第4話 武装探偵社 参


「……入れ。」


 中から応えがあったので、一言ことわりを入れて入室した。


「久しぶりだな、ヒロ。」

「お久しぶりです。福沢社長におかれましてもお変わりないようで何よりです。」


 彼から向けられる、少し険のある視線が怖い。

 元々の目つきの問題もあるだろうが、それ以上にこの人が纏う威厳ともいうべきものが他とは一線を画してる。

 矢ッ張り六年越しだとビビるな、これ。

 声が震えないようにするだけでこんなに気力を使うなンて、この人以外に無ェ気がする。

 

「早速ですが、此方が依頼対象の「情報」です。御確認をお願いします。」

「嗚呼。」


 社長はオレが差し出した大きめの封筒を受け取り、迷いなく封を開けていく。

 ……いや、迷い無さすぎて怖えェわ。

 ちッたァ疑いとか持てよ危ねェだろ。

 そりゃァ持ッて来たのはちゃんと依頼されたとおりのモンだけどな?

 偽物だッたらどうすンだよ。

 そんなオレの心配を他所に、淡々と情報の載った紙を捲る音が響く。


「…………。」

「…………。」


 いや怖えェ。

 沈黙が耳に痛ェし今この人が考えてることが分からねェのも一因だろうが、兎に角怖えェ。

 と、不意に社長が顔を上げた。


「……確認した。報酬は。」

「最初にお伝えしたまま、支払い方法もソレでお願いします。」

「分かった。」


 淡々と一通りの事務的な会話を交わし、オレは内心ホッとした。

 引越しの挨拶も仕事も済んだし、これで帰れるな。


「それでは、オレはこれで……。」

「待て。」


 と思ったら引き止められた。

 いつの間にか隣には乱歩さんが居て、ガッシリと腕を強く掴んでいる。

 嫌な予感がする。


「はい?」

「混乱してるところ悪いけど、君はともかく僕らの話はまだ終わってないってこと。大人しくしてね。」


 だよなァ、知ッてたよ!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る