追加エピソード2

(……どういうことだ?)

 結城は混乱した。

 これから、肌を重ねて抱き合うのだからなぜわざわざ、体をキッチリを覆いつくす冬服を着ているのだろうか?

(これはあれか? 一枚一枚自分の手で脱がしていく楽しみを演出してくれてるのか?)

 正直、結城には分からない感覚だが藤井が「そういうのが興奮する」とかなんとか言っていた気がする。

 いやしかし……小鳥がそこまで考えるだろうか?

 うーむ、と首をかしげる結城。

 まあしかし悩んでもしょうがない。

 こういう時は変に遠慮せず、素直に聞いてみることにしたのだ。

「……なあ小鳥」

「あっ、えっと」

 小鳥は自分の髪を開いている手でいじる。

「……そうですよね。これから、その、するんですもんね。着てたら変ですよね」

 そして、ふう、と息を吐くと。

「脱ぎます……」

 そう言って、制服のボタンに手をかける。

 セーターを脱ぎ、ネクタイを外す。

 ブラウスの上からでも分かる綺麗で女の子らしい起伏のある体のライン。

 ほとんど一緒に住んでいるようなものなので何度も見たことがあるが、それでも息を飲むくらい魅力的だった。

 そして、小鳥は次に長袖のブラウスのボタンに手をかけ一つ目のボタンを外す。

 ゆっくりと二つ目。

「……」

 だが、そこでブラウスを手で抑えたまま俯いて固まってしまった。

「……小鳥?」

 いったいなにがあったのだろう。

「もしかして、やっぱりまだ怖いのか? それならまた今度でも……」

 結城がそう言うと、小鳥は強く首を横に振る。

 そんなことは決してない、と必死で訴えるように。

(じゃあ、なんでだ……?)

 結城が理由を考えようとすると……。

「……その」

 小鳥が呟くような声で。

「……私、綺麗じゃないですから……」

 ギュッと、ブラウスを握りしめながらそう言った。

(……ああ、そうか)

 体の傷跡。

 小鳥の体に刻まれた辛い過去の証。

 いつも小鳥は部屋の中でも長袖を着ている。

 ほとんど一緒に住んでいる状態でも、ほとんど小鳥の体中に刻まれているはずの傷跡を見ることがなかった。

(……頑張ってたんだな。俺に見られないように)

 女の子だから、好きな人には綺麗な自分を見ていた貰いたい。

 そういうことなんだろう。

(男もまあ……好きな女の子の前ではカッコいい自分でいたいしな……)

 だからうん。

 気持ちは分らなくもない。

「……でも」

 結城はベッドから立ち上がる。

 そして小鳥の手を握ると、グイッと自分の方に引き寄せた。

 小鳥の小さな体が腕の中に収まる。

「あんまり見くびらないでくれよ……」

 耳元で少し強い口調で小鳥に言う。

「……え?」

 結城は優しい手つきで、小鳥のブラウスのボタンをもう一つ外す。

 小鳥の意外に大きな胸に押されて、少しブラウスがはだける。

 そして現れたのは無数に刻まれた赤黒い傷跡。

「……いや」

 小鳥が小さく首を横に振る。

「大丈夫……綺麗だよ……」

 結城は耳元でそう囁くと、鎖骨の下にある傷跡の一つにキスをした。

「あっ……」

 ピクリと体を震わせる小鳥。

 そう。

 ちゃんと綺麗だ。

「確かに傷跡もあるけど、そうじゃないところは白くて滑らかで健康的で……ホントに綺麗な肌だと思うよ」

 結城は小鳥の肌の白い部分を指でなぞりながら言う。

「ふぁぁ」

 小鳥の体が今度はビクンと震えた。

 結城はもう一度、小鳥の耳元に顔を近づけて囁くように言う。

「大丈夫。傷跡も含めて、ちゃんと小鳥の全部を愛してるから」

 そう言った瞬間。


 ビクンビクンビクン!!


 と、小鳥の体が跳ね上がる様に痙攣した。

「!?」

 驚く結城。

 小鳥の体から一気に力が抜けたので、なんとか両手で抱きしめて支える。

「だ、大丈夫か?」

「……ふう、ふう、はぁ」

 小鳥はなんとか呼吸を整えいるようだった。

 それにしても息遣いが艶めかしい。

 そして。

「……好きぃ」

 水がしみ出していくように、小鳥の口からそんな言葉が漏れた。

「……結城さん、好きぃ、大好き。なんでそんなに優しいんですかぁ。好きすぎて死んじゃいますよぉ……」

 そう言って、結城の胸に自分の顔をギュウギュウ押し付けてくる。

「……」

 結城はそんな彼女の姿を見て思う。

(……やっぱり可愛すぎるだろ、この生き物)

 先ほどまで緊張で元気のなかった結城の分身が、パンツを突き破るんじゃないかくらい元気になっていた。

「小鳥……」

 結城は小鳥の服を優しい手つきで脱がせていく。

 ブラのホックも実は小鳥のいない時に、干してある小鳥のブラを使ってこっそり外す練習をしていたのでスムーズに外せた。

 小鳥も今度は抵抗することなく、結城に身を任せてくれている。

 パンツ一枚を残したところで、結城は小鳥の体を優しくベッドの上に寝かせる。

 そして結城は自分のパンツを脱ぐと、小鳥の上に覆いかぶさった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る