第4章20話『クイズ-4』


「かけられる相手は以下の四人の内誰か一人となります! さぁ、どなたになさいますか?」



A.ウェンディス

B.エルジット

C.レンディア

D.カヤ



「――Aで! ウェンディスにかけます!」


 勝った――僕は勝利を確信した。

 女性の誰かにかければ参考になる程度で終わっただろう。しかし、まさかかけられる相手の中にウェンディスが居ただなんて嬉しい誤算だ。こんなの答えを聞くだけでこの問題はクリアーじゃないか。


「畏まりました! それではテレピョンをAのウェンディスさんにかけます! 相談できる時間は三十秒だけなのでお気を付けください!」



 トゥルルルル。トゥルルルル。



 会場全体に電話の呼び出し音が聞こえる。数秒後、ガチャっという音と共に「もしもし」と声が聞こえてきた。



「あ、もしもしウェンディス! 早速で悪いんだけどウェンディスのスリーサイズを教えてくれない? いや、変な意味じゃないんだけど今はその情報が必要なんだ!」


 あれ? よく考えたらこれってただの変質者じゃない? いくら知ってる相手だったとしてもいきなり電話してスリーサイズを聞くって絶交されても仕方ない案件な気が……まぁいいか。相手はあのウェンディスなんだし。



「おやまぁ嬉しいねえ。こんな婆(ばあ)のスリーサイズを聞きたいのかい? しょうがない子だねぇ」


「誰だお前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」



 電話に出たのはウェンディスでは無く、お婆さんだった。いや、誰だよあんた!?



「おや、あんただったのかいコーサク。相も変わらずお前お前と馴れ馴れしい奴だねえ。死んだ爺さんとそっくりだよ。あの時の爺さんも――」



「誰だよコーサクって!? そして爺さんの話なんて聞いてないんだけど!?」


 待て、落ち着け。もう既にテレフォ〇は使ってしまったんだ。残り時間も少ないんだ。もう相手がおばあさんが相手だろうが構うもんか。大体のスリーサイズを聞き出してやる! え? プライド? そんなものとっくにどこかに落としてきたよ!!



「こほん、もしもしお婆さん。差し支えなければあなたのスリーサイズを教えて頂けませんか?」



「だぁれが婆(ばばあ)じゃああ!!!! わたしゃまだ三百八十八歳だよ! まだピチピチのギャルなんじゃ馬鹿にするな童(わっぱ)がぁぁぁぁぁぁぁ!」



 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

 さっき自分の事をばあって言ってたじゃないか!? 自分で言うのはいいけど人に言われるのは嫌っていう面倒くさい人だよこの人! くそっ。ここからどうやってスリーサイズを聞き出す流れに持っていけばいいんだっ!



「爺さんや! ちょっと来ておくれ! このわっぱが私をクソブサイクの顔面の潰れた廃棄物ババアと罵るんだよ! わたしゃとても傷ついたよ。しくし――」



 お婆さんのワザとらしいウソ泣きを最後に、通話は終わって後には”ツー、ツー”という音だけが残った。



「おいババアァァァァァァァァ! どんだけ話盛ってるんだよ! そして爺さん死んだんじゃなかったの!? チクショウ! 完全にテレフォ〇を無駄にしちゃったじゃないか!」


 頼みの綱のテレフォ〇を使ったのにも関わらず、ヒントすら得られずそれどころか釈然としない何かしか得られなかった。どうすればいいんだ……。



「おーーーっと。これは痛い! チャレンジャー。ウェンディス・マグガーデンさんとの通話を完全に無駄にしてしまいましたぁ!」


「紛らわしいわぁ!! 誰だそれぇ!!」



 どうりで話がかみ合わないと思ったよ! 誰だよウェンディス・マクガーデンって! こんなの絶対にこの先の物語に出てこないじゃないか! ポンポンポンポン新キャラ出しやがって……。どう収集付けるつもりなんだっ!



「それではチャレンジャー、お答えください。ジークリット・ウェンディスさんのスリーサイズはいくらでしょうか?」



 クッ、何もヒントを得られなかった以上もう山勘しかない。もう一度選択肢の四つを見てみよう。


A.B:61   W:47  H:62

B.B:1176 W:853 H:975

C.B:78   W:56  H:79

D.B:111  W:61  H:91


 前の推論でも言ったが、まぁBは無いだろう。あれは人間のサイズじゃない。

 だから、選ぶとしたらAかCかDである。

 三つの内、よく見ればDのバストが他よりも一回り大きいことが分かる。そして過去にスリーサイズの話を又聞きした時、飛び出してきた数字は二桁が多く、三桁は少なかった気がする。え? よく覚えてるじゃないかって? た……たまたまだよ!



 そしてウェンディスは言うまでもなく小柄だ。つまりっ、Dは無い。よし! これでAとCまで絞り込んだぞ!!

 後は本当に勘の領域だ。残りのAとCのサイズにはそこまで差はない。これ以上考えたところで答えは出ないだろう。



「さぁ、チャレンジャー。答えは?」



 僕はゆっくりと目の前のボタンを押す。



 ピンポーン!



「――――――Aで」



 考えるだけ考えて、絞り込めるだけ絞り込んだ。後は二分の一の確率。それに僕はかける!



「Aですね! 畏まりましたぁ! さぁ、答えはなんなのかぁ!!」




「………………………………」

「………………………………」



 場を支配する沈黙。頬を一筋の汗が流れる。

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