第20話 主人公-20

          *


 更衣室を出てグラウンドに行く途中で、しのぶは自主トレに出るイチローと出会った。イチローは、じろりとしのぶを見ると、

「おい、オマエ、いま、野球やってるんだってな」と言った。しのぶは、イチローの物言いにカチンときて、少しふてたように答えた。

「そうよ。それが、なに?」

「オマエに野球ができるのかよ」

「できるわよ」

「なんなんだ、オマエらは」

「なによ、その言い方は」

「女は、バレーとかテニスでもやってろ」

「うるさいわね。今度、女子のチームも作るんだから」

ムキになってつい口走ってしまった。

「あに~?女だけのチーム?そんなもん」

「なによ」

「そんなもん、試合になるかよ」

「知らないのね」

「なにを?」

「あゆみさんやミキさん、サンディもいるのよ」

「サンディ…と、アユミ?ミキ?誰だ、それ?」

「知らないの?あゆみさんよ。由起子先生の弟子の」

「待て!あの、あいつか?あいつ、バケモンだろ?」

「失礼ね」

「ミキって?」

「ミキさんも由起子先生の弟子」

「じゃあ、ファントム・レディなのか?」

「そうよ」

「じゃあ、バケモノばっかりじゃないか?」

「失礼ね」

「なんなんだ、オマエら」

「どう?一度、試合してみる?」

「オマエは?」

「え?」

「オマエは出るのかよ」

「そりゃ、あたしも」

「じゃあ、大丈夫だ」

「なによ、その言い方。あたしだって…」

「いいよ。試合してやるよ」

「なによ、その言い方。えっらそうに」

「いいだろ。試合してやるって言ってるんだから。オマエらなんて、どこからも相手されないだろ」

「ふん。大丈夫よ」

「いいよ。そう伝えときな。オレの方は、話つけといてやるから」

「イー、ダ!」

イチローはそのまま帰っていった。しのぶはむしゃくしゃしたまま、グラウンドに向かった。


 グラウンドに着くと、女の子の姿が多いのに気づいた。涼子はしのぶを見つけると手招きして呼んだ。

「ね、早く!」リョーコ

しのぶは言われるままにグラウンドに入った。

「なに?」しのぶ

「ほら、新しいメンバーと、女子チームのオーダー表」リョーコ

しのぶは、見慣れない女の子を見ながら、オーダー表を手にした。


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        サ            

  清 朝 明 ン 緑 桜 岩 笠 西  

  水 霧 日 デ 川 井 崎 原 野  

        ィ            

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