第5話 カイエのクラス
<< Kaie side >>
ステータスリングが表示した俺の
俺が選んだ
俺が鍛錬場に行くと先客がいた。
「よう、結城。おまえも
「あ、カイエ君だ……うん。私は『魔法剣士』にしたわ」
魔法剣士は近接戦闘技能がメインで、魔法系技能も使える職業だな。初期技能の魔法属性は地水火風から一つ選択できる。
「魔法属性は何にしたんだ?」
「風にしたわ……カイエ君は、どの職業にしたの?」
「俺は『勇者』にしたよ」
嘘を言っている訳じゃくて、俺が最後に
「『勇者』って……そんな職業があるの?」
「ああ、最上位職業みたいだけど。とりあえず選択できたよ」
「最上位って……凄い! カイエ君は……私みたいな偽物じゃなくて、本当の勇者なんだ」
結城は何故か目を逸らして俯く。
「何だよ、偽物って……訳の解らない力を与えらて、戸惑っているのか。それを言ったら、俺だって同じだろう」
「ううん……カイエ君は初めから魔法が使えるし、エミル王女とも対等に渡り合っていたじゃない。カイエ君みたいな人が勇者になるべきで、私みたいな人に流される性格じゃ……!」
結城の言葉が途切れたのは、俺が顎に触れて、強引に上を向かせたからだ。
「え、なに……」
「なあ、結城……人に流されるのが嫌なら、自分の頭で考えれば良いだろ。決めるのはおまえだから、俺は偉そうなことを言うつもりはないけどさ……おまえにも勇者の資格はあると思うよ」
勝手な都合で召喚されて、勝手に力を与えられた。だったら、こっちも好きにやれば良い……召喚された時点で代償は払っているから、全員に勇者の資格はある。
「カイエ君……私なんかに勇者の資格が?」
「別に難しく考える必要なんてないだろう。結城は結城の好きなようにやれば良いよ」
頬を染めて潤んだ瞳で俺を見つめる結城。ちょっとやり過ぎたかな……俺は結城から離れて、鍛錬場の中央に立つ。別棟の地下に造られた鍛錬場は、勇者が
さてと、技能を試してみるか。勇者の初期技能にある雷属性魔法技能で、俺は下位魔法『
「え……」
結城が思わず声を上げる。俺が放った雷弾は床を破壊しながら突き進んで、轟音とも壁に命中すると一面に大穴を開けた。技能で発動した魔法は
「カイエ君……勇者の魔法って、こんなに凄いの? 私の風魔法なんて……」
呆然としている結城に、俺は苦笑する。
「いや、そこまで驚くことじゃないだろう。結城だって能力値が伸びれば、これくらいできるようになるよ」
嘘じゃないけど、結城の能力値がどこまで伸びるかは怪しいな。まあ、能力値補正にも上限があるから、下位魔法なら上限まで伸ばせないこともないか。
「とりあえず、他の属性魔法も試してみるか」
「次は火属性魔法にするか……『
焔弾も雷弾と同じ程度の大きさだった。同じ場所に命中させると効果が解りづらいから、今度は少し上向きに角度を変えて放つ。天井付近に命中した焔弾は、壁と天井を破壊して二つ目の大穴を開けた。
「……」
最早言葉もない結城を放置して、俺は技能を考察する。
「威力は雷弾と大差ないな。下位魔法だと、どれも似たようなものか……そもそも、技能で発動する魔法は魔力効率が悪過ぎるんだよな」
近衛騎士を引き連れたエミルがやって来たのは、このタイミングだった。
「さっきから、何が起きているのよ……これって! カイエ、貴方がやったの?」
二つの大穴を見て、エミルは唖然とする。
「ああ、そうだけど。普通に下位魔法を試しただけだよ」
「冗談でしょ……鍛錬場を破壊するなんて、貴方の
「いや、こんなのすぐに直せるだろ」
「あのねえ……ただ修復すれば良い訳じゃないのよ。魔法で補強するには時間もコストも掛かるわ」
「それも含めてさ……これで良いよな」
俺は無詠唱で錬成魔法を発動して、鍛錬場を一瞬で元の姿に戻した。勿論、補強もしてある。やっぱり自分で魔法を発動した方が色々と効率が良いし、いちいち魔法の名前を叫ぶのは面倒だよな。
目が点になるエミル……
「でもさあ……毎回直すのは面倒だし。俺が
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