VRについてのあれこれ、フルダイブ型VRはいつ実現するか?
ここには僕が書いている小説『コールドスリープから目覚めたら異世界だった……?』の本編で出てきたVR技術に関するあれこれを紹介していきたいなと思います。↓(小説のURLは下記です)
https://kakuyomu.jp/works/16816452220058303346
実は小説内に参考資料として同名タイトルのエッセイが掲載されていて今のところ内容も同じです。
たぶん後で見直してエッセイ用に少し内容を書き換えると思いますが、ここで取り上げているBMI (ブレイン・マシーン・インターフェイス)技術を使うことで将来的に『魔法』のようなことが実現できるだろうと考えています。
BMI (ブレイン・マシーン・インターフェイス)を用いた『魔法』のような技術については先に他のことを議論してから書きたいと思いますので、後々書いていきたいと思います。
それでは以下から小説の参考資料の転載になります。
Here we go!
【VRに脳はだまされる?】
これはけっこう言われてることでVRについて調べてみると色々情報が出てくると思います。
本文でも12節でニケがそんなこと言ってましたよね。
実は僕、文系畑の人間なのでそんなに理系な感じじゃないんですが、僕がVRに興味を持ったきっかけでもあります。
ある時、たまたま飲み屋の隣にVR研究をしているという研究者のお兄さんが居て、「VRってどんななんですか?」と聞いたら色々教えてくれました。
その話が面白かったのでちょっとここでご紹介したいと思います。
【VR空間で女の子になっちゃう??】
これ、元は普通の、別のことを研究する為の実験だったみたいなんですが、VRの空間の中で男の人に女性のアバターをつけて過ごしてもらうということをやったらしいです。
それでその実験の参加者の中でちょっとおふざけする人がいて、その女性アバターをつけた男性のスカートをめくる悪戯をしたらしいんですけど、最初は
「おい~、ちょっとやめろよ~www」
みたいな反応をその男性もされてて、でもVR空間で過ごす時間が長くなるに連れて、
「ちょっと!本当に止めて!(怒り)」
みたいな反応に変わってきたらしいです。
実験の後、その女性アバターをつけてた男性に研究者さんが話を聞いたらしいんですけど、別にトランスジェンダーでもゲイでも女装が趣味の人でもなく、普通に
本人も
「なんであの時、本気で怒ってたのかな~」
と不思議に思ってたそうですよ。
その研究者さんの話だと、VRの世界で女性のアバターを付けて過ごしている内に脳みそがだまされて、
「あっ!自分は女の子だ!」
と脳が勘違いしたんだろうということで、こういう現象はVRではけっこう起こるらしいです。
【VRで子どもに戻ると勉強がはかどる?】
これはけっこう普通に調査されたらしいんですけど、VR空間内での学習効果について調べる際に、被験者に子どもの身体のアバターをつけてもらったらしいです。
勉強は資格試験の勉強とかをやってもらったらしいですけど、子どもの姿でやると大人の姿でやるよりも学習効果が高かったらしいです。
これも脳みそが、
「あっ!僕は子どもだ!」
と思って、子どもの頃のように勉強の内容を吸収できたのだろうということでした。
【プロテウス効果】
こういうVRなどでアバターを使う人が意識せずともそのアバターの外見にあった振る舞いをしてしまうことを「プロテウス効果」と呼びます。
要はVRの中では自分の好きなキャラクターに変身してなりきることができますよ!ということですね。
個人的にはトランスジェンダーで苦しんでいる方とかはVR空間の中で自分の望む性を生きられるので、もしかしたらトランスジェンダーの方にとって生きやすい社会になるのかも?とか思ったりします。
あとVR空間内でイルカになったり、ドラゴンになったり、他の生き物になりきることもできるようになります。
※この辺は次の参考②で「ホムンクルスの柔軟性」というテーマについて書くのでそこに詳しく書きます。
プロテウスは古代ギリシャの海神で予言を与える神なんですが、誰かに予言をするということを嫌う性格の持ち主で、彼から予言を聞くには「変身」して逃げようとする彼を無理やり押さえつけて聞き出す必要があるという逸話があります。
なのでたぶんプロテウスの変身能力から取られたネーミングなのかなぁと思いますが、でもそれ言ったらギリシャ神話の神様はだいたい誰でも変身できるので、ちょっと微妙なネーミングかもしれませんね。(怪物テュポーンにオリンポス山が攻められた時にみんな動物に変身して逃げてます)
【それって何か役に立つの??】
VRに脳みそがだまされて何か良いことはあるのか?という話なんですが、上に書いた「子どもの姿だと勉強がはかどる!」は普通に役に立つと思うんですけど、他に何か役に立ってるの?ということを少し書きたいと思います。
これはなんか書き始めるとすごく長くなりそうなので、ちょっと短めにしたいと思うんですけど、けっこう医療とかで使われてるみたいですよ。
たとえば重度の火傷を負った患者さんとかって四六時中とにかく痛いし、リハビリとかしたらもっと痛いし、アメリカのお医者さんとかはけっこう強めの医療用麻薬とか使うらしいんですけど、それって身体にも害があって何か別の方法ないかな~みたいに探してたらしいです。
気がまぎれると痛みを忘れるみたいなことがあって、前から治療中にTVゲームをさせるとかはあったらしいんですけど、「VRでやったらどうだろう?」と試してみたらめちゃくちゃ効果があったそうです。
VR空間内では火傷をしてない自分になれるので脳みそがだまされちゃうみたいですね。
※これ、VRについて勉強した際に読んだ本に書いてありました。どのくらい効果があったか数値も出てたと思うんですけど、ちょっと今、すぐは出てこないですね…… ご興味を持たれた方は一番下に参考図書を載せておきます。ここに書いた方が良ければ調べて載せます。m(_ _)m
あと、トラウマの治療とかにも使ってるらしくて、トラウマを起こしたシーンをVR空間で再現して、そこで何が起こってどう思ったのか?みたいなことをVRをやりながらカウンセリングすると過去とちゃんと向き合うことが出来て立ち直ることができるそうです。
アメリカでは9.11の同時多発テロでトラウマを負った人の心の治療に使って成果を上げたようですよ。
僕は昔、心理学を大学で勉強していたんですが、臨床心理学のジャンルでいくと催眠療法とかと相性が良さそうです。
もっと言うと、催眠療法で治療していることはだいたいVRで治療できて、しかもVRの方が効果があるということが起こりそうな感じです。
※痛みを忘れさせたり、トラウマを治療したり、幻肢痛(事故で腕が無くなったのに、無くなったはずの腕が痛む現象)の治療、恐怖症の治療をしたりというのはかつて催眠療法やそれを応用した手法での治療がされていたんですが、VRでやった方が成果が出るということが最近実証されつつあるみたいですね。
【フルダイブ型VRはいつ実現するか?】
これ、けっこう興味を持ってる方、多いと思います。
フルダイブ型VRのMMORPGを題材にした作品とかすごく最近増えてきていると思うし、その草分けになったソードアートオンラインはすごく有名ですよね。
僕も前から「こんなのって本当に実現するのかな?実現するとしたらいつ実現するんだろう?」って思ってました。
Googleにレイ・カーツワイルさんっていう人工知能(AI)を研究している有名人がいるんですが、彼が言うには「2030年には実現する!」だそうです。
それを初めて聞いた時は僕も「いやいやいや!いくらなんでもそんなに早くは実現せんでしょ?」と思ってたんですけど、調べてみたら割とガチみたいですね。
【フルダイブ型VRを実現するのに理論上必要な3つの機能】
さて、五感を直接仮想空間のアバターに接続するためには、大きく次の3つの機能が必要になると思われます。
①脳から出力される信号を読み取りアバターの操作をする(出力)
→BCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェイス)、BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)
②アバターが感じる五感を操作者にフィードバックする(入力)
→経頭蓋電気刺激装置
③必要以上の感覚のフィードバックを遮断する(調整)
この辺の話って確かソードアートオンラインでも出てきませんでしたっけ?
③の話は技術的には②で出す出力を調整するということなので、③の実現は②が出来たら後は調整するだけだと思います。
なので、①と②がどのくらい技術が進んできているのかによってフルダイブ型VRがいつ実現するかが決まってくる感じですね。
【脳から出力される信号を読み取ってアバターの操作をする方法~BCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェイス)~】
上で書いた①のところのやつですね。
BCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェイス)の方は脳とコンピュータをつないで脳から出ている電気信号をコンピュータに送ることで、コンピュータがその信号を解析してコンピュータ内のアバターを動かすというやつです。
その隣に書いてあるBMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)というのは脳と機械をつなぐ装置のことで、これは障がい者さんが身体の中で障害がある箇所を補完するような機械(機械義手や機械の目など)を脳から出る電気信号で操作するというやつですね。
視力を無くした人の視力を補完する機械として「バイオニック・アイ」というのがあります。
これは2002年に一度、商用化されて実際にある程度、視力を回復することが出来たみたいです。
でもこの「バイオニック・アイ」を開発したWilliam Dobelleさんという方がノウハウを公開する前に2004年で亡くなってしまった為、それ以降、視力を回復した人も見れなくなってしまったみたいですね。
でもその後も「バイオニック・アイ」を研究している人はいるみたいで近々実現しそうな感じです。
https://engineer.fabcross.jp/archeive/180907_bionic-eye.html
BMIは医学用だけじゃなくてアメリカの軍隊なんかでも研究されていて、アメリカの兵士が遠隔地のドローン兵を操作するみたいな研究もかなり進んでいるみたいです。
ただBMIの場合、現状、頭蓋骨を切開して脳に直接電極を差し込むみたいな「侵略式」あるいは脳に刺さなくても脳の上に設置する「低侵略式」のものが多い感じで、VRのHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)みたいなヘルメット被るだけみたいなので実現するにはもう少し時間がかかりそうですね。
BMIの話ばかりしてしまいましたが、フルダイブ型VRに活用されるBCIの方もけっこう進んできています。
2007年にNeuroSkyという会社から世界で初めてコンシューマ用ゲーム機のコントローラーとして販売されたMindSetというものがあります。
これもVRのHMDみたいなヘルメット型のやつなんですが、プレイヤーは普通のファミコンみたいなコントローラーでキャラクターを操作し、ゲーム内で指示されたオブジェクトのところまでいきます。
その後、「このオブジェクトを燃やしてください」という指示があるので、MindSetを装着した状態で「燃えろ~燃えろ~」と頭の中で念じると、ゲーム画面内の集中力バロメータが上がっていき、そのバロメータがある程度の水準まで到達すると実際にゲーム内のオブジェクトが燃えるということができるみたいです。
2007年の段階でこれだけ進んでいるので、おそらく今はもっと進歩しているんだろうなと思います。
そういうコントローラってMindSet以外にも出てるんだろうな~。
【アバターが感じる五感を操作者にフィードバックする(入力)~経頭蓋電気刺激装置~】
これは上の②で書いたやつですね。
経頭蓋電気刺激装置と書いてありますが、これは技術的に①のBCIやBMIで書いたことの逆バージョンをする感じですね。
※なのでおそらく装置としては統合されてBCIやBMIの中の一機能になると思います。
VRゲーム内で起こったアクション(ゲーム内でリンゴを食べる…etc,)に対し、それに関連する情報(リンゴを食べたときの味や香り…tc,)をコンピュータの方から脳みそに送ったり、機械が得た情報(機械義手がものを触った時の手触りの情報とか)を電気信号として脳に送ったりすることで実際に脳みそが感じるというような技術になります。
上のBMIのところで書いたバイオニック・アイの事例では実際に機械の目が見たものの情報を脳に送り、脳内でそれを再生することが出来ているので、これもある程度実現してきています。
他の事例だとアメリカの陸軍か海軍で兵士の集中力を上げるヘルメットというのが研究されていて、そのヘルメットが兵士の集中力を高める脳の領域を電磁的に刺激することで実際に対テロリスト用のトレーニングゲーム(テロリストが次々と爆弾を抱えて襲い掛かってくるのを狙撃するビデオゲーム型トレーニング)での成果が上がったという記録があるようです。
――――
【まとめ】
僕も調べてみるまではフルダイブ型VRはまだまだ先の未来と思っていましたけど、思った以上にテクノロジーがそれに近づいているみたいですね。
上でも少し書きましたけど、「①脳から出力される信号を読み取りアバターの操作をする(出力)」も「②アバターが感じる五感を操作者にフィードバックする(入力)」も「③必要以上の感覚のフィードバックを遮断する(調整)」もBCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェイス)という装置の開発によって進められていく感じになると思います。
現状の技術でも脳に直接電極を刺す侵略式BCIのやり方ならある程度、フルダイブに近いものはできると思いますが、それだと脳に負担がかかりすぎるし危険なので、わざわざVRゲームをする為に頭蓋骨を切開する人はあまり居ないと思われます。
なので一般に普及できる非侵略式BCI、つまりヘルメット型のHMDを被るだけで①も②も③も実現できるようになったらいよいよフルダイブ型VRが一般に普及するということになりそうですね。
次回もVRに関することで本編の中で出てきたこと、出てきそうなこと、個人的に興味があることとかについてまた書いてみようかと思います。
ご興味がある方はぜひ読んでいただいて、ご意見とかもいただけたら嬉しいです。(^-^)
【参考資料】
『VRは脳をどう変えるか?』著:ジェレミー・ベイレイソン(スタンフォード大学心理学教授) 訳:倉田 幸信
『ブレイン・コンピュータ・インターフェース概説』著:有住 なな
http://www.orsj.or.jp/archive2/or60-4/or60_4_227.pd
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