第七話 〜オリジナル〜

太陽そらゆきはそれを聞いて、この噂の〝七つの都市伝説になる理由〟となった〝原因〟がとても気になった

そんな太陽そら達の姿を見ながらニヤリと笑うと


「実はこの崖はね、オリジナルの噂となった崖とそれ以外の自殺名所を一括りにした噂らしいんだよ

そのオリジナルとなった崖にある噂が本来は、この都市伝説になっていたらしいんだけど、いつしか必ず死ねる自殺の名所としてのイメージが強くなって噂が変わったらしいんだ」


と話し始める

そして一息つくとそのオリジナルの噂を話すため、口調を変えて雰囲気を作りながら続きを話し始めた


「その最初の崖にあった噂っていうのが…

『その昔そこから若い者が多く飛び降り死んだ

その多くは死ぬような人ではなかったが、なぜかそこに近づいた者は崖から飛び降りた

それ以来その崖は行けば殺される〝人殺しの崖〟と言われるようになった』という話らしいんだよ」


とオリジナルの噂を話し終える

それを聞いていた太陽そらゆきは〝たしかに人殺しの崖〟なら〝行けば殺される崖〟と言う噂で都市伝説として納得できると感じた




するとそんな納得する横からふうが話を進める


「そしてここからが重要なんだけどね

この崖と言うのが若い者しか辿り着けないと言われていて、青年を過ぎ大人になると崖の山上には行けなくなるらしいんだ」


と答える

それを聞いて太陽そらはゾッとした

その噂が事実なら〝若者だけを殺す〟いや〝若者だけを食う崖〟とも読み取れる

それは〝若者が死ぬ為に存在する崖〟といってもいいだろう


つまりもしも間違えて若者が迷い込んだら、その人は必ず死ねる崖から落ちてしまうのだから、それは確かに都市伝説だ


しかしなら尚更どうして噂が変わったのだろうか?

太陽そらはその疑問をふうに問いかけてみる


「確かにその噂なら都市伝説になるな…

でもそれならどうして今の都市伝説の噂は〝必ず死ねる山上の崖〟になってるんだ」


と聞くとふうは淡々とした口調で


「それなら簡単だよ

その崖にいった若者は必ず死んでしまうなら噂を広げる人がいないだろ

だから、自殺の名所を集めて〝必ず死ねる山上の崖〟にした方が都市伝説として浸透しやすかったからだよ」


と答える

それを聞いて確かにそう言われると、そう感じるが、それでもそうすると噂自体が違うものになると思った

そんな太陽そらの心を読んだようにふうが口を開く


「それにこの噂は確かに噂自体が少し変わっているけど、誰のイタズラかオリジナルの噂にたどり着けるように、名残が名前にも残ってるらしいんだよ

だからそれがわかる人はオリジナルの噂に気づく人もいるらしいんだよ」


と言う

太陽そらはその話に出てきた名残なごりが何か気になり


「名前に名残なごりってなんなんだ」


と問いかける

するとふうは左の人差し指を口元に当てる〝子どものような仕草〟をしながら


「えーと

〝必ず死ねる山上の崖〟の山上って山の上って書くよね

実はこれ山の上じゃなくて悲惨の方の惨状で〝必ず死ねる惨状の崖〟と言うニアンスになるんだよ!

簡単に言うと〝必ず死ねる〟けど〝惨状〟も起こると言う意味が不明な噂になる

でもこれはオリジナルの〝人殺しの崖〟が、死ぬ必要の無い人も殺す〝惨劇を呼ぶ崖〟の名残としたらなんとなく納得もいくよねー」


と答える

確かにそう言われると〝人が必ず死ねる〟と言われた〝惨状の崖〟は〝本来死なない人〟も殺すからと意味づけするとしっくりときた




…この噂なに、怖、七つの都市伝説の中で一番タチ悪くて怖過ぎだろ

そう思った太陽そらの横でゆき


「なにそれ、怖、この噂のオリジナルとか、意味聞くと、これだけ怖すぎるだろ

面白半分で都市伝説周りする人がもし、そのオリジナルの崖に行ったら死ぬってことだろ

いやいや怖すぎるわ、この噂」


と言葉に出して答える

それを聞いてふう


「実はその噂のオリジナルが存在する崖がこの近くにある乱狂山らんきょうざんにあるらしいよ」


とイタズラ混じりの笑顔で答える

ふうの言う乱狂山らんきょうざんとはこの近くにある崖の多い山で立ち入り禁止になっている危ない山のことである

色々と噂の絶えない所らしく、子どもを叱る時にもよく使われる山の名前である


その山の噂がどれも信憑性の無いものばかりだから、この地域に住んでる子どもだってその山がただ〝危ない山〟ってことを知ってる

そんな山の名前が出てきた所で…

とその思考を遮るように


「え、そんな嘘だ、そんなおっかない崖が乱狂山らんきょうざんにあるわけないだろ!」


と強くゆきふうに言い返す

そのいきなりの発言に太陽そらはその流れに流されるように


「え、いやまさか、ゆきって乱狂山の噂って信じてるの?」


と問いかける

それに反射的にゆき


「当たり前だろ、この街に住んでたら誰でも知ってる、あのおっかない山を知らないわけないだろ」


と真面目に答える

そう言えばゆきって見た目によらず怖い話とかダメだったような…それってもしかして…

と思ってたら横から肩を叩かれる

振り向くと叩いてきたのはふうだった

ふうは小声で


「面白いだろ太陽そら

実はさゆきって乱狂山らんきょうざんの事ものすごく信じてるらしいんだよ!

なんでも物心つく前からずっと聞かされて信じ込んでしまったらしくて、それ以来こう言った話とかあんまり得意じゃないんだって」


と笑いながら言う

なるほどふうのこの顔は〝遊んでる時の顔〟だ

どうやらゆきのことからかって遊んでるみたいだ

太陽そらふうの話を聞いてゆきの怯える姿に納得した

まだ怯えてるゆきを横に


「おいふう


太陽そらが呼ぶと


「な〜に〜」


と答えるふうの頭にめがけ


「せいや」


と言いながらチョップする

チョップされて痛がるふう


「あまりゆきをいじめてやるな!」


と言うとふう


「僕の頭はいいのかよ」


と真面目な感じに答える

それにさっきまで怯えてたゆき


「あははは、ざまー」


と馬鹿にするように笑う


「せいや」


太陽そらはとりあえずゆきにもチョップをしておく


「いってー、なにすんだよ」


と答えるゆき太陽そらは冷たい表情の笑顔で


「ほらゆきふうのこと馬鹿にしない」


と答えるとビクつきながらゆき


「お前最近、桜咲のおじさんに似てきて怖いな」


と答える

それに明るい笑顔で


「そんなことないよー」


と答える

その言葉をいって少し沈黙が辺りを包み込む




その沈黙を最初に破ったのはふうだった

いきなり笑い出しながら


「なにそれ太陽そら

あーおかしー」


それにつられるようにゆき太陽そらも笑いが吹き出て三人で笑いあった


しばらく笑いながら歩いているといつもの分かれ道に着いた


「今日は笑ったねー」


と笑い涙をぬぐいながらふうがつぶやく

それに同調するように


「そうだな」


ゆきが返した

太陽そらはそれを聞きながら


「まーいつものことだろ」


と答えた

そのあとはいつも通り二人と別れた


ただ太陽そらは胸のどこかで〝あるもの〟が引っかかっていた

六番目の都市伝説うわさ〝必ず死ねる山上の崖〟

その噂のオリジナルの崖が乱狂山らんきょうざんにある

そのことだけが…

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