第二話 〜言質〜
…気がつくと
ついさっき、確かに崖から落ちたはずなのに、
崖を落ちきった様子はない
ただそんな横では、さっきと同じ呼吸音がしていた
「ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ」
それを聞きながら
また崖から一歩を踏み出した
「・・・」
やはりまた
そんな状況でも、少し頭を冷やして冷静になる
「お前バカなのか、いやバカだ
助けてすぐに崖から飛び降りる奴がいるか
声かけてるのに、相手の話を聞く事もしないし
呆れて何も言えないわ」
と青年が声をかけて来た
〝呆れて何も言えない〟と言う割にはよく喋る
つまり
「・・・はぁ」
無言の後、
「分かりました
もう死にませんので帰らせて下さい」
そう青年に
すると青年は
「そうか、そうか、分かればいいんだよ」
と明るく笑顔で答える
…しかし
意表をついて崖に飛び込んだはずなのに・・・
そんな不思議な現象に
これはどんな手を使っても〝死ねない〟と諦めながら〝仕方ないので少し話を聞いてから、この場を去ってもらう事〟にした
とりあえず
「わかりました
たしかに声を掛けられて、無視するのは良くないですよね
話を聞きますから話してください」
と催促する様に青年に話すよう促した
それを聞いた青年はさっきまでの行動のせいなのか、いきなり大人びた態度になった
しかし青年はすぐに、その態度をやめると起き上がりながら
「なるほど、なるほど
〝話してください〟か、、、
言質はとったからね」
と
そんな
「さてと何悩んでるかは知らないけど、こんな所まで来て、どうして自殺なんて考えたの
死ぬなんて馬鹿だと思うよ」
といきなり〝お説教じみた〟言葉を言い放つ
その青年の表情はさっきまでと違い、とても真剣で清々しく見えた
しかし、青年とは今ここで初めて会ったばかり
つまりは他人なのである
そんな見知らぬ人に、いきなりそこまで言われる筋合いはあるのだろうか
そう思うとイラついて、
・・・
さっきとは違い、今度は地面に寝転がっていなかったからだ
それだけではない
そこにはさっき見た、目の前で話終えた〝真剣な清々しい顔〟を向けた青年の姿があった
その光景に驚いた様子の
「そうそう、さっきも言ったけど〝言質〟はとったからさ、君は死ぬ事も、家に帰る事も
僕の話が終わるまで出来ないよ」
とイタズラっぽい微笑みを浮かべて答えた
そんな青年の言葉を聞きながら、
それもそのはずである
この崖に来るまでに見てきた光景からすると、これぐらい出来る奴がいても〝おかしくない〟と誰でも感じるだろう
だから
それを見ていた青年は
「なに、もしかして何か気に障ったかな?
そうだろ、そうだろ不思議だろうな
一定の状態に戻されるなんて」
と笑いながら呟く
それに
「いえ、そんな事ではなく
その前に話していた〝お説教じみた事〟を思い出してただ〝不満〟を感じていただけです」
と訂正する様に答える
それに対して青年は
「そんな事、、、か」
と少し悲しそうに溢しながら〝はぁ〟とため息を溢し終えると、再び真剣な表情で
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