強欲の鼠

最高級ウィンナー

第1話

荒れ果てた土地が大量の血と死体で埋まり虫がたかっており、死体の多さが戦の大きさを表している。


此処での小競り合いは帝国が勝ったそれは王国に住む人にとっては悲しい事であろうが死体の多さは俺にとっては喜ばしい事である。


なぜなら俺の仕事は死体漁りだから。



顔に布を巻き腐敗しかけている死体を漁っていく。


これも慣れた作業だが匂いだけはごめんだ。


帝国は殺した敵や占領した村などでのあらゆる事が許可されている為本当に何もない。


これだから帝国は嫌なんだ。


二時間ほど漁り、手に入れた飲みかけの水筒に入った酒に川魚の塩漬け、刃こぼれした剣2本に同じく刃こぼれした短剣一本。


剣を背嚢に入れ、魚を齧る。孤児である俺にはこれでもご馳走である。




一日かけて街に戻る。街といっても外壁の外のスラムだが俺にとっての街は此処だ。


物乞いと売春、スリなどをかわして一つの建物に向かう。


そこは、『便利屋』と呼ばれている石でできた建物で、奥に一人の老人が座っている。孤児である俺にもある程度しっかりした値段で売買してくれる為良く利用している。


入ると向こうも気づいたのかしわがれた声で話しかけてきた。


「お主か。また戦地に行ったのか。」


「ああ、それしか脳がないからな。だが今回は良くない。」


そう言いながら剣を木の台に置き査定してもらう。


「銀貨2枚だな」


「まあそんなものだろうな」


期待はしてなかったとはいえ実際聞くと辛いな。


「そういえば、『業物』の刀が見つかったと聞いた。」


「!確かなのか?」


「わしが間違った情報を言った事があったか?」


ああ、そうだとも。この爺さんから聞いたり買ったりした情報に間違いはない。


だが、安全だった事もないのだ。わざと情報を全て教えずに行かされた危険な仕事もあった。


だが、それに文句を言う事はできない。裏を取らずに食い付いた俺が悪い。


この神が滅びた終末世界では力こそが全てだ。


話が逸れた。このがめついジジイがなぜ俺に情報を流す?


色々頭に浮かぶがどれも確証がないというより情報不足だ。


「銘は何だ?」


「小夜左文字だ」


銘的に遥か古代に滅びたヤマトの品か。欲しいな。


「またオークションか?」


「見つけたのがスカベンジャーだからな。ギルドも金が欲しいのだろう。」


「いい情報だったよ。爺さん」


「そうか。それは良かった。」


最後に嫌味を言いながら建物を去り考える。どうやって業物の刀を手に入れようかと....







俺が何故業物とはいえ盗もうとしているのか。それはこの世界の説明からする必要がある。


およそ五千年前原因は何かわからないが全ての文明が滅びた。


昔には世界中に家であろう残骸や大きな鉄の乗り物などがあったらしいが全部風化し、魔力が強い森以外は荒野になった。


それからは、弱いものは淘汰されるようになり、武力、権力、財力などが全てとなる世紀末状態となっている。


そんな世の中を俺たちは終末世界などと呼んでいるのだが、唯一遥か太古から今まで形が残っているものがある。


それが武器だ。ただの武器ではなく、神、妖、人の強い意志などが込められたいわゆる業物と呼ばれるものである。


それはこの力こそが全てのこの世界ではとてつもない価値を誇る。


その業物にもさらに優劣があり、『業物』『名刀』『宝刀』『至宝刀』と人間が独断でランクをつけた。そのランク付けが間違った事はあまりないのだが、目に見えない遺物の固有能力によっては『至宝刀』のランクでありながら『業物』だったなんて事もある。


それはともかく、俺は遺物と呼ばれる武器を集めている。戦地漁りしているのはその為だ。自分の唯一の能力は俺の願望の発露だろう。


集めて何をしたいのかと聞かれると困るが、俺は遺物の魅力に飲まれたのだ。

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