第ニ話 〜初日〜

暑い夏休みの初日、太陽そらは早速宿題に取り掛かっていた

なるべく早めに終わらせて後を楽しむ為だろう

しかし、してもしても終わりの見えない宿題の山に、そろそろ疲れが見え始めた頃、辺りはすっかり夕方になっていた




ふと太陽そらは小腹が空いたのか台所へと行くが、いつもはそこでゆっくりしている桜咲さんが見当たらない

そんな光景に『・・・そういえば!』と太陽そらは朝の出来事を思い出していた

そう、いつものように太陽そらが掃除をしていた時だった

珍しく電話の音がして、桜咲さんが慌てて身支度を済ませると、そのまま朝食も食べる事なく


「今日、少し面倒な仕事が急に入ったから遅くなるかも知れないんだ、ごめんだけど

朝食は勝手に食べといてもらえるか」


とだけ言い残して出ていたのだ

『・・・まだ帰って来てないのか』と太陽そらは心で呟きながら冷蔵庫を開けるが、これと言って食べたいモノは見つからないようだ

仕方なく身支度を済ませた太陽そらは、近くのコンビニへと出かけようと家を出た

・・・その目の前には昨日の〝あいつ〟が立っていた

太陽そらはそれを見て


「何で、ここにいるの、、、」


と小さく弱々しく思える声で答えた

それに対して夏生なつき


太陽そら、謝りに来たんだ…

これまでの事、本当に、本当にすまなかった」


そう言って頭を下げる

その咄嗟の流れで少し驚きながらも、ムッとした表情を浮かべて、太陽そらはまた無言で横を通り過ぎるのだった




コンビニに着いた太陽そらは、少しだけさっきの事を思い出していた

『流石にひどい事したかな…』そう思いはするも『いやいや、僕はー』と〝いじり〟として受けた仕打ちが頭をよぎる

そのあまりにひどい光景に吐き気を催しかけて、太陽そらはすぐに考えるのをやめると、そのままコンビニで少しの軽食を買って家に帰るのだった…




家に着くとその光景に再び驚かされる

目の前の玄関前に夏生なつきがいたからだ

その後ろから


太陽そらも、出かけていたのか?」


と桜咲さんの優しい声が聞こえて来る

そのあとすぐに


「ん?あの子まだいたのか!朝の五時からまさか、ずっと居たんじゃないだろうな

今もう十七時過ぎだぞ流石にこのままってわけにも…」


という桜咲さんの話を聞いて太陽そらは〝そんな朝早くから来てたの?!〟と驚きと同時に、そこまでして謝りに来ている夏生なつきに対して取った態度に、心が引き締められる思いで溢れていた

そんな太陽そらを遠目で見つけた夏生なつきは、足早に駆け寄り目の前に来ると


太陽そらすまなかった」


そう言いながら深々と頭を下げた

しかしその姿を見ても太陽そらは、まだ許せる気にはならなかったらしい

だから太陽そらはその場から一刻も早く逃げる様に、ただ静かに家の中へと向かうのだった…

その姿を見ながら夏生なつきは走って家に向かう太陽そらに深く頭を下げると、桜咲さんに


「朝早くから来てすみませんでした」


とだけ残して帰ろうとする

それを見ていた桜咲さんは


「ちょっと待て、送ってく、もう遅いだろ

こんな時間に子供だけで帰させるわけにはいかないからな」


と車に乗る様に夏生なつきに言う

それに対して夏生なつき


「それじゃ、すみません、、、お願いします」


と言って車に乗るのだった

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