第33話 飼いならされる

それから1年が過ぎた

ユウスケのことは忘れる努力をして

日常の生活をするのに集中していた 


でも…またその時はやってくる


珍しくショートメールだ

「元気ですか。会いたいです。」

ユウスケだ。

とてもとてもドキドキしているのが分かる

「元気です。会えないです。」


「嫌だ。会うよ。絶対に会う。」

あんなことしてもまだ、こうやって連絡をしてくる図々しさと勇気に驚く。

全て忘れてるんじゃないか?って思う。


でも、そうじゃない。

ただ、ふと私の存在を思い出しただけなんだと思う。

そんなに凄い好きとかじゃなくて、都合の良い女を思い出しただけ…。

きっと、そう。


何日もこのやり取りが続いて、結局、会うことになってしまう。


「久しぶりー。元気にしてた?」

元気じゃないわー!入院して中絶手術したんだよ!誰のせいだと思ってんのよ!いつも避妊しないアンタのせいだよ!

…と、心の中で毒づくけど。

「まあまあ。とりあえず、仕事復帰できた。」

「良かったじゃん。」

おい!他人事かい?!


なのに、キスされてセックスすると

また感情が元に戻ってしまう

まるで何かのスイッチを押されてるような感じ。

ユウスケに夢中になってしまうというスイッチ。

自分が情けなくて馬鹿馬鹿しくて嫌になる

こんな自分が大嫌いだ…。


ユウスケに呼ばれると夜中でも2時間かけて会いにいってしまう。

そして、口でご奉仕して1時間くらい会って帰ることになる。


なんだコレ?!

いつもそう思うのにまた行ってしまう


食事も数回しか一緒に行ったことがない

ホテル代はいつも私がだす

こんなんだから、会っても苦しいし寂しくなる。

会えば会うほど自分が死んでいく

でも、会わないと居られなくなる


時にモラハラをしてくる

無視をしてくる

これが本当に辛い

会ったあとは数週間、連絡しても反応がない


でも、優しくしてもらえた時の快感がたまらない

こうやって、がんじがらめに飼いならされていく

グルグル巻にして苦しめる

…DVへの入口なのかもしれない


ある時、本当に珍しく電話がかかってきた

嬉しくて今までのイライラが吹っ飛んだ

「もしもし?」

「どうしたの?」

「今度会った時にさ、モエに言いたい事があるんだよね。」

「ん?何?今、言えないこと?どうしたの?」

「うん、恥ずかしいから会った時に言いたい。」

なんかいつもと違う。

歯切れ悪いし少し甘えたトーンな気がする。

なんだろう…??

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