第11話 主人公-11

 未来のテストは、驚嘆の声の中で終わった。先日の朝夢見のテストの時と同じように、速い打球が次々と外野を抜けていき、時にはフェンスも越えた。外野からの返球もダイレクトでキャッチャーに届き、マウンドから投げ下ろす速球に、山本はあえなく空振りを繰り返した。

「なんなんだよ、こいつら」山本

そう言う男子の傍らで、この驚異の女子たちはきゃっきゃっとはしゃいでいた。

「えー、明日あしださんは、毎日出れるの?」高松

「はい。あたし、暇ですから」ミキ

「じゃあ、レギュラーだな」高松

「僕、抜けるの?」中沢

「ま、そうだろうな」山本

「悪いな、中沢。抜けてくれ」高松

「仕方ないなぁ。ま、こんなのだったら、諦めもつくけど」中沢

「じゃ、オーダーも決めようよ」山本

「でも、清水さんは、出てくれないの?」高松

「あたしは、控えでいいですよ」あゆみ

「そう。残念だな。じゃ、明日さん」高松

「ミキでいいですよ」ミキ

「ミキちゃん。何番がいい?」高松

「あたし、一番」ミキ

「おい、一番はオレだよ」山本

「あたし、右でも左でも打てますよ。脚にも自信ありますよ」ミキ

「キャプテーン、どうする?」山本

「いいじゃない。一回、一番でやってみようよ」高松

「じゃ、オレは?」山本

「三番か五番くらいでどう?」池田

「五番だな」小林

「ちっ。小林、お前が五番に下がれよ」山本

「あのぉ~」ミキ

「なに?」高松

「あたし、三番でもいいですよ」ミキ

「あ、そう」高松

「でも、条件があります」ミキ

「なに?」高松

「あゆみちゃんを、一番にしてください」ミキ

「あたしはいいわよ、ミキちゃん」あゆみ

「それか、あたしが一番で、あゆみちゃんが三番」ミキ

「いいのよ。あたし、控えで」あゆみ

「でも、そんなの、面白くないよ。あゆみちゃんとコンビ組めたら、いくらでも点取れるのに」ミキ

「あたしたちが二人とも出たら、まともな試合にならないわよ」あゆみ

「どういう意味なんだ」山本

「さぁ?」小林

「それより、あたしは、やりたいことがあるの」あゆみ

「なに?」ミキ

「それは後で話すわ。ね、仙貴」あゆみ

「俺?俺が何か関係あるの?」仙貴

「ちょっと相談に乗って欲しいの」あゆみ

「まぁ、あゆみの話なら、いいけど」仙貴

「ね、ミキちゃん。頑張ってね」あゆみ

「そんなのぉ、もったいないなぁ。ね、しのぶちゃん」ミキ

「うん」しのぶ

頷きながら、親しげに言葉を交わしている朝夢見と仙貴の姿が気になって仕方ないしのぶだった。

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