第10話 暗躍するカイエ
<< Kaie side >>
三日ほど時間を遡って二日目の夕方。
天井がガラス張りの温室のような空間には、室内だというのに薔薇の生け垣が植えられている。昼間は直射日光か降り注いでいるのに室内が涼しいのは、
「それで……カイエは半日も掛けずに
気品漂う白いテーブルの両側に、白い革を張ったゆったりとしたソファーが二つ。エミルはソファーに凭れ掛るように片肘をついて、俺を睨んでいた。
「はい、エミル殿下……私は一切助力などしておりません。カイエは一人で
ステラの応えに、エミルは顔を顰める。
「ステラ……貴方はいつからカイエを呼び捨てにするようになったの?」
「エミル殿下、申し訳ございません……ですが、呼び捨てにすることが、私が同行するためにカイエが提示した条件なのです」
どういうことと、エミルは俺の方を見る。
「ああ、その通りだよ……だから、ステラに文句は言わないでくれよな」
ステラの頬が何故か赤いことを、エミルは怪しんでいるようだったが。
「まあ、良いわ……カイエ、貴方の実力を考えれば
『
「だからさ、飛行魔法で迷宮を駆け抜けただけだよ。面倒だから玄室の扉は全部破壊したけど、エリザベスが修復した筈だから問題ないだろ」
「そのエリザベスって……
どうやら、王女であるエミルも本物の
俺は
「
「いや、神様って奴がこの世界を創ったのか、俺は知らないから何とも言えないけど。
「結局のところさ、
クロムウェル王国に存在する
「カイエが
エミルの
「私は他の勇者たちを育てたいのよ。だからカイエ、約束してくれないかしら……彼らが
特別な力を与えられた勇者は、この世界の基準で言えば優秀な戦力だ。エミルも含めて、この世界では呪文を詠唱して魔法を発動するのが常識だが、勇者たちは魔法の名前を叫ぶだけで発動することができる。
無詠唱で魔法を発動できる俺には面倒だけだが、名前だけで発動できるのは無条件で詠唱短縮できることに等しい。さらに勇者たちは上位魔法も
「解ったよ、エミル……おまえの条件を飲むから、俺は明日から他の
エミルは気づいていないみたいだが……勇者たちが
「なあ、エミル……もう一つ教えて欲しいことがあるんだけとさ。わざわざ国王が不在のタイミングを狙って、勇者を召喚したおまえの狙いは何だよ?」
唐突な質問にエミルは目を細めて、ステラが凍りつく。魔王を倒すための勇者召喚を国王ではなく王女のエミルが主導しているのだから、違和感を覚えるのも当然だろう。
「何度も言ってるけど、俺はエミルみたいな奴は嫌いじゃないんだって。内容次第じゃ、協力してやっても良いよ」
大よその想像はついていることを悟ったらしく、エミルはゆっくりと語り始めた。
※ ※ ※ ※
そして五日目の午後。一番最後に
再び訪れた王宮の奥にある『庭園』で、今日もエミルは不機嫌な顔をしていた。
「それで……クロムウェル王国の
「はい、エミル殿下……昨日までの二日間で、カイエは四つの
ステラが誇らしげなのが、イマイチ意味が解らないが。勿論、ラスボスを倒したというレベルじゃなくて、俺は四人の
「二日間で
エミルは凄みを効かせて俺を睨んでいるが、事実だから仕方がない。
「まあ、エミルとの約束は守るよ……三日後には勇者たちとパーティーを組んで、俺も
エミルの狙いも解ったことだし、利害が対立する訳じゃないから協力してやるよ。淳士たちと一緒に
とりあえずはエミルとクロムウェル王国を優先するから……別に構わないよな。
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