最終章8話『広河 子音-4』
前書き
今回の話は広河子音の回想であり、広河さん視点です。
その為、出てくるのは基本的に広河さんのみであり、その他は基本登場しません。
★ ★ ★
そうしてボクは元居た世界に別れを告げ、あの時ボクに話しかけてきた人物の元へと招待された。
「それじゃあさっさと私の世界から出ましょうか。そうねぇ……よし。あなたがさっきまでやっていたゲーム画面に手を触れてごらんなさい」
「ゲーム画面って……こうかな?」
ボクはリビングにあるテレビへと手を伸ばす。ゲームは中断しているとはいってもまだテレビの電源はついている。ちょっとぴりぴりした。
「そうそう。それじゃあ――行くわよ」
「え? きゃあっ」
いきなりテレビから手が生えてきて、ボクの体をテレビの中へと引きずり込んでくる。すごい力だ。抵抗するが、成すすべもなくボクの体はテレビの中へ入っていき、
「わぷっ」
顔から床に落ちた。
「う……むぅ。あれ? ここは?」
周りを見回してみる。そこには白が広がっていた。白い部屋に入れられているというわけではない。果てのない白がボクの眼前には広がっていた。
「ようこそ。世界の狭間へ」
そう言ってボクの目の前に現れたのは白いドレスを纏った褐色の肌を持つ女の人だった。
「あなたは……さっきの?」
「ええ、そうよ。私はあなたがさっきまで居た世界の神様。ほら、いつまでも座り込んでないで立ちなさい。私は自分の世界を放置してるけど観察だけは大好きなのよ。お酒の
明らかにやる気なさげな神様だ。本当に神様なのか疑わしく思えてくるな。
しかし、不思議な空間に連れ込まれたことだし、さっきから変な事ばっかりだ。この目の前に居る人が何か変わった人だっていう事は間違いない……かな。
「ご指導のほど、お願いします」
ボクは立ち上がって神様に頭を下げる。
そうしてボクは世界の創り方を神様に教えてもらった。
★ ★ ★
世界の創り方は意外と簡単だった。
簡単というよりも、ボクに合っていたというべきだろうか。色々な設定を色んなものに与えて、それを動かす。簡単なプログラミングのようなものだった。コツさえ掴めたらもう教えてもらわなくても一人でできた。
それを確認した神様は「それじゃあ頑張ってね。まぁ何か用があったら呼びなさい」と言い残し去っていった。ボクに色々教えてくれている間、面倒くさそうだったけどきちんと教えてくれたし、案外面倒見の良い神様なのかな?
「さてと」
それじゃあ世界の創造だ。色々教えてもらってコツも掴めたとはいえ、少し緊張する。
まったく新しい世界を作るのには不安があったので、まずはボクが好んでやっているゲームの設定をそのまま盛り込んでみた。少し面倒くさいのが村人一人一人にも設定を与えないとちゃんと動かない事だ。まぁ、そこはゲームと違ってボクが好きにいじれるから面白いと言えなくもないからきちんとやろう。
「こんな物かな」
僕の世界の設定が全て出来上がった。設定は大まかに言えばこんな感じだ。
・勇者が王女様の住むお城から魔王を倒すために出発する。
・魔王は全人類の敵。でも、自分からは動いてはいけない。
・魔王が倒されたらおしまい。初めからリスタート。
他にも細かい設定はあるけどこんな感じだ。RPGゲームにおいて、勇者は魔王を倒すものだ。
そして魔王が最初から勇者を潰しにかかったら勇者はひとたまりもない。勇者は成長するように設定してあるけど、初期の状態では魔王との差があまりにも離れているのだ。
そして最後。魔王が倒されればこの物語は一旦そこでおしまい。そこから先は面白いことが起こることも無いだろうしね。その時は少し配役を変えてみるのもいいかもしれない。
そうして創造した世界。さぁ、今からスタートだ。
ブーーーー。
「あれ?」
不快な警告音のような物。
何か間違えてしまっただろうか? プログラムの何かがうまく噛み合っていないような感覚。何か忘れている?
「あ、そっか」
まだ一つ、設定していない物があった。
「僕にも何か設定をつけないとね」
さて、どうしようか。自分をどのように定義づけるか。神様――は少し恥ずかしいな。となると……
「よし、こんな感じにしよう」
僕は僕の設定を作り出した。
折角だからステータス全部を可能な限り引き上げてみる――失敗。ボクの想像が常識の範囲内で自分の体がそんなに強い訳が無いとストップをかけている。他人の設定をこうしよう。ああしようっていうのは苦も無くできたんだけどな。自分の事になるとやっぱり違うみたいだ。
仕方なくステータス全部をエラーが出なくなるまで引き落とす。一万……千……百……よし。やっとエラーが出なくなった。
★ ★ ★
広河 子音 18歳 女 レベル:9
クラス:ゲームマスター
筋力:9
すばやさ:9
体力;9
かしこさ:9
運の良さ:9
魔力:9
防御:9
魔防:9
技能:全権限保持
★ ★ ★
こんな物だろう。神様と言ってもやっている事はゲームの製作のような物だ。どちらかと言えばゲームマスターの方がしっくり来る。
「それじゃあ――ゲームスタート」
そうして僕の世界は始まった。
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