第13話 模擬戦
<< Kaie side >>
すぐに帰るという淳士の判断は正しかった。あのまま戦ってもグダグダで、鍛錬どころの話じゃなかったからな。
王宮に戻ると俺たちは鍛錬場に。今度も淳士が引っ張る。
「MPがなくても他の技能の練習はできるから。的当てと組手で、とにかく攻撃が当たるようにしないと」
淳士は鍛錬場に備え付けの木剣を持って来て、加奈子と結城と組手を始める。紗枝はロングボウで的当ての練習だ。
止まった状態で動かない的に当てるのは簡単だから、紗枝も普通に当てている。加奈子と結城の技能も淳士に命中しているが……このやり方じゃなあ。
「なあ、みんな……模擬戦をやらないか。自分の武器を使って、魔法もありありで」
「うん。その方が楽しそう!」
紗枝はすぐに賛成するが、淳士は予想通りに反対する。
「でも、そんなことをしたらHPが持たないし。凪原さんはまだMP切れだから」
MPは自然回復するには時間が掛かる。
「淳士はそう言うと思ったけど、問題ないよ。俺の魔法で解決するから。『
「……あ、全快してる」
俺が使ったのは
「あとはHPの方だけど、そっちも問題ない。俺が魔法を使ったから、どんな攻撃を受けてもHPは減らないからさ」
こっちは技能じゃなく、俺自身の魔法だ。無詠唱で
「淳士、悪いな」
俺は剣を抜くなり、技能を発動させて淳士の頭上から振り下ろす。完全な不意打ちに淳士は反応できず、思わず目を瞑るが……
「……あれ、HPが減ってない!」
「魔法でも同じだからさ。どんなに攻撃を受けても、今のおまえたちのHPが減ることはないよ。MPも減ったら分けてやるから、いくらでも魔法を使ってくれよ」
完全に反則だけど、みんなのペースに合わせていられるほど、実はそこまで時間の余裕はない。とにかく今は動く相手に当てるコツを憶えて、地下迷宮で戦えるレベルになって貰わないとな。
そういう訳で、淳士たちは普通に武器と魔法を使って模擬戦を始めた。淳士と結城が剣で切り合うところに、紗枝がロングボウで矢を打ち込んで、攻撃が当たってダメージを受けた
一番問題なのは、紗枝の弓の腕だな。動いている相手だから当たらないというレベルじゃなくて、そもそも真面に矢が飛ばない。
「紗枝、おまえなあ……まずは止まってから
「だって、止まったら攻撃の的になるじゃない」
「何言ってんだよ、攻撃が来たら避ければ良いだろう。動きながら矢を当てられる奴なんて、滅多にいないからさ」
俺がいた世界には曲芸しながら矢を撃つ奴もいたけどな。
「へえー……そうなんだ。だったら……行くよ!」
淳士が盾で結城のバスタードソードを受けたところに、紗枝が放った矢が真っ直ぐに飛んでいく。普通にやれば
「キャッ! あ、あの……二詩織さん。戦ってるときに矢が飛んで来るのは怖いんだけど」
「何言ってんのよ、結城。カイエ君の魔法があるから大丈夫でしょ。それに一緒のパーティーなんだから、私のことは紗枝って呼んでよ。結城も宮村もバンバン動いて! 動いてる的の方が練習になるから」
「ちょ……二詩織さん、そんなこと言われるとやりづらいから!」
「待ってよ、紗枝。私が結城に回復魔法を掛けるから……『
話している最中で結城は止まっていたから、加奈子の魔法は普通に命中する。
「まあ、最初は戸惑うだろうけど、直ぐに慣れるよ。結城も折角だから矢が飛んで来たら避ければ良いし、攻撃を警戒するだけでも訓練になるからさ。あと、MPがなくなったらすぐに言えよ」
「うん。カイエ君がそう言うなら……」
「何よ、結城。私が言ったときと随分態度が違うじゃない」
「え……そんなつもりじゃ。ごめんなさい」
「紗枝は結城をイジメないの! 結城のことは気にしないで良いから」
女子三人の勢いに淳士が付いて行けてないのが気になるけど。四人の中で淳士だけが真面に戦えていたから、問題ないな。
途中で淳士が回復役になって、加奈子が戦闘に参加。結城が攻撃魔法を使い、紗枝がバトルナイフに持ち替える。全員が二パターンの行動が取れるから、何度か役割を変更しながら、その日は夕方まで模擬戦を続けた。
ゲームの世界に勇者として召喚された魔王は勝手に無双する。異世界チートなんて邪魔なだけだし、王女の事情なんて関係ない。そもそも俺は正義じゃないから。そんな魔王と一緒に召喚された高校生が翻弄される話。 岡村豊蔵『恋愛魔法学院』3巻制作中! @okamura-toyozou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ゲームの世界に勇者として召喚された魔王は勝手に無双する。異世界チートなんて邪魔なだけだし、王女の事情なんて関係ない。そもそも俺は正義じゃないから。そんな魔王と一緒に召喚された高校生が翻弄される話。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます