第3話

 


 廃墟の町、そう言われたこの町で自分は目一杯現実だけを眼にしながら育ってきた。昔からこの町は崩壊寸前だったのだ。 それでも町長がこの町は未だやっていける基金があるからと言って無理矢理止めていた。そして私はその町長の孫だった。しかし、その町長がいなくなった今、取り壊すことにしたらしい。そうしたらその方書きも消えるが、お爺ちゃん程の人望の厚さはもう無い。不可抗力だと知っていたが、生まれた町が例え高齢者用の喫茶店やバスや公共施設が多かったこの町並みが何処へと消えていくのは何処かしら寂しくなる。

 大学生くらいになった時に此処を観れば、そんな思いに浸るのだろうか。見てみれば、大人達は泣いていた。ちこちゃんの両親も、此処であった昔は虚しいと想えたこの町での出来事をゆっくりと噛み締めながらだろうか。中には、ふるさとを歌っていたお婆さんもいた。

 でも私は泣けない。いつぞやの楽しみもなかなか思い出せない。嬉しさも少しだけしかない。本当にこんなんで大人になったら、分かるのだろうか。ふるさとの有り難みを。



 分かるときが来た。本当に潰れたんだなって振り替えせば直ぐあった。バスなんて二時間でたった一本で文句を言っていた事。お婆ちゃんの手伝いをすれば、お菓子を貰えると思ったら、お手玉を貰ってこれはこれで面白かった事。古い町だから色んな子が都会に引っ越して私とちこちゃんだけの学校になって寂しかったけど楽しかったこと…何故だか昔では思い出せなかった事が大人になってポンポン出てくる。  ふるさとの有り難みは分からなくても、ふるさとへの思いは溢れんばかりにある。


__こういう思いなのか、ふるさとって。

 いや、どうなんだろう。結局、大人になっても分からないことだらけだ。













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