第11話
俺達はそれぞれのポップコーンを買って、俺達は座席に座る。彼女はキャラのグッズやパンフレットも買ったようで嬉しそうにパンフレットを見ていた。
「ほら見てよ、ヒロインの子すごい可愛いし、原作のイメージ通りじゃないかしら? 私もこんな風になれたらな……」
「確かに可愛いけど、姫奈も可愛いじゃん。髪形を真似てみたら絶対似合うと思うよ」
「あなたってこういう時あっさり褒めるわよね……でもそれじゃ足りないわね。私が美人なのは知っているもの。もっと褒め方を工夫しなさいな」
俺の言葉に澄ました表情で答える姫奈だったがちょっと口元がにやけているのはきのせいではないだろう。喜んでもらって何よりだが、言った俺の方もちょっと恥ずかしくなってきたな。そんな空気の中あたりがくらくなり、映画の上映が開始される。
恋愛要素よりもコメディが強めなためか、男の俺でも楽しめる内容で、原作を知らない俺でもクスリと笑える部分がけっこうあり楽しめた。
山場と言える主人公のお嬢様が、婚約者と無理やり付き合わされそうになるのを使用人が止めるシーンに来た時の事だった。姫奈の手が俺を握りしめる。思わず彼女を見つめるが、映画館は暗くいまいち表情が見えない。
一体どうしたというのだろう。俺の疑問をよそに話は進んでいく。そして、クライマックスのシーンでヒロインと使用人が抱き着いてキスをする。ってディープキスだぁぁぁ、え、これって全年齢だよね? いいのかよ。
「ハ、ハレンチね……」
彼女も予想外だったのか、目を見開いて驚いている。だけど興味はあるのか、その目は釘付けだ。俺は思わず彼女の可愛らしい唇を見て、自分と姫奈がキスをするところを想像してしまう。
「んんんーーー!!」
妄想によって俺の愛馬が興奮してしまい激痛が走る。ふざけんなよ。これ、マジで何とかならないのか? 俺は股間の痛みに耐えながら映画を最後までみるのだった。
「それで……何でそんなところを抑えているのよ」
姫奈が股間を抑えながらエンドロールを見ている俺をゴミを見るような目で見つめる。いや、流石にエッチなシーンで興奮した上に貞操帯を付けていた時の後遺症とは言えずに俺はごまかす。
「ああ、姫奈は知らないかもしれないけど、男子は時々無性に痛くなるんだよ。別に興奮しているとかじゃなくて、生理的なものなんだ。」
「そうなの……だから一夜は時々屋敷でも抑えていたのね!! こいつなんでこんなとこで興奮しているのよ、きもいなとか思っていてごめんなさい」
ばれてたんかーい、おかしいな、ちゃんと姫奈にはばれないように頭をぶつけたりして、興奮をごまかしていたはずなんだが……俺の軽い嘘のせいで悲しすぎる事実が発覚してしまった。
「ねえ、一夜……大丈夫? 私にできることある? 撫でたりした方がいいかしら?」
「んんんんんーー!!」
俺の様子を心配してくれた姫奈は俺をあんしんさせるかのように手を握りながら見つめてくる。やばいって、身長差のせいで谷間がみえてやばいし、香水か何かの姫奈の良い匂いが俺の愛馬を刺激してずっきゅんばっきゅうんしそうにになる上に騙しているという罪悪感がやばい。
「いや、大丈夫だよ。それよりもそろそろ行こうか、次のお客さんが来てしまう」
「そうね、だったら行きたいところがあるんだけどいいかしら」
「もちろんだよ」
そう言って彼女に連れていかれたのは、お洒落なカフェだった。確かここは王牙おじさんの会社の系列店だった気がする。店内はお客さんでいっぱいだったが、すでに予約しているらしく、すんなりと通される。しかし、ここはカップルか女の子しかいないんだが……よく見るとみた顔もいる。うちの高校の生徒だろう。
まあ、俺と彼女がいるのはみんな知っているし、よほど変な事をしないかぎりは噂にもならないだろう。姫奈は目立つし、俺と彼女がお嬢様と使用人であるというのはみんな知ってるからね。
「じゃあ、このカップル専用パフェをお願いします」
「え?」
彼女が注文したのは俺の大好物のイチゴがたくさん載っている上にクリームがたっぷりと乗っており、一つのパフェを二人で食べるタイプのものだ。しかも、ハートの形をしたチョコなどがトッピングされたりしている。これはさすがにやりすぎじゃ……と思ってみると彼女は不満そうに唇を尖らした。
「姫奈さん? あのさすがにやりすぎじゃ……」
「なによ、私とじゃいやなの?」
少し不安そうに見つめられて俺は何も言えなくなる。好きな子にさ、そんな風に言われたらだめなんていえるはずないじゃんね。
でも、やっぱりうちにきてからの姫奈はおかしいと思う。いつもだったらこんな風にデートには誘ってこないし、そもそも家出をするような子ではないのだ。
「いや、嬉しいけど……それでさ、今日デートをしようって言ったのは姫奈が家出をしたのと関係があるのかな?」
「そうね……そろそろあんたにも説明するべきよね……」
彼女は観念したように眉をひそめていった。しばらくの沈黙のあとようやく彼女は口を開く。
「あのね……あんたが出て行った日にね、お父様がお客さんをつれてきたのよ、私の婚約者だって……」
「え? 婚約者だって……」
彼女の言葉を俺は間の抜けた声で繰り返すことしかできなかった。そりゃあさ、彼女の言動や映画の内容で大体予想はついていたけどさ……いざ言葉にされると俺はなんといっていいかわからない。頭が真っ白になっていく。
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申し訳ありません、一話に一部文章を追記を致しました。読み直していたら投稿できてなかった部分がありました……お手数おかけいたしますが一話をもう一度読んでいただけると嬉しいです。
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