梟
ゆうがたになると、「あれ」がなきはじめるので、わたしはこわいのです。「あれ」がなきはじめると、わたしは、なにもてにつかなくなるのです。木のはだと、葉のうぶ毛に、夜露がひたひたとまとわりつくようなゆうがた、ほう、ほう、とそれがなくので、おんがくのようにそれがなくので、わたしは、それを、ただただ、きいているしかないのです。
森田さん、あれはなんなのでしょう?ふくろうなのでしょうか?あるひ、わたしは森田さんにききました。あれは、青いやねのいえにすむ、村上さんだよ。村上さんはゆうがたになると窓をあけて、なくんだよ。村上さんは、むかし、かしゅ、だったので、いまもそうやってれんしゅうしているのさ。森田さんはそういって、ぼうしをふかく、ふかくかぶりました。
わたしは村上さんのすがたを、いちどもみたことがありません。ここでは、ちいさなどうぶつが、きゅうにふえたり、へったりします。あのなきごえが、にんげんじゃなくて、ふくろうだったらよかったのに。ほう、ほう。こわいものが、また、ひとつふえてしまいました。
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