第21話 主人公-21
「どう?」リョーコ
リョーコは目を輝かせて訊ねた。しのぶは自分がレギュラーで名前が載っているメンバー表を見て戸惑ってしまった。
「どうって…」しのぶ
「けっこう、いいでしょ」リョーコ
「こんなの」しのぶ
「あ、不満があったら言ってね。まだまだ変えるから」リョーコ
「で、でも、こんなの」しのぶ
「あ、笠原っていうのは、アタシのダチ。まぁ、大丈夫だと思うわ。緑川さんっていうのは、ミキちゃんの紹介。由理子さんって、直樹さんの妹だから、多分うまいだろうってことで、まぁ、こういう風にしたけど、また、いつでも変えるから」リョーコ
「でも…」しのぶ
「あ、それから、あゆみちゃんは自分からキャッチャーやるって言ってくれたから、こうしたの。まぁ、いざとなったら、アタシがしてもいいから」リョーコ
「こ、こんなの…、いいの?」しのぶ
「いいの、って、やろうって決めたじゃない」リョーコ
「で、でも、もう、こんなの…」しのぶ
「ダメ?」リョーコ
「ん、んん。いいけど」しのぶ
「じゃあ、決まりィ!OK、OK!さぁ、やろう!」リョーコ
意気盛んな涼子に呆気に取られていると、朝夢見がしのぶに近づいてきた。
「リョーコったら、もう、やる気まんまんだから、仕方ないわ」あゆみ
「でも……。ア、あたし」しのぶ
「どうしたの?」あゆみ
「あたし、さっき、イチローのやつに試合申し込まれたんだ」しのぶ
「野球部?」あゆみ
「ナニィ?野球部?」リョーコ
後ろを向いていた涼子が耳ざとく反応した。
「なによ、リョーコ、いきなり」あゆみ
「野球部に試合申し込まれたの?」リョーコ
「ぅ、うん」しのぶ
「やったぁ!じゃあ、第一戦は、野球部とね」リョーコ
「そ、そんな、無理よ」しのぶ
止めようとするしのぶを制するように朝夢見は言った。
「いいんじゃない?」あゆみ
「あゆみさん…」しのぶ
「大丈夫よ。だって、サンディとミキちゃんと、あたしが投げれば、絶対点は取られないもん」あゆみ
「で、でも」しのぶ
「最初は、愛球会かな、と思ってたけど、これで、相手が決まったわ。やりましょう」あゆみ
いつになく、積極的な朝夢見にしのぶは戸惑ってしまった。
「い、いいの?」しのぶ
「なにが?」あゆみ
「だって、試合…。まだ、メンバーも揃ったばかりなのに」しのぶ
「いいんじゃない。それとも、しのぶちゃんは、嫌なの?」あゆみ
「んー、あたしは…、試合は、したいけど…」しのぶ
「じゃあ、いいじゃない」あゆみ
「でも…」しのぶ
「なに?」あゆみ
「どうして、朝夢見さん、急にそんなに積極的になったの?」しのぶ
「このメンバーなら、気兼ねなくできるから」あゆみ
「え?」しのぶ
「だって、愛球会は、設立のメンバーがやっぱり優先されるべきだと思わない?」あゆみ
「そ…うね」しのぶ
「でも、このメンバーなら、気兼ねなくできるわ」あゆみ
「そうね」しのぶ
「だから」あゆみ
「うん、わかった」しのぶ
しのぶは大きく頷いて、朝夢見を見た。朝夢見もしっかりと頷いた。
「ね、あゆみさん」しのぶ
「なに?」あゆみ
「あたしにも、特訓してよ」しのぶ
「え?」あゆみ
「やるからには、あたしも、上手になりたい」しのぶ
「うん。でも、厳しいわよ」あゆみ
「はい。先生、よろしくお願いします」しのぶ
二人は顔を見合わせながら、笑った。
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