第2話

 


 磨いてきたもの。其れは自分でも誇れる程の剣裁きだ。3歳から木刀で練習をして、そうして漸く上手く成れたもの。

 只、敵わなかった。どんな敵にも色んな敵にも自分の誇れるものですら敵わなかった。幼い頃父から譲り受けたもので、今も使用している愛着の武器。その武器は今や慰めではなく怒りの矛先へと変わっていた。


 「2ndライフを歩もうよ。」


と一番の親友であった木ノ下は言っていたものの自分にとって其れは悔しかった。敵に自分の一番なりたかったものを手に入れてもなおその先へと行ける相手が羨ましかった。妬ましかった。どうせ自分のことなんか目じゃなかったのだろう。弱い相手だと寧ろ相手にも思っていなかったのだろう。某バトルファンタジー作品で言うところのスライム以下だと思っただろう。散々に自分の事を言わせっぷりだ。それでも逸れを止めることは出来無い。弱いから。

 あの時戦った敵は言っていた。「どんなに磨いても磨き足りない。しかし、例え磨き足りたとしても磨き続ければ何時か傷が付く。」其れはどういう意味か?己の才能と言いたいのだろうか。

 才能__其れだけはどうしても抗えなかった。兄ぐらいの才能は自分自身持っていないことは百も承知だった。父が兄ばかりを思っていたことも知っていた。しかし父は自分の事も心配して一番良い武器をくれたことも知っていた。でも本が、使用者が良くなければ結局同じ、自分が浮いてしまうと言うことだ。__木ノ下。分かっているよ。アンタはもういなくなった兄を尊敬していたんだろう?そして自分では代わりになれないことも分かっているんだろう。比べるなとは言っていない。

 只、教えて欲しい。何時か、何時かこの刀が闇に染まってしまう前に。







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