第4話
…そして。
気がつくと。
僕は音楽室にいた。
音楽室?
あれ。おかしいな。
僕はなんで、こんなところにいるんだ。
それに周りを見渡せば。同い年くらいの知らない子がいっぱいいた。
教室の中に、優の姿があった。
優。
僕と同じ小学校の女の子。
優を見ていると。
懐かしい。優しい気持ちになれた。
優はもじもじと、不安そうに辺りを見渡している。
…。…。
あっ。そうか。
ここは新しい中学なんだ。
うん。この間、小学校を卒業したことは覚えている。
そうだよ。
間違いない。
新しい生活に慣れるといいな。
机の上。
一冊のノートが置いてあった。
何のノートだろう?
僕はノートを開こうと手を伸ばした。
そこへ。
誰かの手が伸びた。
見てみると。
長い髪の女の子が立っていた。
それは零だった。
優と同じ。
小学校からずっと一緒だった女の子。
「零」と僕は言った。
「このノート。あなたのじゃないのよ」
「え。そうなの?」
「そうよ。きっと間違って置かれたんじゃないかなあ」
零は、さっとノートを取り上げた。
「そっか」と僕は言った。
特になんとも思わなかった。
「光、話があるの。ちょっと付き合って。屋上に行こう」
「屋上に?重要な話?」
「重要な話」
「でもさ。ここにいなくてもいいのかな?もうすぐ先生が来るんじゃないの?」
「大丈夫よ。すぐ済むから」
「そっか。じゃあ行こう」
零がにっこり笑った。
「ええ。行きましょ」
零が。
僕の手を握った。
えっ!?なになに。
胸がドキドキした。
これって…。
もしかしたら…、告白される…?とか。
わあ。どうしよう。
僕らは屋上に向かって歩きだした。
振り返った時。優の顔が目に入った。
優の顔が。なんだかとても寂しそうだった。
でも優とはただの友達なんだから…かまわないよね。
封鎖 空木トウマ @TOMA_U
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