最終章18話『もしかして……やっちゃった?』
「え? ユーシャが馬鹿なのは当たり前でしょ? もしかして自覚なかったの?」
「今シリアス入ってるから横やり入れないでくれるかなぁエルジット!!」
今は凄く貴重なシリアスな場面だから! ここ、とっても重要だから!!
「洒水さん……お嬢様に対してなんという口の利き方ですか」
「セバスさん。今はとても大事な場面なので……って……え?」
そんなエルジットの背後に控えるセバスさん。あれ? 幻覚かな? なんかセバスさんの後ろに血に濡れた鬼の姿が見えるような……あれが鬼気迫る雰囲気ってやつなのかな?
そんなセバスさんが僕への距離をゆっくりと詰めてくる。それがとっても……冗談じゃないくらい怖かったので、
「すいませんでしたぁ!!」
「ふむ、わかればよろしい」
日本人の秘儀。DO・GE・ZA!! 僕は迷わず秘儀を発動していた。クソォ! これでシリアスな雰囲気がどこかへ吹き飛んで言ったじゃないか! どうしてくれる!
いや、だって仕方ないじゃない! だって見えちゃったんだもの! セバスさんの後ろに見える血まみれの鬼と一緒に今まで謎に包まれていたセバスさんのステータスが見えてしまったんだもん! あんなのとまともに戦ってられるかぁ!!
★ ★ ★
名前 戦神アレス 年齢 140億歳 性別 男 レベル:∞
クラス:従者・戦いの神・勇者・執事・巨乳マスター
筋力:∞
すばやさ:∞
体力;∞
かしこさ:18
運の良さ:8
魔力:∞
防御:∞
魔防:∞
技能:破壊・狂乱・自制・守護・忠誠
★ ★ ★
∞って……無限って……そんなのありなの? っていうかセバスさん完全に神様じゃん。戦いの神様のアレスさんじゃん。一番戦っちゃいけないやつじゃん……。
まぁ今それは置いておこう。シリアスさんがどこかへ行ってしまったが話は途中だ。
「こほん。つまりだねぇ、ウェンディス。さっき言ったでしょ? 兄弟喧嘩だってさぁ! 僕はウェンディスの全部を受け止めるしウェンディスにも僕の全部を叩きこむ! さっきので終わりだっていうならこっちの番だ!!」
我ながら強引すぎるとは思うがこれでいい。そもそも喧嘩なんて難しくあれこれ考えるもんじゃない。
そう――喧嘩なんて言うのは、
「全力でぶつかりあって――全力で言葉を尽くす! ただ、それだけなんだよ!!」
だからこそ、一切加減はしない。何も考えない。全てをただ心のままに、あるがままにさらけ出す。
「そもそも難しく考えすぎなんだよウェンディスはさぁ! もっと単純にやりたいことはやる! やりたくない事はやらないでいいんだよ! 少なくとも色々考えてるウェンディスよりも何も考えていないレンディアの方が楽しそうだよ! 何より、ウェンディスがそんな後ろ向きなことばっかり言うなんてらしくないんだよ!」
そう、僕が今まで見てきたウェンディスは……ジークリット・ウェンディスという女の子は――
「自分の想いに正直でっ、まっすぐでっ。一直線に突き進むこれでもかっていうくらいのブラコン娘! そういうウェンディスの方が楽しそうだったし魅力的だったよ! それとも何!? あれは全部演技だったのか!?」
「それは……」
言い淀むウェンディス。答えを聞かずに僕は言葉を続ける。
「少なくとも僕にはそう思えなかった。あれが偽物だなんてとても思えなかったよ! ああもう、だから僕が言いたいのはつまり――」
拳を振り上げる。ウェンディスに向かって走る。あっという間にウェンディスは目の前だ。
「にい……さま?」
綺麗な瞳で上目づかいで僕を見つめるウェンディス。
「つまり――らしくもない事ばかり考えてないで一旦頭を冷やしてからいつもの馬鹿に戻れ! この馬鹿妹ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「――――――」
遠慮なく――爽快に――豪快に――ウェンディスのつまらない事ばかり考えているであろう頭をぶん殴る。
バグっているらしい僕のステータスでの全力の一撃だ。
だから……だろうか。
「あ」
「はぁ、ユーシャはやっぱりユーシャだ……」
「え? 嘘であろ? え? 主様?」
「さっすが洒水だぜ!」
「やはり……馬鹿ですな」
外野さんから困惑に満ちた声&呆れの声が聞こえる。
そんな僕の目の前にある光景。それは……大きくカッポリと開いたクレーターだ。無論、さきほどまであったものではなく、たった今、僕の一撃を受けた結果だ。つまり、僕はそんな一撃を魔法使いタイプで体力もあまり無かったウェンディス目掛けて振り下ろしたという訳で――
「もしかして――やりすぎちゃった?」
豊友洒水。神父がもう存在せず、既に死が冗談じゃすまなくなるものであると理解していたにもかかわらずついつい妹を殺害してしまう。
「え? 嘘? うそでしょ? 嘘だと言ってよ誰かぁぁぁぁぁぁぁ!!」
などという事はなく、奇跡的にウェンディスは死んではいなかった。
良かった……本当に良かった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます