけど・・・・俺の頭はここにあるからな。

 『元俺の頭』という事にしておいてくれ。

 俺の頭の話はこれくらいにして」


王の方へ向きなおした。


「ダメだよ、王様。あんたの子供たちは碌なのがいない。

 第一王子は暗黒魔王討伐のあと俺を殺そうとするし、第二王子は第一王子に暗殺を頼む。

 しかも俺に金を払うのを嫌がって俺を殺すし・・・・・・

 あぁ~第一王子も金を払うのを嫌がっていたみたいだし。

 あんたの息子たちは金に汚さ過ぎるぞ。

 まぁ~俺はもっと金に汚いけどね。

 第一王子は奴隷商売、第二王子は麻薬カルテルを作っているし・・・・・

 あんたの息子たちはどうしょうもないぞ!」


「黙れ! ならず者!! 国王! こんな奴の話を信じてはいけま、うぐぐ・・・・」


バインドを唱え体を拘束し口には猿轡をした。


「そ、そうか、勇者よ。 ご苦労だった。

 約束どおり褒美を取らす」


と王が言う。


「残念なお知らせがあるんだよ。王様」


頭を掻きながら


「あんたは第四王子に王位を継がせようと思っているらしいが第三王子の暗殺を依頼したのは第四王子。

 第二王女、第三王女の暗殺を依頼したのは・・・・・・

 あんたの隣に座る奥さんだよ」


一瞬にして王妃の表情が変わった。


「な、何を証拠に! 下賎の者が何を! 無礼者が!」


王妃が玉座から立ち上がり怒鳴る。


「今から証人を出すよ! 召喚! デビルロード!!」


左手を突き出すと、どこからともなく2匹のデビルロードが出てきた。

デビルロードは人間の姿に変身する。

痩せたどこにでもいる男と太ったその辺にいそうな男に変身した。


第四王子と王妃の顔が一瞬曇る。


痩せた男が一礼をしながら言った。


「第四王子様、お久しぶりです。その節は御用命ありがとうございました」


太った男も一礼をしながら


「王妃様、いつでも御用命ください。お給金さえあれば何でも致しますよ」


という。


「嘘だ! 僕はそんなこと頼んでいない!」

「あなた!騙されてはなりません! 悪魔ですよ!

 こやつら魔族ですよ!

 暗黒魔王イーガワの仲間に違いありません」


第四王子と王妃が叫ぶ。

国王はガッカリ肩を落とし


「どいつもこいつも・・・・・・玉座に目を奪われ・・・・・能無しどもが!」

右手で顔の半分を押さえながら言った。


「騎士団! この怪しい者を取り押さえなさい!!」

王妃が叫ぶと騎士が件と槍を構え周りを取り囲む。


「待て!」


王が静止を命令する。


「勇者よ! 私は誰が次の王に相応しいか調べて欲しいと依頼はしたが・・・・

 第一王子と第二王子のことであって」


「それは言葉が足りなすぎだね。

 俺はあんたの依頼を忠実にこなしたんだ!

 その結果がこれだ!!


 誰も王になる資格なし!


 が、王子や王妃を恨むのも筋違いという気もするがね。

 あんただって同じ事をやってきたことじゃないのか?

 並み居る兄弟たちを押しのけ、いや正確に言うと他の王子たちを殺して王に就いたのだろ。 

 王子たちと同じように兄弟を暗殺してきたんだろ?

 遺伝だよ、遺伝!

 じゃなかったら『ゼルダムの呪われた血』なんじゃないか?

 ゼルダム王家は詐術、謀略などで他の国を侵略してきたろ。

 人の信頼を挫くことばかりしているから、自分達も親・兄弟間で信頼を築けないんじゃないか?

 今に始ったことじゃないだろ」


「うぐぐぐぐ! 我が王家を愚弄するのか!! 下賎の者め!」


「契約は契約だ! 残金を頼めるかな?」


「いつまでもふざけた事を! 貴様などに払う金は無い!!

 ひっ捕らえよ! いや、殺しても構わん!!」


「子が子なら、親も親だな! やっぱり、あんたらは親子だよ!

 国民に対しても他国に対しても示しがつかないか?」


騎士団が次々と斬りかかってくるのを軽やかなステップでヒラヒラとかわす。


「止めておけよ。

 お前らが把になっても相手にならんぞ!」


「アニキ、どうしましょう?」

痩せた悪魔が問うと


「アニキ、皆殺しにしちゃいましょう~」

太った悪魔が答える。


「罪の無いものを殺すのは寝覚めが悪いからな~ 威圧を使って動けないようにしておけ」


「残念!」

太った悪魔が答えながらスキルの威圧を唱えた。

騎士たちは全員剣を落とし尻餅をついた。


「なぁ~王よ、もう一度聞くが残金5億ゼルダムの支払いはどうする? 拒否するか?」


「お前などに払う金は無い!!」


「そうか、お前は契約違反は一度だけだから許してやるよ。

 十分、王子たちから金は貰ってるしな。

 後は正式・・な依頼主に判断してもらうとしよう。

 もう二度と会うことは無いだろう。 残り少ない人生を楽しめ!

 行くぞ! デビルロード!」


王たちに背を向け歩き出すと2匹のデビルロードもそれに従った。



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