後編
クスクスと笑われる。
初めての告白だったのにレオニーは嘲笑う。
「それ、あの子にも言ったの?」
「言ってない!」
「でも、あの子が好きなのでしょう?授業のことも忘れるくらいあの子のために特訓を頑張っちゃうくらいに」
そう言ってレオニーは俺を冷たい目で見下ろした。
「違う」
「さっきからそればっかだね」
「俺は、レオニーだけが好きだ。授業を忘れるほど頑張ったのはレオニーに勝ちたかったから!」
「私に?」
驚いた顔をされるが本当のことだ。
俺が嘘が苦手なレオニーなら分かってくれる。
「レオニーのために努力して、レオニーに勝って、男として認められたかった。俺もお前を守れるのだと証明したかった」
俺は情けない男だな。
こんなみっともない姿を見せて、騎士になりたいなど。
「……馬鹿だね」
「分かってる。だから、傷付けるようなことをしてごめん…」
婚約解消はやめて欲しい。
「あ~、ゴットいたぁ!」
水を差したのはアメリーだった。
俺に向かって走ってきて、急に顔を顰めた。
「ゴット汗臭いよ、早くシャワー浴びてきて」
本当にこんな女のどこが良かったんだ。
チラリとレオニーを見るとなんとも言えない表情をしていた。
「なんの用だ…」
俺はレオニーを庇うように立って、アメリーに尋ねた。
「え、遊びに来たんだよ?最近構ってもらえなくて寂しかったでしょ?」
こいつはなにを言ってるんだ。
「悪いが俺は婚約者と大切な話をしてる。帰れ」
「はぁ?なんで悪役令嬢と大切な話をしてるのよ!」
「悪役…?」
どこからどう見ても悪役はこいつだろ。
頭おかしいんじゃないのか?
「へぇ、悪役ね」
「レオニーは悪役じゃない。俺の大切な姫だ」
恥ずかしいが嘘じゃない。
守りたい相手で、結婚したい相手だからな。
「なに言ってるの?姫は私でしょ、ヒロインだよ?」
「お前こそ訳の分からないことを言うなよ」
「ゴットはそこの悪役令嬢を斬り殺して、私と結ばれるのっ!」
「なっ…」
俺がレオニーを斬り殺す?
ふざけたことを抜かしやがって!
「ふざけるなっ!俺はレオニーを守ることはしても斬り殺したりしない!俺の愛する人をなんだと思っているんだ!」
「愛する…?ねぇ、ゴット大丈夫?」
「大丈夫じゃないのお前だ!さっさと帰れ!」
じゃないとお前を斬り殺してしまいそうだ。
俺はレオニーの前で弱い女を斬り殺す真似はしたくない。
「消えろ」
威圧をかけて言えば、逃げていくアメリー。
「……その、さっきのは本心だ」
「でしょうね。ゴットは嘘が苦手だもの」
振り返ればくすりと笑うレオニーがいた。
「あれが好きだったの?」
「好きじゃない」
「そう。じゃあ、私が好き?」
「好きだ…」
情けなく呟いた。
ぎゅっと抱きつかれた。
「お、俺、汗臭い…」
「私とあの子を一緒にする気?それに今更でしょう」
馬鹿と笑われる。
初めてレオニーを抱き締めた。
柔らかい。小さい。強く抱き締めたら折れてしまいそうだ。
「婚約解消なんてしてないけどね」
「は…?」
「私、婚約を解消したなんて言ってないよ?」
離れてから、くすくす笑われた。
つまり俺は騙されたのか…?
「騙されたとか思わないでよ。ゴットが勝手に勘違いしたのだから」
ふふん、と勝ち誇ったように笑われる。
くそ、剣で勝てたとしてもレオニーには敵いそうにないな。
「あぁ、でも…」
「なんだ?」
ニヤリと意味ありげに笑われる。
「結婚するのはゴットが私に剣で勝ってからだからね」
本当に敵いそうにねーな…。
~ fin ~
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