第20話  かみからチャットルームに招待されました。

 神様からのメールとか、どこぞの小説にでもありそうなタイトルだが、生憎と俺が受け取ったものはそんな高尚なものでは断じてなかった。


 なんせ†がついているのだ。この時点でツッコミたくなるんだが、そもそもなんで神様がメールなんて利用しているのかに関しては、そりゃもう盛大に問い質したい気持ちで一杯である。




 神様なんだろ!?なら神通力なりテレパシーなり使えばいいだろ!?


 なんで人間の文明の利器を利用してんだよ!?


 恥ずかしくないのか?神として!!!プライドないのか!?


 それは負けだろ!?神として!!負けだろ!!!!




 ここが教室でなく自分の部屋であったなら、俺は感情の赴くままにこの憤りをぶちまけていたことだろう。


 そういう意味ではここでこのメールを見て良かった。


 いや、そもそも届かないのが一番なんだが、それ言ってはおしまいだろう。


 こういうことを深く考えてはいけないのだ。これもまた、経験則による賜物だった。




「落ち着け、俺…」




 俺はこれでも割と我慢強い男である。


 その理由は察して欲しい。ならなくてはいけない理由が、すぐ近くに存在していたというだけだ。




 1.2.3




 1.2.3




 1.2.3




 ……ヨシ。もう大丈夫。俺は冷静だ。


 気持ちが落ち着いたことを確認し、改めてメールへと目を落とした。














 件名:†神からの通達†


 from:神代花梨




「なんで本名でメールしてきてんだよ!!!!」




 人目もはばからず、俺は叫んでいた。


 いや無理だろ!耐えれるかこんなもん!!!


 神からの通達って書いたんだろ!なら合わせろや!!最後まで神って名乗れよ!!!


 アドレスもそのまんまじゃねぇか!そこはフリーアドレス使うとか、もうちょっと工夫しろよ!というかしてくれ!


 少しは騙す努力してくれないと、こっちだって自分を誤魔化せないんだよ!!!


 送るときに気付けよ!そんなんじゃ社会でやっていけんぞ!お前の将来が心配すぎるわ!!




「ど、どうしたの三雲くん。いきなり叫んで…」




「やっぱりストレス溜まってるんじゃないかな…」




「そっか。だから今朝も花梨に特殊プレイをさせて発散を…」




「え、なにそれ。三雲くんってもしかして変態…?」




「せっかくかなりのイケメンなのに、コブ付きのうえに特殊性癖持ちとか残念…」




 俺の叫びに周りがざわつき始めるが、もはやそんなの知ったこっちゃなかった。


 アイツのことで悩んでたことが心底バカバカしくなり、こうなったら最後まで付き合ってやろうじゃないかという気持ちが急にムクムクと湧いてきたのだ。


 一種の開き直りか現実逃避のどちらかだったのだろうが、別にそれでも構わない。


 勢いそのままに、中身を確認しようとしたところで、スマホの画面に変化が起こる。


 それは新たに届いた、メッセージアプリからの通知だった。






 かみからチャットルームに招待されました。






「…………」




 俺は無言でタップした。


 そして開かれる神(自称)とのチャットルーム。


 そこにあったのは、一件のメッセージだった。






 かみ:メール届いた?








「…………最初からこっちで送れよ!!!!!!」




 神(自称)の段取りはなんかもう、全てがグダグダだった。

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