最終章11話『広河 子音-7』
前書き
今回の話は広河子音の回想であり、広河さん視点です。
その為、出てくるのは基本的に広河さんのみであり、その他は基本登場しません。
★ ★ ★
「ぷっくく。あ、そこはそう来るんだ? あっはは。面白いなぁこの子」
大成功だ。今回は最後まで退屈せずに済んだ。
神様がよこしてくれた勇者はボクの期待通り、予想外の出来事を次々と起こしてくれた。
最後にはボクが設定した魔王に夜襲を試みていた。
魔王の城に大規模魔法をぶちかまし、派手に戦闘を開始した時なんて笑いが止まらなかった。
ある意味盲点だ。村や町なんかは破壊不能という設定を加えていたが、魔王城にはそんな設定は加えていなかった。つまり、破壊できる。
今回の勇者は向こうの神様によって特殊な能力を備えていた。簡単に言えば吸血鬼としての力を手に入れていたみたいだ。さすがに村の人間などには干渉出来なかったが、魔物なんかはその力で配下にしていた。RPGによっては魔物を仲間に出来るものもある。そう考えて魔物には勇者の影響を受けないようにという設定は入れていなかったんだけどまさか強制的に吸血鬼の眷属にすることで配下にするなんて……最初に見た時は「えぇっ!?」って声をあげちゃったよ。
「いやぁ、笑った笑った。さて、さっそくリスタート……って言う所なんだけどこの子惜しいなあ。もちろん帰さないと神様に怒られちゃうだろうから帰さないといけないんだけどさ」
ボクは今回送られてきた勇者を気に入っていた。かなり楽しませてもらったしね。
「そうだ! 同じような子をこっちで一人創ればいいんだ」
ボクが今回見たこの子の特徴をそのまま反映させたキャラクターを僕の世界に配置したら面白いんじゃないかな?
「ああ、それと意味がないかもしれないけど……」
今回の勇者は自分の吸血鬼の力を使って魔物みたいな敵の血を吸って倒し、時には戦闘不能になった魔物に自分の血を分け与えて眷属――つまり、仲間にしていた。という事はボクの設定した魔物の中には吸血鬼の血液が混ざっているという事だ。
「確か血っていうのは重要な遺伝子情報って聞いたことがあったようななかったような? まぁ特に手間でもないしやっちゃえ」
ボクはその回の勇者が率いていた魔物の肉体を合成する。元々はこんなことをするために合成可能なんて言う設定を入れていた訳じゃなかったんだけど……まぁ、いいや。
「合成。サイクロプス、ゴブリン、レッドキャップ、ブルードラゴン、フェアリーバード指定。合成結果改ざん、合成先を指定。指定はにんげ……いや、ヴァンパイア。容姿はイメージを参照」
そうして勇者が率いていた魔物の肉体を合成する。本来、合成結果はその魔物の特徴を受け継いだ魔物へとなるのだが、今回はボクの権限で合成先を指定する。そして、
★ ★ ★
名称未設定 0歳 女 レベル:99
クラス:ヴァンパイア
筋力:314
すばやさ:518
体力;1053
かしこさ:567
運の良さ:0
魔力:589
防御:578
魔防:689
技能:吸血・記憶力強化EX・全体攻撃強化LV3・自動回復LV1
★ ★ ★
「出来た」
いくつか入れるつもりのなかった技能が入っているけれど特に問題はなさそうだ。
「さて、後は名前の指定だけど……今回来ていた勇者の名前が
あぁ、それと創ったはいいけれどどんな配役にしようか? 勇者の枠はまたあの神様が用意してくれた子を使うとして……ただの村人にするっていうのはもったいないよね。うーん、勇者以外で面白そうな事ができる配役かぁ。
「よし、魔王にしよう」
魔王カヤのステータスに少し変更を加える。クラス:吸血鬼に追加で魔王を入力。先ほど考えたようにこの魔王カヤに今回の勇者の特徴をそのまま反映。そして魔王としての設定をそのまま魔王カヤへとインプットする。と言っても今回は行動までは制限しない。そんな事をすれば内面がどれだけ面白くても意味がない。とはいっても真っ先に勇者を潰されるのはやはり困る。さて、どうしようか。
「そうだ。少なくとも勇者が同じくらい強くなるまでは閉じ込めておこう」
行動の制限をしない代わりに行動範囲を制限するというだけの事だ。その程度の制限であればきっとこの魔王は面白い事をしてくれるだろう。そう期待する。
さて、そうと決まったらどのくらいの範囲まで制限しようか? それにある程度自然な感じで制限したいな。
そうして考えた結果、魔王を魔王城のあるニヴルヘイムから外に出ないようにするのが良いと思った。しかし、このカヤという魔王の意識を直接操ってそうするのは面白くない。なので、別の所に設定を加えることにした。
「よくあるよね。結界で阻まれていてこの先に進めないって。魔王のいるニヴルヘイムは彼女が張った結界によって阻まれているっていうのをストーリーに加えよう。まぁ、実際は設定で作られた結界だから彼女は何の関係もないけれどね」
結界の解除は各地方に居る
そうしてあらかたの設定は整った。
「それじゃあ――ゲームスタート」
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