第19話  †神からの通達†

「ひどい一日だった…」




 重いため息をつきながら、俺はカバンに荷物を詰めて込んでいた。


 時刻は放課後。体育の授業もとっくに終わり、帰りの時間を迎えている。


 クラスメイト達もそれぞれ思い思いの行動を取っており、部活に行く生徒は友人と話しながら教室を出て行くし、遊びに行く予定らしい女子グループは輪を作り、談笑に花を咲かせているようだ。




 それがなんとも羨ましい。俺はどっちかというとアンニュイな気分を味わっているというのに、級友達のああも楽しそうな姿を見ると、ほんの少し複雑な気分になってしまう。




「俺もちょっと前まではあんな感じだったんだけどなぁ」




 誰が悪いというわけでもなく、俺にも反省点はあるのだが、それはそれとして思うところがあるのもまた確かだ。


 ちなみにあの中に花梨の姿はない。さっさと帰ってしまったのか、あるいはなにか用事ができたのか。


 それはわからない。いつもならすぐに俺の席に飛んできて、放課後なにをするのか聞いてくるのが日課だったから、これまではわざわざ俺のほうから聞くまでもなかったからだ。




 ついでに言うと柊坂はひとり会話に混じることなく席に座りながら、下を向いてひたすらカバンに教科書を突っ込んでいたが、これはいつものことだ。


 花梨がいない時は、マジで誰とも話せないやつなので、それは残当な行動なのである。




 話を戻すが、結局あの後も花梨は頬を膨らませながら、俺のことをやっぱりチラチラ見てきていた。


 まぁよそ見をしてるもんだから頭にバスケットボールが直撃したり、柊坂に全力のパスを繰り出して吹っ飛ばしたりと色々ハプニングあったのだが、そこは割愛させてもらう。




 重要なのは未だあの幼馴染の機嫌が直っていないことと、なにを考えているのかわからないことだ。


 そこに引っ掛かりを覚えてしまい、胸の奥に妙なモヤモヤが広がりつつあった。




「ほんと花梨のやつなにを…」




 ある意味では花梨の術中にはまっていると言ってもいいのかもしれない。


 少なくともアイツのことが頭から離れないのは確かだ。


 まぁ問題は別にそれが恋煩いでもなんでもなく、思春期を迎えてグレてしまった子供にどう接していいのかわからない、親のような心境に近いんじゃないかということなんだが…




(これで付き合うもなにもやっぱないよなぁ)




 改めて心境の変化がない自分に安堵するやらやるせなくなるやらで、再度ため息をつこうとした瞬間、ポケットに入れていたスマホが振動する。


 なんだろうかと取り出してみると、どうやらメールが届いているらしい。


 いつもはメッセージアプリの着信がメインのため、なんとなく珍しさを覚えるも、とりあえず確認をしてみることにしたのだが…




「…………うぇ?」




 開いた途端、表示された件名を見て、俺は思わず変な声をあげてしまった。






 件名:†神からの通達†






 胡散臭せぇ。




 超胡散臭せぇ。




 突如届いたメールは第一印象からして、胡散臭さ全開だった。


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