第8話 Take It Easy 7
第一王子の領地から少し寄り道をして王都へと戻った。
王都は暗黒魔王イーガワの討伐のために出征していらい2ヶ月ぶりであった。
委細を伝えるために第二王子の館へ赴く。
顔パスで館の応接間まで歩むを進めると、そこには第二王子が待っていた。
「やぁ~ 第二王子! お待たせ」
と愛想良く入室をする。
「見る?」
と聞くと第二王子は黙って頷いた。
第一王子はガチガチの武道派だが第二王子は文官の趣を持っている。
体も細く痩せており、剣を振る姿は似合わない。
ローブの袖に手を入れ唐草模様の風呂敷を出す。
どう考えても袖から出てくるサイズではない。
疑問に思う第二王子の顔を見て
「袖の下から出した方が悪人ぽいだろ?
ワイロなんか袖の下と言うくらいだからな」
テーブルの上に置き、ゆっくり風呂敷を広げる。
「間違いないだろ?」
「そうですね。では残金5億をお支払いいたしましょう。
額が額なので少々お時間をください。用意させますから」
第二王子は後ろに控える40代と思われる男に目配せをした。
執事らしき男と入れ替わりにメイドがトレーに酒と菓子を持ってきた。
「あ~~申し訳ない。仕事中はアルコールは飲まない主義でね。
紅茶を出してくれるとありがたい」
メイドは菓子だけ置いて下がった。
「勇者らしくないですね。あなたはもっと豪胆だと思いましたよ」
「仕事とプライベートはキッチリ分ける主義なんでね」
「あなたが魔王のダンジョンから第一王子を連れて飛んでいったとき裏切られたのかと思いましたよ」
「アッ、見られていた? よく俺だって分かったじゃない?」
「それはそうでしょ。あなたと違って空を飛べる人間なんていませんから。
そんな魔道具持っているのはあなたくらいでしょ」
と言うと赤い縁取りがされた白いローブを見た。
「安心しろよ! 俺は約束はちゃんと守るから。
契約は絶対だからな。信用第一!!
俺のような
そこへメイドが紅茶を持ってやって来た。
メイドが紅茶をテーブルに置くとき第一王子の首と目が合ったのか・・・・・・
いや、第一王子の首を見てビクッとなった。
「第二王子、これをどこかへ退かしてくれないか?
お茶菓子とはいえ口にしようかと言うときに、これは、ねぇ~」
と両肩を竦めた。
第二王子は風呂敷で包むとメイドに持って行かせた。
メイドは嫌そうに、おっかなびっくり運んで行った。
「生ものだから早く国王に届けた方がいいぞ」
目の前のお菓子、カステラを手にしながら言った。
「今日にでも国王に謁見する予定です。
第一王子は暗黒魔王・イーガワの討伐中に倒されたと報告しておきますよ」
「これでお前さんが次期国王と言うことだな。
おめでとう。俺もお前さんの下で働いた甲斐があったよ。
うん、このカステラ美味しいね~
少し砂糖を減らし、塩を入れた方がもっと美味しくなるぞ!」
「塩?」
「あ~そうだ。塩!
塩を入れると甘みが増すんだよ!」
第二王子も理解出来ないようだった。
(料理に興味が無いと言うところは、兄弟といったところか)
「王子! 王子!」
と声を上げながら文官らしき人物が部屋に飛び込んできた。
「今、接客中だぞ!」
「そ、そ、それが大変です!!」
第二王子は部屋の隅まで行くと文官は耳元で囁いた。
「それは本当か!!」
第二王子はキッとした顔で振り返った。
「私の領地で畑が放火され、すべて延焼したそうなのですが、勇者殿は何かご存知ありませんか?
その男は空を飛んで魔法で辺り一面を焼き尽くしたそうです」
「美味いね~このカステラ! やっぱり、塩を入れたら名産になると思うんだけどな~」
「勇者殿!!」
第二王子は怒気を発しながら言った。
「あぁ~あれか、よく燃えたぞ!
ファイヤーボールじゃ、心配なんでヘルフレイムにしておいたよ。
芽が生えてこないように徹底的に燃やしておいたよ。完璧だろ。
サービス! サービス!」
「何て事をしてくれたんだ!! 貴様!! 私の収入源を!」
「おいおい、いいのか? 国の王子様がケシの実を栽培していて麻薬カルテルの元締めなんかやっていて。
国王に就任するのに汚れたままではマズイだろ。
綺麗な体にしておいたぞ。
これで他の王子や王女に痛い腹を探られないで済むだろ」
「貴様ーーーー! 許さん!
「さっきまで勇者さまだったのにね~ 今は貴様か!!
うっ!!」
喉が焼けるように熱い、胃がムカムカする。
「ウグ!!」
血を吐いてしまった。
「第二王子! 毒を盛ったな!!」
「今頃になって効いてきたのですか!
ヒドラの筋肉毒とブラックコブラの神経毒の混合ですよ。
普通の人間なら飲んだ瞬間に死に至るはずなのですが、あなたは平然としていたので効かないと思いましたよ。
こんなに時間が掛かって効き目が出るというのは、ドラゴン並みに鈍いのですね」
「うッぷ! 計ったな! 計ったな!! 第二王子!!
カステラに毒が持ってあったという事は最初から俺を殺すつもりだったのか!!」
「はい、そうなりますね。
あなたのようにお金の価値が分からない人に支払うお金はありませんよ」
「う、う、無念!!」
と言うと床にうつ伏せに倒れた。
「猛毒も分からないような、あなたに味の事を言われてもね」
と倒れている男を嘲笑った。
パンパンと手を叩くと記した血が入ってきて命令を下す。
「この者の首を跳ねておきなさい。
兄殺しの大罪人として国王の下へ持って行きます」
と言うと死んだ男の亡骸の両脇を抱え引きずるように部屋を後にした。
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