中編
俺がレオニーへの謝罪を始めようとして既に二週間は過ぎた。まだ謝れていない。
そもそもレオニーに会わせてもらえない。
学園では会うことが出来るが目が合えば逃げられてしまう。追いかけても広い学園では簡単に撒かれてしまうのだ。
「レオニー」
どこにいるんだ。
きょろきょろとあたりを見渡すと一人の女子生徒が男子生徒に擦り寄っている。
体を密着させて、何かを楽しそうに話していた。
その女子生徒はアメリーだった。
貴族の女の子だったらありえない行為。
レオニーなら絶対にやらない行為。
「俺はあんなのを守りたいと思っていたのか…」
自分の努力に腹が立った。
あんな女のために努力をした事実を取り消したい。
そんな薄汚い努力をレオニーには見て欲しくない。
「レオニーに謝る前に剣の稽古でもするか」
学園内にある鍛錬場に訪れる。
誰もいない。
レオニーが居てくれたら、という淡い期待もあった。だが、ここには誰もいない。
「一人で真面目に努力しろってことか…」
良いだろう。
待っていてくれ、レオニー。
俺はお前だけを考えて強くなる。
それからはどれくらいの間、剣を振っていたのか分からなかった。
「無茶し過ぎると体壊しちゃうよ」
日が傾いた頃、後ろから声が聞こえた。
振り向くと呆れた顔のレオニーの姿。
「レオニー?レオニーなのかっ…?」
「ひどいなぁ。幼馴染の顔、忘れたの?」
全くと笑うレオニー。
その瞬間、分かった。
好きだ。
俺はレオニーが好きなんだ。
「幼馴染じゃないだろ…」
だからこそ先程の言葉は否定したかった。
「ふぅん。じゃあ、何かな?」
「婚約者だ!」
強く言えば顔を逸らされた。
まさか…。
「婚約を解消した、のか…?」
「だとしたら?」
嘘だろ、どうして…。いや、俺が悪いのか。
凄まじい絶望を感じた。
「なんで…」
「ゴット、あの女の子が好きなんじゃないの?」
その言葉にハッとした。
違う!レオニーに言わなくては!
「違う!」
「違うの?」
「俺はあの子のことは何とも思ってない…」
「でも、あの子。私に言いに来たよ?」
なにを、あいつはなにをレオニーに言ったのだ。
「『私の方が愛されてる。彼は私のために剣の稽古を頑張ってるんだよ』だったかな」
開いた口が塞がらなかった。確かにあの頃は彼女のために努力していた。だけど今は稽古は違う。
「ねぇ、ゴット。私の嫌いでしょう?」
「違う…」
「だって、ずっと避けてたじゃない」
「それは…」
違う。嫌いじゃない。
避けていたのは悪かった。でも、それは女の子であるレオニーに負けたのが悔しかったから。
「俺はレオニーが好きなんだ!」
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