第七話 〜覚悟〜
結局一時間以上その場から動けずに、ただただその場でうずくまっていた
しかし
そしてその都度足が竦み、またその場にただただ倒れ込むのだった
何度繰り返しただろうか
もう心は擦り切れ疲弊しきっていた
「僕は所詮、こんなちっぽけな人間で、やっぱり、何をしてもダメダメなんだ」
そう愚痴を溢しながらその場で、空を見上げる
そこには〝どんなに人が苦しんでいても〟常に照り続け人に〝確かな光〟を示し続ける〝太陽〟があった
「太陽、君からしたら所詮、僕ら人様の悩みなど、本当にちっぽけな物なのだろうな」
その太陽を見つめながら
それが
「よし、もう迷わない、今度こそ、今度こそここから飛び降りよう」
そう言葉にしてようやく決心が決まった
その手は拳を握り締めていたが
そこにあれ程抱いていた〝不安〟や〝恐怖〟の感情はなかった
代わりに〝日常からの解放〟と〝安らかな気持ち〟などが確かにあった
そうして
「・・・」
とても心が落ち着いている
そこに吹き抜ける心地よい風を感じなら
〝今なら飛び降りられる〟
そう確信し、これまでに無い、とても安らかな気持ちでそこに立っていた
こうして本当に死ぬ直前になると、人は色々思い出すらしい
ただ
両親が死んでしまった…
優しい親戚のお兄さんに裏切られた…
その後来た叔父さん夫婦に虐待された…
学校では今の時代では当たり前な、どこにでもよくある、いわゆる「いじり」の標的になった…
家では桜咲さんと暮らしているが、どこかよそよそしく接している事もあって最近では〝自分の居場所じゃない〟とそんな気さえしていた…
こうして客観的に見てみると本当に〝不運な運命〟というものだ…
そんなこれまでを
そしてやっと、いざ飛び降りる為にその一歩を踏み出そうと動かした…その瞬間だった
そんな
「死ぬなんて勿体ないよ」
と若い男の声が聞こえてきた
その声に振り返ると、岩の上に青年が座っていた
それを見て
『ここは〝あの
この崖も〝あの必ず死ねる自殺の名所〟だ
まず興味本位で入る人はいないだろう
…では彼はなぜここにいるのか?
死にに来たのだろうか、いやそれはない!
もしそうなら、他人の自殺を止めるわけない
ここにくるのは死にたい奴だ
他人の死に同情するなんてありえない
なら彼はなんなんだ?』
そんな疑問が頭に浮かんだ
そんな疑問とともに
「お前は誰?」
と特に興味のないような、吐き捨てるような口調で問いかけるのだった
その言葉は
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