第2話
適当なぼろ家で夜を明かして壁の中に向かう。入り口は検問が厳しいが一度街の中のスカベンジャーギルドに登録してしまえばどんな身なりでも通してくれる。
俺は黒いボロボロのローブを纏い検問に並ぶ。俺の番が来ると格好を見てからか高圧的に聞いてくる。人相も相まってなかなかの迫力だ。
「ボウズ。一人でなにしている?」
「ギルドの帰りだ。」
そう言いながら最下級の鉄のプレートを見せてるが、お構い無しに近ずいてきた男に昨日の稼ぎである銀貨2枚を見せて交渉する。
「通れ」
男はそれに納得したのか手を出してきたので銀貨を乗せてから賄賂を受け取り通してくれた。
さてまずは情報を集めないと行けないが、わかっていることもある。
『小夜左文字』
俺が大金をはたいて買った武器図鑑の写本に載っていた。刃長約24センチの短刀だ。
逸話もあり、仇討ちの復讐譚だった。
遠江国に暮らしていた浪人の死後、その妻が形見である左文字の短刀を掛川に売りに行く途中、小夜の中山で山賊に短刀を奪われて斬り殺された。
その後、遺された息子は母親の妹に育てられ、成人した後に掛川の研師に弟子入りする。
そしてある時、その息子の元に浪人が左文字の研ぎを頼みに来るが、息子は彼からその刀が母親を殺して奪ったものであるという話を聞き、左文字を見るふりをしてその浪人を殺し、仇を討ったという。
地名であろう文字はどこか分からないが能力もこれに関することだろうなと思っている。
オークション会場は警備が厳しくて入ることができないであろうが、どの道行く意味もたいしてない。
なのでまずはスカベンジャーギルドだ。
スカベンジャーギルドはざっくらばんに言うと何でも屋だ。もちろんだが爺さんの店より規模も大きく、それなりに権力も持っているし『鼠』なんて蔑まれているが一応国に認められた組織だ。
権力は持っているというか持たされたなんて噂もある。反乱分子予備軍を集めるのにちょうど良いし、俺のように最下級の組合員などは捨て駒のようなに扱えるからな。
裏路地に入り、<宝物庫>から目元と、右頬を覆う仮面を付けて、天井裏に侵入する。我流での気配の消し方だが、バレていない。そしてラッキーなことに、ちょうど下でギルド長と王国の使者のような人が話していた。
「ギルド長。業物の相場の倍払いますので売ってくださいませんか?」
「そう言われてもな。こちらも立場というものがある。あと二日早く来られたのならどうとでもできましたが。」
「それはわかっております。ですが、王国としてはこれ以上戦争で負ける訳には行きません。」
「そちらの事情を話されても、ここは中立都市ですし、スカベンジャーギルドは独立した組織です。そちらの話を受けるメリットがありません。」
「メリットがあればいいのですか?」
「ええ。」
「ではこちらをご覧下さい。」
そう言って使者が取り出したのが十程の模造刀。どれも小夜左文字みたいだが贋作なのか。
ギルド長は手袋をしてから武器を確かめて驚いた顔をしながら使者に話しかけた。
「これはスキルをこめた刀ですか。しかし、小夜左文字の贋作などよく集められましたね。」
「これらは集めたものではなく、10年ほど前に王国の鍛冶師、錬金術師、魔術師によって作られたたものです。」
「ふむ。それをどうするのです?」
「オークションにクイズを追加しましょう。これらの模造刀と本物を同時に出品させます。見事本物の落札に成功した方は、落札額の半分をギルドで負担する。このような筋書きでいかがでしょうか?勿論負担は我々が致します。」
「私の報酬は?」
「今回の負担額です。」
「なるほど」
ギルド長は考えるように目を閉じ、十秒ほど考えてから答えた。
「わかりました。何とかしましょう。」
「おお。ありがとうございます」
「所でどうやって本物と贋作を見分けるのですか?それでこちらの段取りも変わってくるのですが。」
「贋作には、決められた場所に蛍光塗料が塗られています。じっくりと見ればバレますが、一瞬だった場合大丈夫でしょう。」
「なるほどわかりました。」
それから世間話をした後に王国の使者は帰って行った。
そしてそれを追いかけるように出た影もひとつ。
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