第五話 〜新しい友〜

夏生なつきの謝罪を受けれた次の日

太陽そらは朝にしているいつもの日課を終わらせてゆっくりと過ごしていた

そんな太陽そらがふと時計を見ると、時計の針はお昼頃になっている

あっという間の出来事で太陽そら自身驚いている様だ


しかし無理もないだろう

太陽そらだって人間なのである

仲のいいふう達以外に〝友達と自分の家で遊ぶ〟など人生では今までになかった事なのだ

少しドキドキして時間を忘れることもあるだろう

そんな太陽そら


太陽そら〜お昼ご飯できたよ〜」


と桜咲さんの呼ぶ声が聞こえて、慌てて居間に向かった




桜咲さんと二人で昼食を食べ終えた後、しばらくして


〝ピンポーン〟


玄関のインターホンが聞こえる


「はーい」


といつもの様に太陽そらが挨拶しながら出ると、そこには夏生なつきが手に紙袋を持って立っていた


「こ、こんにちは…太陽そら


少し緊張しているのか小さな声でそう答えた夏生なつきに対して


「こんにちは、涼乃すずの!待ってたよ

とりあえず、玄関だとアレだし上がってよ」


そう太陽そらは歓迎する様に居間へ誘導した

その居間では昼食の後片付けを終えた桜咲さんが椅子に座っていた


「こんにちは夏生なつきちゃん」


居間に入ってきた太陽そら夏生なつきに桜咲さんは軽く挨拶をする

それに対して夏生なつきが思い出した様に


「あ!そうだ、コレ

つまらないものですが…」


と手に持っていた紙袋から手土産てみあげを差し出す

それを受け取りながら桜咲さんは


「ありがとう、受け取っておくよ」


とお礼を返した

そんな横から太陽そら


「じゃあ涼乃すずの!僕の部屋においでよ

…て事で桜咲さん、僕達二階に上がりますね!」


と言い残すと、夏生なつきを急かす様に自分の部屋へと移動した




そんな太陽そらに誘われるまま、部屋に着くとテーブルにはトランプなど、色々な玩具おもちゃが置かれている

それを見ていた夏生なつき太陽そら


「いや、友達が家に遊びに来るのなんてふう達以外無かったから…

とりあえず色々用意してたらこんな感じに、ハハハ」


と、取り繕う様に答えた

それを聞いた夏生なつき


「実は、僕も友達の家で遊ぶの初めてなんだ…

なんか色々あって面白そうだね!

どうやって遊ぶのか教えてよ!」


そう爽やかな笑顔で楽しそうに答える

それを聞いて太陽そら


「うん!色々あるから順番に遊ぼう」


と笑顔で返事を返した

それからの二人はトランプゲームやスマホゲーム、昔ながらの人生ゲームなど…いろんな遊びをして楽しんでいた

特に太陽そらの父が小説のネタに昔の玩具おもちゃを集めていたらしく、珍しい遊びに二人ともかなり盛り上がっていた




一通り用意してあったゲームも遊び終える頃には、二人はすっかり仲のいい友達になっていた

そんな遊びがひと段落した所で夏生なつきが〝あ!〟と思い出したかの様に紙袋から何かを出すと


「そういえばコレ、クッキー

僕、焼いて来てたんだ!

良かったら食べて見て!」


そう言いながら夏生なつきは〝手作りクッキー〟をテーブルに置いた

カラフルな色のクッキーはとても美味しそうな香りを漂わしている

太陽そらはお礼を言うとそのクッキーを一つ口に入れた


「おいしい、コレすごく美味しいよ!

ありがとう涼乃すずの!」


食べたあまりの美味しさに、太陽そらは素直にそう感想を述べる

それに少し嬉しそうな表情を浮かべた夏生なつきだったが、急にムッとした表情を浮かべて


「ねぇ太陽そら?」


そう夏生なつきは突っかかる様に名前を呼ぶ

それに対して太陽そらは改まって


「何?涼乃すずの


と聞き返す様に答える

それに対して人差し指で太陽そらの事を指しながら


「そう!それだよ太陽そら

僕は太陽そらの事を〝太陽そら〟って呼んでるのに!

太陽そらはずっと〝涼乃すずの〟呼びなんだもん!

いつになったら名前を呼んでくれるの!」


そう問い詰める様に答える

それにオロオロした様子で太陽そら


「あ、いや、だってさ、涼乃すずの涼乃すずのだろ…」


と苦し紛れの建前を並べる

それに対して少し沈黙の後に夏生なつき


「…夏生なつき夏生なつきって呼んでくれないと怒るよ!

もう僕たち友達じゃんか!

そんな涼乃すずのなんて他人行儀みたいな呼び方じゃ嫌だよ!」


と感情論で返してきた

流石に太陽そらもそこまで言われたら、意地を張るのは無理である


「…分かったよ、な…つき」


そう少し照れながらも名前を呼ぶと夏生なつきは笑顔を浮かべた

それから夏生なつきは意地悪そうな表情で


「ねぇ、太陽そら

もう一回呼んで?」


と笑顔で告げる

それにより一層恥ずかしくなりながらも


「な、夏生なつき!」


とはっきり太陽そらは名前を呼ぶのだった




名前呼びを夏生なつきに強制させられたが、その後も二人は仲良く遊んでいた

いつの間にか疲れたらしく寝ていた太陽そら


「ふふ〜ん、ふん、ふふ〜ん」


そんなご機嫌な夏生なつきの鼻歌で目を覚ます


「あ、おはよう太陽そら


起きて寝ぼけている太陽そら夏生なつきが挨拶をする

それに対して太陽そらは寝ぼけながらも


「おあよお〜夏生なつき


呂律ろれつが回ってないのか〝おはよう〟を言えてないが挨拶を交わす

そんな太陽そらは目を擦りながら欠伸あくびを一つして


「ねぇ、夏生なつき

さっきの歌って何?

僕初めて聞いたんだけど」


と眠たそうにしながら問いかける

それに少し顔を赤くしながら


「えっと、笑わないでね…

アレ、私が作った自作の曲なの…」


と答えた

それに対して太陽そらは穏やかな表情で


「そうなんだ!とっても懐かしいような…

すごくいい曲だね」


と素直な感想を述べる

それを聞いて嬉しかったのか、夏生なつきは再び頬を赤らめながら俯いてた




それからはゆっくり過ごしていたが、辺りが暗くなってきた事もあり解散する運びとなった


「今日はありがとう、太陽そら

楽しかった」


そう笑いかける夏生なつきに対して


「僕の方こそ楽しかったよ夏生なつき

また一緒に遊ぼうな」


そう言い返すと太陽そらは手を振って見送りを終えるのだった

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