年賀
治さんと迎える、何度目かの新年。十回近くは迎えてるかな。新しい年、一番最初に会話するのが、大好きな旦那さん。
「今年も宜しくお願いします」
「此方こそ」
今年は着物着たいかな……。だって、正月前に届いた荷物。宛名は無かったけれど、私と治さんにはわかった。
「あの着物、着るの?」
「着るよ!着る。だって折角だもの」
「まさか、姐さんが其処までするとはね」
十二月三〇日。私宛に荷物が届いた。ちょっと重いような、長方形の。差出人が無かったから少し怖くて、治さんと一緒に開けた。中身は、一枚の着物。
「誰だろうねえ。まるで君の年の頃を解っているようだ」
「……?」
同封された手紙の筆跡に覚えがあった。幼い頃、何度も見た文字。
「豪勢な人も居たものだねえ。二十歳そこそこの女性に、着物の贈り物。口説いてる様なものじゃあ──卯羅?」
振り袖は、小袖に直されていた。伝えて居ないのに。でもきっと、直感したのだろう。
「……姐さんか」
「母様が、私に、成人のときにって、でも私、居なくなったから、それで……」
その時の母を思うと涙が出た。私が成人するのを楽しみにしていてくれた。
『遅くなったが、成人、婚姻、おめでとう』
ただ、それだけだった。
「離れても母様は母様だもの」
「私との事も、認めてくれたってことかな」
日が昇ったら、探偵社へ新年のご挨拶。其の時に着ていこう。もしかしたら、途中で母様に会えるかも知れない。
「ついでに私とのことも認めて欲しいなぁ」
「そこはまた別でしょ」
今年もまた、治さんと一年。何が待ってるだろう。
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